真実
マルコシアスは、アンドロメダ銀河の謎多き先住種族なりき。
彼女は驚くべき環境適応能力と肉体的強靭性をもって知られ、
多数の有力種族が割拠する同銀河中核領域の全域に渡り、分散して居住せり。
同地を占領せる旧帝国政権は、彼女に関し不可解な事実を発見せり。
第一の謎は、その
例えば、ある有力種族が他星域への侵略を企てし場合、
期を合わせるかの如く社会効率が低下し、侵攻計画が
いずれにおいても彼女の関与が推認せられたり。
しかい、彼女は優秀な監督者や労働者を輩出せるがゆえに、
彼女への弾圧や迫害もまた、同様の結果を
彼女は常に自集団の短期的・部分的損失を
全領域の発展に貢献することによりて、種族としての生存と繁栄を確保せり。
第二の謎は、その極度の慎重さなり。
その能力にも関わらず、彼女は一切の
より高度な技術なくしては銀河規模の統治は不可能なことを知るが如く、
各宙域の有力種族のもとで社会運営を支援せり。
また、すでに優秀なる生物学的資質の向上にも考慮と検討を尽くし、
第三の謎は、その種族的な伝承説話なり。
それは、古き時代にとある宙域を統一せんと図りたるも、
類縁種族の裏切りにより
この物語は多数の惑星において詩や小説、音楽、映画などに
その気高き理想への賞賛や哀悼の念、復活への希望は
変わることなく語り継がれたり。
後にマルコシアスは、旧帝国への抵抗運動によりて同銀河の解放に貢献し、
新帝国における量子頭脳への人格移行と、理事種族への参加が承認せられたり。
時を同じくして、中核領域内にある荒廃宙域の探査により、
彼女の謎が解明せられたり。
彼女は古代の覇権種族が同領域全体の調査と征服のため、
同胞を改造して作り出せる軍事・情報種族なりき。
しかし、生体工学を得意とするこの種族は、
拡大の過程において二つの派閥に分裂せり。
一方は自らの頭脳を連結して高度の知性を得ることにより、至高の存在を自称し、
他方は自らの身体を戦艦や要塞に変じる怪物と化せり。
両者は彼女達を兵士として、内戦を開始せり。
この戦いによりて宙域は破壊され、多くの種族が絶滅するか、文明を失いたり。
マルコシアスの生存者は、自らを消耗品の如く扱いたる創造者達に懸念を抱き、
勝利せる集合有機頭脳を一部兵士の自己犠牲的攻撃により破壊したる後、
自らの歴史を葬りて、各星域に分散移住せり。
彼女は公式の歴史を失いながらも、その教訓を忘れることなく、
無謀な覇権主義や一部少数者のみによる過激な人工進化を戒め、
文明発展に応じた社会全体の資質向上に努めることにより、
アンドロメダ銀河全体の発展に重要な貢献を果たし来たれり。
彼女の〝英雄〟種族は英雄に
しかし、真の〝英雄〟は彼女自身の心の内に存在せり。
あくまでも星間社会の福利を通じて個人と種族の利益を図るべく、
努力の歴史を連綿と
遠く離れし星々や星域の間を結び続けたる人々の、
気高き精神の中にこそ宿りしものなり。
彼女の理事種族参加は、新帝国議会においても全会一致で承認せられたり。
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