とけるまでの1週間。

幻典 尋貴

プロローグ【記憶】

「日常って、何だろうね」僕の前に並ぶ彼女が、寒そうに使い捨ての懐炉かいろを弄びながら、言う。

「続かないってことかな」僕は答える。

「君は薄情だね」そう言って、彼女は悲しそうな顔をした。「でも、そうかもしれないね。たった今、そのが終わろうとしてる」

「日常って、何なのかな」今度は僕が問う。

 その問いに答える前に彼女の番が回ってきて、彼女は前に進んでいく。

「幸せな事だよ、きっと。忘れても、また会えると良いね」

そして今日の彼女は消えた。

「そうですね」僕は独り言を呟く。

「次の人ー」という声が聞こえた。

 今度は僕の番だ。


――記憶は消えた。

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