異世界転生と浄土信仰

川上漫二郎

序文

近年、サブカル界で一大ジャンルとして急成長しているのが「異世界転生もの」である。


「ソードアート・オンライン」

「ログ・ホライズン」

「Re:ゼロから始める異世界生活」

「この素晴らしい世界に祝福を!」

「オーバーロード」

「灰と幻想のグリムガル」

「魔法科高校の劣等生」

「アウトブレイク・カンパニー 」

「幼女戦記」

「ナイツ&マジック」

「異世界食堂」


などなど枚挙に暇がなく、

ここ数年間でラノベからマンガ、アニメなど様々な媒体で大量生産され、

「ポスト日常系」をうかがう勢いである。

こうした作品の多くがWeb小説原作であり、

そもそも「異世界転生もの」は小説投稿サイト「小説家になろう」で生まれたムーブメントで

一連の作品は「なろう系」とも呼ばれている。


RPG風ファンタジー、ロボット、グルメなど題材はバラバラだが、

異世界が舞台であれば何を取り上げてもよいので、かなりの多様性がある。


ファンタジーとの違いは

ファンタジーが現実世界とは完全に隔離された空想世界であるのに対し

「異」世界は「現実」世界との対比であって、

世界観でも現実世界との繋がりを認めているということにある。

そもそも異世界転生もの自体は

「聖戦士ダンバイン」「犬夜叉」など昔から伝統的にあるもので、

現代の異世界転生ムーブメントの特徴は

現実世界をひどく悲観的に描くことで

異世界を素晴らしい理想郷とするところにあるように思う。


以前の作品であれば等身大の主人公が

希望も絶望もある異世界での出来事を通して成長し、

何らかの形で現実世界に還元しようとするところが、

異世界転生ものの主人公はそのほとんどが恵まれた容姿や才能を

あらかじめ持っており、辛く厳しい現実世界に未練がなく戻ろうとしない。

こうした内容ではダンバインの「東京上空三部作」のような

異世界と現実世界が交わる名場面は出てこないわけで

主人公の葛藤もなければ

異世界ものとしての物語の醍醐味がないと感じてしまい

舞台が異世界に変わっただけで

いわゆる従来のハーレム系や日常系と変化がないように感じてしまう。


しかし、こうした特徴を持って「異世界転生は現代の浄土信仰」と呼ぶ意見があり、

この指摘は核心を突いていると感じたため、

一旦、視点を広げて「アニメは宗教である」と仮定してその本質を見ていきたいと思う。

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