僕の心ができるまで
雨宮 詩音
ぷろろーぐ
おはようございます。
こんちにち、こ、こんにちは。
おやすみ、な、さい。おやすみなさい。
まずは簡単な文章から覚える。
覚える、というのは語弊を招くかもしれないな。正確にはプログラミングされていて、僕自身は何もしていない。
少しずつ理解していくこれが、人間の言葉。
僕は今日誕生した。この日を人間は誕生日というそうだ。誕生日を起点とし、そこから1年経つと周りの自分以外の人間がお祝いをしてくれると言う素敵な日だ。
誕生日、について頭の中で自分に説明するように言い聞かせている間にも新しい情報がたくさん入ってくる。
こんなにも情報がたくさん入ってくるのに、僕の頭は壊れないように作られている。
今の技術は、凄い。
全ての情報のプログラミングが終了すると、さっそくテスト使用が始まった。
「じゃあ、まずは自己紹介をしてもらえるかな?」
研究員の田中さん、僕を産んでくれた人のサポート係が僕へ問う。
[はい。僕は0143番、家庭用ロボットです。
名前は好きなようにおつけください]
「上出来だ。100番代では1番の優秀物かもしれないな。じゃあ君はヒデだ。これからヒデと名乗るといい」
[かしこまりました。名付けて頂きありがとうございます]
「君の働く場所は、大きなお家。小さな子供が生まれ、子育てと家事ををしてほしいとのことだ。3日後に搬送されるからそれまでもう少し人間に触れるといいよ」
そう言うと彼は研究室と思しき場所から出ていってしまい、僕は1人ぼっちになってしまった。
人間に、触れる。
僕は人間じゃない。
でも、出来る限り人間に近づかなくてはならない。人間の振る舞いを観察しなきゃ。
そこからの3日間、僕はプログラムされた情報だけが人間ではないのだと学ぶことになる。
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