ミニフィクション・ギャグ
小書会
あいうえおかきくけこさしすせそたちつてとなにぬねのはひふへほまみむめもやゆよらりるれろわをん
「何ですかこれ」
「何ですかって……タイトルですよ、タイトル」
「いや、却下」
「ええ? 何をおっしゃる、どこが駄目なんですか、ああ、『ゐ』ですか、『ゐ』がないのを怒ってらっしゃる」
「違います。あのね、意味が分からないんですよ」
「天下の編集殿が、これの意味を読みとれないと? そんなことはないでしょう」
「その天下の編集殿がこうして目の前で意味が分からないと言っているのです、残念ながらこれの意味はさっぱりです。このタイトルは却下です」
「ああそうですか、全く解せない、ならば一から説明してあげようじゃないですか、あなた『ABC殺人事件』はご存じでしょう」
「もちろん読んでいます」
「そのネーミング、一見ただのアルファベットをはじめから並べて……」
「ちょっと待った、まさか、その例とこれは同じと」
「何か文句がありますか」
「当たり前でしょう、なんせ向こうは頭3文字だけですし『ABC』も殺人事件の犯人の名前であり、そもそもあなたの今回の作品はサスペンスでもミステリーでもないでしょう」
「ぐう、言ってくれるな、このタイトルは作品にとって意義のあるものだ」
「いや、何度も読んでいる私が理解できていない時点でもう有意義ではないでしょう」
「言わせておけば、こうなれば編集長に直談判を申し入れるぞ」
「あ、どこへ行くんですか、編集長に申し出たところでどうにもならない……ああ、行ってしまった、本当に意味のないタイトルなのかはさておきこのタイトルでは……あ、おかえりなさい」
「申し入れた」
「どうでしたか」
「すごくいいよ、すごくいいとほめてくださった」
「なんと、信じられないですね」
「いや、そこはいいんだけど『長すぎて表紙に書ききれない』と」
「ああ、やはりその壁が、まあ普通そんなタイトルはつけない」
「まあ、先客がいるので今月は無理だと」
「先客……え、先客?」
「そう、実は自分より先にタイトルが決まってたものがあって、それがこれにもう入っているんだけど」
「来月号の表紙レイアウトですか……ん?」
「この竹端先生の作品が……」
竹端香『亜唖娃阿哀愛挨姶逢葵茜穐悪握渥旭葦芦鯵梓圧斡扱宛姐虻飴絢綾鮎或粟袷安庵按暗案闇鞍杏以伊位依偉…………』
そこから『腕』までJISコードの順番に漢字が並べられていた。
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