ウケモチシステム:12
†
ソフィアと二人でリリーを運び、陽奈を起こして出発しようとした文成は、不審な電脳通信を受けた。
『ニコラス=コールウィーカーの使いの者です。そこを動かないでください。さもなくばアスクレピオスを爆破します』
狂言だろうとは思ったが、ニコラス=コールウィーカーはソフィアの敵の名前である。ソフィアを超える技術を持ってもいる。ニコラス=コールウィーカーはウケモチシステムに関与していて、文成たちが手に入れ、さらには封印しようと考えているということまで察知した上で、使いの者を送ってきた可能性がある。無視するわけにはいかない。
「ソフィア。先に行っててくれ。僕は少し遅れて出る」
「どうしたの?」
「なんでもない。心配することじゃないさ」
数分後、電脳通信の送り主が現れた。20代ほどの
「はじめまして、白雪文成。ニコラのため、ウケモチシステムのため、ここで死んでいただきます」
そう言いながら、そのNEは日本刀を抜き、天に掲げた。
「
NEが唱えた瞬間、景色が歪む。NEの後ろから大きな黒い魚が現れた。腹や背が床や天井に食い込む形になっている。今にも文成を飲み込もうと食いつく勢いであるのを、NEが制する。床や天井はおろか、魚自身がなんともないのは。
「魔法か!」
「その通りです、白雪文成。この天魚の中にあなたを閉じ込めることが狙いです。大人しく天魚に食べられさえすれば悪いようには致しません」
「ソフィーの無事まで保証してくれるわけじゃないんだろう?」
精一杯冗談っぽく文成は言う。いくら相手が魔法で作られていたとしても、槍で突けばなんとかなるかもしれない。文成は未来視を使った。大丈夫、問題ない。少なくとも一撃だけは。じわじわと天魚が迫ってくる。時間がない。文成は槍を構えた。そして挑発する。これも未来を視た結果だ。このNEは盲目的にニコラス=コールウィーカーを信奉している。内心ではソフィアのためにニコラスが動くことが我慢ならないらしい。
「ソフィーを生かして弄ぶことが、コールウィーカー氏の望みだろう?」
「あんな女を!生かしておくことはニコラのためにならない!!」
NEが叫び、天魚に命令をする。
「文成に食らいつけ!逃がすな!」
天魚が文成に飛びかかってくる。それに合わせて、文成は渾身の突きを放った。天魚が怯む。
「逃がすなというのは」
跳躍しながら、槍を180度回し、槍を前後逆に持ち替えて、天魚の下を走る。狙いはNEの刀。文成の槍は対NE用。かなりの重量がある槍だ。刀の腹を全力で叩けば曲げることができる。刀を天に掲げたからには何かしら魔法にとって重要なものであるはずだ。刀を壊せば天魚が消えるかもしれない。そう考えてのことだった。
「僕の台詞だ」
NEの刀に向けて、再度突きを放った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます