エキストラ①「今日もマノマノは無謀です」

※リレー企画「魔王が体育館に現れた」のエキストラストーリーです。3話、4話のジャンヌを見てたら書きたくなっちゃった。皆さんもスピンオフはご自由に。一応報告は欲しいですが。

 

 3話目、4話目を見てからご覧ください。

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3話目(山吹さん)

https://kakuyomu.jp/works/1177354054884291664

4話目(ぎんぴかさん)

https://kakuyomu.jp/works/1177354054884292350

5話目(雨天荒さん)

https://kakuyomu.jp/works/1177354054884293538

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 学園のアイドルであるマノマノだが、決して山田ジャンヌのようにデカスロンなわけでもなく、身長が高いとか足が長いとかそんな要素はない、顔は確かにかわいいが、まぁしかしAKBにいる程度の可愛さである。

 

 そんな、彼女が人気あるのは圧倒的なふんわり感と親しみやすさであろう。彼女はとても社交的だ、上級生、下級生、かまわず誰にでも話しかける。俺はどちらかといえば内向的なのに、それでも友達が多いのは、彼女が近くにいるからであろう。いつの間にか縁ができて、そして気づけば友達になってるケースがほとんどだ。


 衝撃的なエピソードは二年生の時、陸上部の山田ジャンヌが転校してきたときの話である。

 

「ちょっと、そこのあなた。」

マノマノは目の前を優雅に馬で闊歩しているジャンヌを呼び止めた。

「ん、わたしか。」

「そうよ、突っ込みどころ満点のあなたよ。」

「ふふん、わたしは突っ込まれるのは嫌いじゃないぞ。」

 そういってジャンヌは、馬の向きを変えて、パカラ、パカラ、ゆっくりとマノマノに近づいた。

「そんな下ネタはいらないのよ、なぜ水着で登校してるの?恥ずかしいとは思わないの。」

 マノマノは、誰もが疑問でありながら、誰も聞くことができなかった非常ににセンシティブな話題に開口一番堂々と踏み込んだのだ。

「わたしは、一応先生の許可はもらってるぞ。ふふ、それになぜ水着じゃダメなんだ。困る人などおらぬであろう。」

 まるで宝塚歌劇でも見てるかのようなきれいな発声で、自分の正当性を訴える山田ジャンヌ。たしかに貴女が水着で困る人など誰もいません。


「だめよ、困るわ。私の勇者は水着とか大好物なんだから、もし、テスト中にあなたを思い出して、点数が落ちたりしたらどうするのよっ!」

 む、たしかに、山田ジャンヌさんは目の毒だ。いや、クラスメイトはうらやましいぞ。そう言えば、彼女は馬に乗ったまま授業を受けるそうだが、いったいどういう状況になってるのか想像もつかない。

 いや違う、そうじゃない、なんで俺はお前のになってるんだ。そしてマノマノのその意見は言いがかり以外の何物でもないじゃないか。


「なるほど、そんなことまで考えつかなかった。それは申し訳ない、しかしわたしにも曲げられないポリシーというものがある。簡単にこのスタイルをやめるわけにはいかんよ。」

 どこが、なるほどなんだ。しかもジャンヌさんあなたのポリシーは水着で登校することなんですね。いや、ありがたいですけど、どうなんですかね。


「ポ、ポリシー!?ポリシーじゃ仕方ないわね。でもこちらも黙ってそんな変態な恰好を見過ごすわけにはいかないのよ。何せ私は生き物係だから!」

 人差し指を高々と掲げ、マノマノはジャンヌに宣言する。

 渾身のボケなんだろうけど、うん、俺はもう突っ込まない。


「良かろう、では、決闘しかないな。水着が話題だし、水泳勝負で決着をつけようじゃないか。」

 おいあんた、水泳めちゃくちゃ得意なんじゃないのか、ずるいぞ。

「の、望むところよ!」

 そういってマノマノは勝負をあっさり受けた。

 あれ、でも確かマノマノって…。


 そういって、二人はそのまま、1時間目の授業を無視して、他クラスが水泳の授業で使用しているプールに割り込んで勝負を始めることになった。自由だなぁうちの学校。ちなみに立会人として俺は付き合わされた。


 結果はジャンヌの完勝。


 完勝どころの話ではない、そもそもマノマノは泳げないのだ。本人はそのことをすっかり忘れていたらしく、開始直後におぼれていった。

 それを確認するとすぐさま、すでに10m以上泳いでいたジャンヌはくるっとターンをして、信じられないスピードでマノマノを助けるのであった。

 「全く君は無謀な奴だな、名前は何という。」

 マノマオをプールサイドに引き上げて、ジャンヌは聞いた。

 「…ありがとう、私は愛野魔女マノマオよ。」

 「そうか、私はジャンヌだ。マノマノ、今日から私達は友達だ!明日からはともに水着で登校しようじゃないか。」

 そういって、ジャンヌはマノマノに手を伸ばし、マノマノはそれに答えてお互いに熱い握手を交わすのだった。


 もちろん、俺は次の日、水着で登校しようとするマノマノを全力で止めるのだった。

 

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