白雪文成と妖刀:7
†10月10日夜 白雪文成宅
「ハル。事件から一日しか経っていないが、言いたいことがたくさんある」
怒った様子の文成と、その前に正座している陽奈。文成はいつもの仕立ての良いスーツに身を包み、陽奈もいつもの黒いジーンズにえんじ色のパーカーという格好だ。正座している陽奈から見ると180cmを超える文成はいつもよりも大きく見えている。
「まずは一つ目だ。月影の入手、おめでとう。これで君は晴れて妖刀使いだ。京都の方でいくつか大きな手続きがあるそうだけれど、ひとまずは安心なのだろう。とても喜ばしいことだ」
「わーい」
わざとらしく万歳をする陽奈。それが余計に文成の神経を逆なでする。
「次に二つ目だ。君も全身義体にすることを強く勧めたい。月影の試練の始め方が
「異議あり。私も武器を持った上に、これから鍛錬を積んで電脳もアップグレードする。それなら、義体にするよりも肉体のままの方が都合がよいはず」
「なるほど、その意見も確かに分かる。遠まわしに僕のことを年寄り扱いしているような言葉に聞こえなくもないが君の義体化については後回しにしてもいいだろう。それでは次」
怒りを抑えるように深呼吸をする文成。
「三つめ。いくらなんでも幸運が過ぎないか?先のことと言い、今回のことと言い、君は棚からぼた餅を得ているだけじゃないか?革命を起こすだとかimprovedたちに一矢報いるだとか、僕の家に住むようになった時に僕にアピールをしていたのは僕の気のせいか?自分の幸運だけで革命が起こせるような気持ちになっていないか?革命を舐めていないか?」
一つどころじゃない質問じゃないかという顔の陽奈と、それを睨んで黙殺する文成。
「私にできるすべてをすれば、きっと運命の方から私を助けてくれる。それまでひたすら後悔しないように一寸先の暗闇の中を全速力で突っ走るだけ。それ以外に私にできることは何もない」
「……わかった。じゃあこれ以上何も言うことはない。」
まったく、どこかの誰かみたいなことをまっすぐな眼で言うなんて。後でソフィーを問いただしておかないと。
「あれ?ブンセー、何か言った?」
「『これ以上何も言うことはない』」
「ううん、その後」
「何も言ってないよ、ハル。お疲れ。お説教はこれで終わりだ。ごはんにしよう」
白雪文成の事件簿:妖刀月影――終。
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