第6話

五月


 サークルと部活とバイトについては早々にあきらめていた。

 私に人付き合いなんて無理だ。

 同じような理由で、トモダチ作りもあきらめた。

 あわよくばとは思っていたが、講義に出席しているだけで誰かと親しくなれるほど、大学は上手くできていないらしい。

 毎日大学と家との往復。

 楽しいとは言い難い日々。

 一体何がしたくて、私は毎朝起き、毎晩眠るんだろう?

 何かしないと、何もない。

 でも、一体私は何をすれば良いんだろう? 何ができるんだろう? 

 何もできないような気がする。どこにも行けないような気がする。

 もう、どうにもならない、と思った。

 私は決定的にどこかで何かを間違えたらしい。

 いや、単純に、典型的に、精神的に参っていただけだったのかもしれない。

 大学に行きたくない。

 できれば外にも出たくない。

 卒業の為には単位が必要だ。

 でも学校が怖くてたまらなかった。

 何もかも怖くてたまらなかった。

 朝起きてから、薄暗くなって夜の気配が滲むまでは漠然とした恐ろしさに耐え、夜の気配に満たされると今度は一日何もしなかったことへの罪悪感に耐え、部屋に閉じこもっていてもどうにもならないとわかっていながら、どうしても外に出る気にはなれなかった。


 それでも、一人暮らしなのだから、食料の買い出しだけはしなければならない。

 怖い怖いと言いながらも、律儀に定期的にスーパーへ足を運んだし、慣れてくるとスーパーよりも近くにあるコンビニで紙パック入りのカフェオレを買うこともした。


 私は私が一体何をしてるんだか、自分でもよくわからなくなっていた。



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