第9話見ちゃいましたー
【Lapis夢が丘店のサロン】
素子ちゃんの手早く治ると良いけど、エネルギーを感じる人じゃないから、石が治してるのわからないんだよな。
気がついたら良くなっているって感じ。
ずっと手を使っている仕事だから、石が頑張っても中々だろうな。
カットしてもらおうと思ってたんだけど、やめておこう。
まあ、僕が行かなくてもその分他のお客さんのやるわけだから同じなんだけど、何となく遠慮しちゃうよな。
あ、そろそろ二人が来る頃だね。
麻里愛ちゃんご機嫌直ったかな?
何で急にあんなに不機嫌になったんだろう?
昔の人はそういうの何て言ったっけ?
確か…
女心と秋の空だったよな。
本当わけがわからない。
【店内】
「おはようございます」
「おはよう」
「おはようございます」
「オーナーは?」
「サロンに居るよ」
〈サロンの方に目をやる麻里愛。そんな麻里愛の様子を見ている羊里〉
「(遊ちゃんモテモテだな)」
「ンニャン」
「タマ、どうしたの?」
「お腹空いたのか?」
「私ご飯あげます。タマおいで」
「猫は犬と違ってご飯の時間決まってないからな(奥様が「猫の嫌食い」って言ってたっけな)」
「あ、もう、チビタマ。それはパパのだよ」
〈チビタマがタマの食器に頭を突っ込んで食べている〉
「はい、じゃあタマこっち」
〈真理絵は別の食器にカリカリを入れてタマに食べさせる〉
「ポンちゃんとチビトラは寝てる。いつでも貰えるから、最近はガツガツしなくなったよね」
〈サロンから遊が出て来ると麻里愛は視線を逸らす〉
「あ、オーナー。おはようございます」
「おはよう」
「…おはようございます」
「どうしたの?麻里愛」
「えっ?」
「何か変だよ」
「そう?別に普通よ」
「ふーん」
普通なの?
何かまだ機嫌悪そうだけどね。
【駅前の階段】
はぁ…
気分転換に温泉入って帰ろうかな?
まだ一度も行った事無かったもんな。
せっかく近くに有るんだから、行かないとね。
【温泉の前】
何だかこの趣きが良いよな。
僕の家も母屋は日本家屋だからね、子供の頃はあの家で育ったから、こういう雰囲気が好きなんだよな。
【暖簾前】
〈男湯の暖簾をくぐり中に入る遊〉
露天風呂が有るんだね、行ってみようかな。
【露天風呂】
外の景色が見えると気持ち良いなあ。
あれ?
えっ?
こ、こ、混浴?
「あら、天空路さん」
「えっ?あ、愛里さん?」
「ちょっと、前ぐらい隠しなさいよ」
「あっ、し、失礼」
こ、ここって、混浴だったのか。
知らなかった(大汗)
〈愛里に背中を向けて小さくなる遊〉
「ねえ、天空路さん」
「は、はい」
「出たら呑みに行かない?」
はぁ…
この人酒癖悪いんだったよな。
「嫌なの?」
「え?いや、そういうわけじゃ…」
「じゃあ決まりね」
勝手に決められちゃったし。
「何してるのよ?洗ったんなら入りなさいよ」
そ、そうだね。
〈横歩きして愛里の方を見ないようにお風呂の隅の方に入る遊。そして背中を向ける〉
「ちょっと、何でそんなに離れてるのよ?」
「いや…」
だって…ねえ。
「まあ、良いわ」
〈遊の背中見詰める愛里〉
「(へー、もっと軟弱かと思ったら、意外と逞しいのね)」
混浴はちょっとびっくりしたけど、それに愛里さんには凄いびっくりしたけど、でも温泉てやっぱり気持ち良いね。
「ちゃんと温まった?」
「うん」
「じゃあ、上がるわよ」
「はい」
〈一緒に立ち上がる〉
「やだもう」
「あ、ごめん」
〈もう一度背中を向けてお湯に入る遊〉
「外で待ってるわ」
「う、うん」
見るつもりじゃなかったけど、ちょっと見えちゃった。
女性の胸に無意識に目が行くのは仕方ないよな。
それは本能なんだから。
猿のように手をついて歩く動物は雄の気を引くのはお尻らしい。
だから赤いのかな?
