ミーテイング


捜査一課の刑事は事件さえ起こらなければ、多少報告書作成関係は多いが、結構内勤として暇な部類に入る。

 昇進試験へといそ締める可能性もある。

 が、一度事件が起きれば、事実上休みがなくなる。無休になると言ってもいい。

 一晩中、聞き込みはローラーで行われ、そのまんま翌朝に捜査会議となった。

 捜査本部は、現場に一番近い、警察署、枚方中央警察署。

 一番、大きな会議室が、捜査本部となる。名目上、枚方中央警察署長が操作本部長となるが、実際の捜査の指揮は、大阪府警本部の捜査一課の課長がとる。

 和才佑わさいたすくは、本部の捜査一課の捜査員として、枚方中央署に出張っていることになる。

 集められた捜査情報が、ここで、すべて開陳となる。

 一課長の糸井に代わり、課長代理の古橋がだみ声で、集められた情報を説明していく。

 糸井最いといすぐるは瞑目して腕組みしたままだ。

「被害者の身元も所持していた財布並びに免許証から判明した、名前は、木村保男きむらやすお、男性、生年月日は昭和五十一年九月二十八日生まれ、住所は、大阪府東大阪市滝野町20-3、正確な職業までは、わかっていないが、暴力団関係者の確率が高い」

 ここで、古橋は間をおく。

 どこからともなく野次が入る。

「通名やろ在日やな」

 警察組織は超保守で超マッチョ。例外なく、中国人、朝鮮人が大嫌い。白人であろうと、外人は全部嫌い。日本人でさえきらいなのだから。当たり前だ。

 古橋は、野次を消し威圧するかの様子で捜査員全員を見回す。 

「えー検死の結果、死亡推定時刻は、昨夜十月十二日の午後八時頃。死因は、顔面及び、腹部、胸部の刺し傷による出血多量によるショック死と推定される。顔面を相当殴られた上、前歯をおられている」

「拷問やな」と一捜査員として席についている小谷が和才に告げる。

「説明したとおり、被害者ガイシャは、ひどい加虐が加えられた上、殺されている、怨恨ならびに、暴力団、組織犯罪者による犯行が推定される。鑑識による遺留物の捜査により、遺体発見現場は、犯行場所でなく、ただあの場所に遺棄された可能性が極めて高い、今朝のところは、以上だ。このあと、暴対課の須黒すぐろから説明が入る」

 須黒が会議室の前の方で、立ち上がり、ペラペラ喋る出した。

 和才は、あんまり本気で聞いていない。

 このヤマは、早く片付きそうだ。

 一課長の糸井には、出世のいい手土産になるだろう。

 噂では糸井は、このあと、どこか大阪府の田舎のC級の警察署長になるって話だ。

 結構な御身分だ。

 ヤクザが、ルール違反を犯したものか、暴力団の職業上の禁忌に触れたかなにかで懲らしめたところ、やりすぎたか、見せしめで、殺したのだろう。

 各県に置かれている警察学校の一年生でも、容易に推理できる。

 和才は、不謹慎にもウトウトしていた。昨日は、徹夜で聞き込みに周り、そのまま、この枚方中央署の柔道場で雑魚寝だった。

 柔道場の畳は、一種独特の匂いはするわ、隣の西高槻署員のいびきはうるさいわ、で殆ど寝られなかったからだ。

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