第2話
なるわ まりよ
鳴輪 真理代の物語
良い道徳者になるために必要なのは、たった一つ
感動するという才能だ
真理代は匿名の手紙の主が何かを運んでくるのを待つことにしました
そしてこの事は当分誰にも黙っていようと思いました
学校の授業は上の空だった、でも急に判った、先生は如何でもいいことばかり
教えていることに気がついた
どうしてこの人は、世界はどうしてこうなっているのか、世間はどうなっているのか
人間は何処から来たのかとか、これから人間はどうなって行き易いかとか
言わないのだろうか?
世界はどのようにして出来たの?
人間は何処から来て何処へ行こうとしているの?
ご挨拶の仕方は?
嘘をついたときは本当は如何するのが本当なの?
人間として本当に学ぶべきものとは?
様々な欲望とどんな風に立ち向かうの?
失敗したら大人のときはどうやって信頼を回復するの?
その他諸々色んな事に答えてくれていない事に
学校でも何処でもそんな如何でもいいことにかかずらっている
どうしてそんな如何でもいいことしか教えてくれないの?
学校の勉強よりずっと大切な、考えなくてはならない大切な問題があるのに
こんな気持ちは初めてだった
ああいう問いに答えたことがあるのかしら?
真理代は不規則動詞を唱えるよりももっと大切なものが
あるのではと、そっちを考えるのが大事だと思いました
最終授業の鐘が鳴り
チャイムが鳴ると、真理代は教室を飛び出しました。
あっと言う間に校門にいました
夕子はあわてて飛び出した、違う追いかけてきました
少しして夕子が問いかけてきました
「ねえ今度トランプしない」
真理代は横に首を振りました
「そうねえ、私トランプ飽きちゃったみたいなの」
夕子は吃驚したようだった
「飽きちゃったって、今度は綾取りしない」
真理代は道路をそして夕子を見た
「そうねえ、私綾取りも飽きちゃった」
夕子は言った
「じゃあ、もういいわよ!」
夕子の声に刺々しさがあった
「何がそんなに大切になったのか話してくれても良いと思うけど」
真理代は首を横に振った
「それは・・・秘密なの」
「へーえ、誰かの事好きになったんだ!」
二人は、話が途切れたまま歩いていった
サッカー場まで来たとき夕子が言った
「私サッカー場を突っ切るわ」
サッカー場を突っ切るのは近道だけど、それを使うのは
お客様が来たときや、急ぎの用事があるときだけだった
夕子を傷つけてしまって、謝りたくなった、でもなんて答えたらよかった?
私は何処から来たってこと、私は何者かっていうこと、どうしてここに生まれたかって
こと、世界はどうやって出来たかってこと
そういう大事な話で忙しくなって遊べなくなったってことでなったから
時間がなくなったって言える、夕子は判ってくれるだろうか?
何よりも大切な、何よりも大事な当然な問題に取り組むのに
どうしてこんなに難しいんだろう、こんなに厄介とは思わなかったわ
郵便箱を開けるとき胸のドキドキが止まりますようにと神様にお願いしないといけないほど
動悸が止まりませんでした
でも、ちょっと見では普通の郵便箱でした
期待して損したかも、真理代は見知らぬ差出人の手紙を心から待ち望んでいたのです
門を閉めながら真理代は大きな封筒に自分の名前の手紙があることに気付きました
そこには裏側に「哲学講座 親展」とありました
真理代は道路を走っていってバッグを縁側に置いた
そして残りの郵便物を内玄関に置くと秘密の隠れ家に向かった
この手紙はどうしてもあそこで開かなくては
白にゃんが付いてきたが仕方が無い
猫はにゃあしか言わないし、たぶん大丈夫
封筒には大判のタイプされた紙が3枚入っていた
そしてクリップされていた
真理代は読み始めた
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