人間は進化して二本足で歩くようになったから、女性が男性の気を引くのはお尻じゃなくて胸なんだって、どこかで聞いた事が有る。
だから無意識に目が行くのは本能と言うか、自然な事なんだ。
って、誰に言い訳してるんだ?僕。
愛里さん結構グラマーだったな。
〈遊は激しく頭を横に振る〉
忘れよう。
もう上がらないと、のぼせちゃいそう。
あ、また誰か入って来た。
は、早く出よう。
「おや、お兄ちゃん。大丈夫かい?のぼせたんだろう」
「大丈夫です」
お婆ちゃん達だ。
【暖簾前】
「ふぅー、暑い」
あれ?
先に出たのにまだかな?
そうか、女性は色々と時間がかかるんだよな。
「お待たせ」
「あ…」
なんだかとっても綺麗だ。
何だろう?
まだ少し濡れた髪。
ほんのり赤い顔。
「何ポカンとしてるのよ?行くわよ」
「あ、うん」
【居酒屋】
「いらっしゃい!」
「ここの魚料理美味しいのよ」
「それは楽しみだね」
注文は全部愛里さんが決めてくれた。
僕はそういうのだめだから助かるよ。
「お待たせしました」
で、テーブルの上には何種類もの日本酒が並んだ。
これ全部呑めるのかな?
いや、愛里さんなら呑むよね。
僕はあんまり呑めないけど。
「今日は天空路さんが居るから、安心して酔えるわね」
いや、そこ安心しなくて良いから。
「あら、もう無くなっちゃった。すみませーん」
「はいよ。どんどん運ぶからね」
って、またたくさん徳利が並んだぞ。
愛里さんここへ来るといつもこうらしくて、お店の人がメニューの端から順に並べて行く。
「愛里ちゃん、今日はどこまで呑むんだい?」
「全部よ」
全部って、もしかしてあのカウンターに並んでるやつ….
あれ全種類呑むの?
「ちょっと天空路さん。見てないで呑みなさいよね」
「あ、うん。でも僕お酒はあんまり呑めないんだ」
「何言ってるのよ。ほら、男ならぐぐーっと」
【愛里の部屋】
「ちょっと大丈夫?今お水持って来てあげるから」
〈愛里はグラスに水を入れて来る〉
「あら、寝ちゃったの?」
〈ソファーに横になって遊が眠っている〉
「(本当お酒弱いのね。先にダウンしちゃうからちっとも酔えなかったわ「送って行く」なんて頑張っちゃって、着いたらこれだもんね)」
〈愛里は遊に毛布をかける〉
「(良く見ると結構イケメンよね)」
〈遊の顔をじっと見詰める愛里。そして頬にキスする〉
「うん?」
〈遊が目を開ける。すぐ近くにに愛里の顔が有るがすぐには状況がわからなくて目をパチパチ〉
「……」
「……」
「あれ?ここ…?あ、そうか。僕帰らないと」
〈ガバッと起き上がる遊〉
「もう(何よ)」
「ごめんね、猫が待ってるから帰らないと」
〈言いながら玄関に向かう遊〉
「お邪魔しました」
〈バタン〉
「行っちゃった(また猫に邪魔されちゃったわ…気づいたかしら?キス…まあ、良いわ)」
【天空路家の前】
〈タクシーが停まり遊が降りる。時刻は午前2時半〉
【天空路家】
〈遊は玄関の鍵を開けて入る〉
Lapis達は寝てるのかな?
【お風呂場】
〈シャワーを浴びる遊〉
2人とも迎えにも来てくれないし…
【脱衣所】
いつもみたいに待っててくれないと寂しいだろ。
そりゃあパパちゃんが遅くなったのが悪いんだけどさ。
【ベッドルーム】
「あ…」
なるほど、それで来ないのか。
〈ベッドカバーの上にLapisとRutileを抱っこして春陽が寝ている。遊は隣のベッドから毛布を運んで春陽にかける〉
風邪ひくだろ。
〈春陽は眠っている〉
ごめんな、春陽ちゃん。
【キッチン】
〈冷蔵庫を開けたりレンジを開けて見る遊〉
やっぱり。
ご飯作って待っててくれたんだよな。
電話ぐらいすれば良かったんだけど…
明日食べよう。
【ベッドルーム】
何故か2つ有るベッド。
こういう時助かるよね。
Lapisの為に買ったんだけど、普段は僕と一緒に寝るから結局使ってなくて、Rutileが来てからも2人とも僕にくっついて寝てるからな。
〈もう一つのベッドに入る遊〉
Lapis達来ないのかな?
パパちゃんちゃみちいでしゅ。
春陽ちゃんと寝んねの方が良いのかよ?
