織物でつむがれる物語
サチヤ
第1話 はじめまして城主さま
今から数百年前の昔、隣国との戦争時にリヴァナという美しく、織物が上手な娘がおりました。
娘が織る織物には身に付けると、ある者は病が治り、またある者はケガが早く治るといった不思議な力がありました。
ある日、娘の織物を和睦の
隣国の王はそれを身に付けると、争う心が静まりました。
王は戦いを
それから十数年後、平和を取り戻した娘は死の淵で言いました。
再び争いが起こる時、必ず生まれかわり、人々の役に立ちたいと言い亡くなりました。
人々は悲しみそして娘に感謝しました。
それから数百年。ここはバーナル王国の北部ウエストリカ城の城下町のリヴァナ。城下町とは言っても見渡す限り緑の大地。ヤギや羊がたくさん放牧されている。どちらかといえば、リヴァナ村とよんだ方がしっくりくる感じがする町だ。
今日も町長の娘リリアは、市場に織物を売りに出かけた。
町長の娘なら生活には困ってはいないのだが、市での商売が気に入りなので、十八の娘では少々変わり者だろう。
市場はいつも活気にあふれているが、今日はとくに賑やかだ。
何かあったかしら?と思って、隣で店を出しているカリナさんにたずねた。
「今日はなんだか賑やかね」
「リリアったら忘れたのかい? 今日は王都から新しい城主の方が着任する日じゃないか」
「そうだったわ。 それにしても賑やかね」
「そりゃそうだよ。 祝いも兼ねて、いつも以上に品揃えがあるからね。 みんな楽しみにしてるのさ」
「後で私も市を見なきゃ」
「そうするといいさ」
二人はふふふと笑った。
次の日、リリアが織物を作っていると、ウエストリカ城から役人がリリアを訪ねて来た。
応対は父親が代わりにしてくれた。
役人が帰ってから、父親がリリアを呼んだ。
「新しい城主様は、織物がお好きなんだだそうだ。」
「町一番の織物上手のお前の事を聞いて、話をしたいと訪ねて来たんだ。」
「まあ… でもお父様。」
「私より上手な人はたくさんいるわ」
「他の方じゃ駄目なの?」
「城主様は、お前を指名なのだそうだ。」
「そう… わかったわお父様」
リリアはその夜、緊張して少ししか眠れませんでした。
翌日、リリアは城から迎えに来た馬車に乗りお城に向かいました。
馬車を降りて中に案内されたリリアは驚き目をみはりました。
床や壁は大理石で造られており、所どころに絵や織物が飾られていた。
わあ… 素敵。
新しい城主様は、とてもセンスの良い方なのね。
感心しながら歩いていると部屋の前に着いたらしい。
扉前の警備兵に案内人はリリアの訪れを告げ、中に入るよう促された。
中は謁見の間ではなくテーブルやソファーのある大きめの部屋だった。
部屋の中には二十代前半くらいの若い男性が座っていた。
「やあ。 よく来てくれたね。」
「私は、タルジュ・ルノー・カウデイという。」
「ここウエストリカ城の城主に成った者だ。」
「突然の呼び出しに応じてくれてありがとう。」
「はじめまして。 お会いできて光栄です。」
「私は、リリア・デリ・ハッシーバと申します。」
リリアは微笑み挨拶をした。
「早速だが話がしたい。 そこに座ってくれないかい。」
はい。と、返事をしてソファーに座った。
とても気さくな方のようなので、リリアはホッとした。
タルジュ城主は幼少時に、この町の織姫伝説の話を聞いて以来、織物が好きに成ったそうだ。
リリアとタルジュは、伝説の話や織物の話を楽しく話した。
今日はなんて素敵な日なのかしら…。
リリアは思いがけず話が合ったタルジュを思い出し、また会える事を願って眠りについた。
その夜リリアは不思議な夢を見た。
夢の中で町が戦いの中にあったのだ。
それなのにリリアは織物をしていた。
衣類やハンカチや壁掛けを一生懸命に織って、人々に配っていた。
偉い人や町の人々に感謝され、何故みんなに感謝されているのかがわからない。
そんな夢の中で誰かが呼んでいる… リヴァナ… 誰?誰なの…
あなたは誰?必死に呼び掛けたが、だんだんと声が聞こえなく成ってきた…
目を開けると朝に成っていた。
何だったんだろう… しばらく考えたが諦めた。
夢だもの気にするだけ無駄ね。
リリアは良し!と声を出して、部屋を出て朝食をとりに行った。
リリアが朝食をとりに行くと、父親が機嫌良く話し掛けてきた。
「城主様との話はどうだった?」
「どの様なお話をしたんだい?」
「織姫リヴァナの昔話や織物の話をしたわ」
「それだけかい?」
「それだけよ 他に何がありますの?」
何だそうか…と、苦笑いしていた。
何だろう… 何となく不愉快に思った。
気にしても 仕方がないわね…と思い、食事を再開した
もくもくと食事を終えて市場に出かけた。
今日も市場は賑やかで活気があった。
リリアは店に出す織物を並べ始めた。
「おはようリリア、昨日はお城に行って来たんだって?」
「何で知ってるの?」
「そりゃもちろん、みんなが噂してたし馬車を見かけたからさ。」
「それで、お城はどんな感じだったんだい?」
「そうね…大理石で造られていて、絵や織物が飾られていて素敵だったわ…」
リリアはうっとりしながら話した。
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