ここらに愛、置いときますね。

藤波ゆうのう

第1話

「もうすぐ夏なのかな。」

そう感じるような最近の空は灰色で私の目には小さな青が落ちてくる。

どこもかしこも水たまりが出来ていて、ローファーを濡らさないよう下を向いて歩くセーラー服達。

私もその一人で、ゆっくりゆっくりピンク色の学校へ向かう。

私の学校は桜を象徴としているらしくて、やけに桜が多い。こう毎日のように雨に降られちゃさっさと散ってしまうんだろう。儚いなあなんて最近まで小学生だった私が気どる。

桜が好きな私には少し寂しくて、なんだか雨が嫌いになりそう。


「ねえ ゆき あの桜いつなくなるかな」

「何急に 気持ち悪い」

「酷くない? ちょっと思っただけだよ」

窓際にあるゆき__小学からの親友だ___の机に伏せて頬を膨らませる。

「あんたいつも私の机にいるけど今日もあいつ探してるの?」

「なっ そんなんじゃないよ」

「嘘下手すぎ 何がいいの」

「ゆきには分かんないよ いいの別に」

ふーん、なんて言いながらゆきが外を指さす。

指された先を見ればあいつが傘も刺さずに制服を汚しながら走っている。

あーあ 。またあんなに汚して。お母さん可哀想。

そう考えると口元が緩む。

好きとかそうゆうのじゃないの。ただ、近くにいたくて目で追っちゃうだけなの。

顔も良いわけじゃないし、頭はどちらかと言えば悪い。ちょっと足が速くて汗が似合う。

鐘が鳴る数秒前。

いつも通りあいつは濡れて来る。

「セーフ!?」

教室がわっと明るくなってあいつが輝いて見える。

それは多分雨で濡れているせいなんだろうけど、私には虹が見える。

中学生になってから嫌いになりそうだった雨がふと好きに思える。

女の子の好き嫌いを変えてるなんて多分、いや、絶対あいつは知らない。

自分が一人の女の子の特別であることあいつは知らないし、教えようとも思わない。

でも、気づいてくれればいいな、なんて思ったりする。

それは私が小学生から中学生に、ちょっと大人になって自分でも気づかないうちに恋というものを知ったからなのかもしれない。

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