あ、もしかして、お嫁さん貰ったらママの方で寝たりする?
うー、それは寂しいなあ。
来ないんだ。
良ーいもん、良いもん。
もう、寝る。
〈そして朝。Rutileが遊の顔を舐めて起こす。Lapisは遊の頭の横にくっついてゴロゴロ言っている〉
「うん?おはよう」
〈隣のベッドを見る遊。毛布がきちんとたたんである〉
帰ったのかな?
「ミャー(パパちゃんお腹空いた)」
「ちゃて、ご飯にちまちゅよ」
【キッチン】
〈テーブルに料理が並んでいる〉
あれ?
春陽ちゃん帰ってなかったんだ。
「あ、お兄ちゃん起きた?」
「おはよう。昨日はごめん」
「はい、ご飯。早く食べないと冷めちゃうわ」
何も聞かないから助かるな。
朝から文句言われたくないしね。
って、奥さんじゃないんだけど…
「はーい、Lapis、Rutile」
「ニャー(お腹空いたわ)」
「ミャー(ご飯だ)」
「じゃあ私、着替えないといけないから帰るわね」
「うん、ありがとう」
「Lapis、Rutile。今日もパパちゃん遅かったら「メ」してあげましょうね」
やっぱりちょっとだけ怒ってるか?
春陽ちゃん今日早番なんだよな。
悪かったな。
【玄関】
〈靴を履く春陽〉
「(何が「昨日はごめん」よ。シャツにお化粧がついてたわ)」
【ベッドルーム】
あれ?
昨日着てた服は?
【脱衣所】
ああ、春陽ちゃんが洗濯しといてくれたんだ。
あ、そろそろ出かけないと。
【Lapis夢が丘店】
「おはよう遊ちゃん」
「おはよう」
「何だか疲れた顔してるな」
「え?そう?」
そうかな?
だとしたら、春陽ちゃんに悪い事しちゃったって考えてたからかな?
「ミュー(遊ぼう)」
あ、チビトラ。
〈チビトラは遊の服に爪をかけて登って行く〉
「こらこら、痛いよ」
チビタマは寝てるのかな?
野良ちゃんしてた時は、今みたいに安心して眠れなかっただろうな。
今は爆睡してるもんね。
もうすっかり家猫と同じ。
「おはようございます」
「おはようございます」
「おはよう」
「あ、オーナー。私見ちゃいましたー」
「え?何を?」
「昨日夜中に愛里ちゃんのマンションから出て来たの」
「えっ?!」
〈思いっきり驚く麻里愛〉
「ああ、昨日は二人で呑んだから送って行ったんだよ」
「へー。でも送って行っただけなら随分時間かかってましたよね?」
「え?」
「実は、二人で帰って来たところも見たんです」
夜中に真理絵ちゃんは何してたんだ?
そんな時間に出歩いてたら危ないだろ。
「家が近いから、2階の窓から見えちゃうの」
「お酒…呑みに行ったんですか?二人だけで?」
あ、喋った。
何か久々に麻里愛ちゃんと喋った気がする。
「偶然温泉で会ってね」
「温泉て、お風呂の中?あそこ混浴ですよね?」
「えっと…」
「嫌らしい!」
あ、また麻里愛ちゃん怒ってる?
何で怒るんだろう?
だいたい、あそこって…
温泉は他にも有るのに。
「愛里ちゃん、あそこの露天風呂が好きなんですよ。混浴だけど」
なるほどね。
「温泉で会ってー、お酒呑んでー、送って行ってーそれから?」
「それだけだよ」
「ウソウソ。チャンスでしょう」
「何のチャンスだよ?」
「そういう事したんですか?」
そういう事ってどういう事だよ?
「最低です!」
〈プイッとそっぽを向く麻里愛〉
「あのね、君達が想像してるような事は何もしてないよ。僕お酒弱いから、ちょっと寝ちゃって」
「ほほう、寝ちゃって?それから?」
「愛里さんが水を持って来てくれたの。彼女に聞いてご覧」
「昨夜の貴方、とっても素敵だったわ」
って、いつの間にか来てるし。
「ほらほら、やっぱり」
「何がやっぱりだよ。愛里さんも誤解されるような言い方するかなあ」
「ウフフ、冗談よ「猫が待ってるから」って帰っちゃったの」
「遊ちゃんなら有り得る」
「何だ、つまんない」
「あのなあ」
信じて頂けましたでしょうかっ?
はぁ…
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