90年代ライトノベル不完全ガイド
祭谷 一斗
神坂一『日帰りクエスト』を読む(1)
前置き
「初回が神坂一先生なのは分かるけど、『スレイヤーズ!』じゃないの?」
そう思ったあなたは正しい。なので、本稿のラインナップ選定は個人的な好みである、とあらかじめ述べておこう。2010年代も終わりに差し掛かった今、かつてリアルタイムで愛読した作品を、なるべく歴史&技術的に覗けるよう記すつもりでいる。余力その他があれば、作者の他の作品についても取り上げるかも知れない。
第一回目次(予定)
1 周辺事情&年表 ※本稿です。
2 『日帰りクエスト』1巻1pを技術的に読む
3 『日帰りクエスト』シリーズ全体を一ファンとして読む
4 次回予告
1
まずは『日帰りクエスト』刊行当時の事情から入ろう。今となっては分かりづらいが、90年代著者の作品的には次点、一時期は『ロスト・ユニバース』より知られているほどだった。「神坂一なら『スレイヤーズ!』、次に『日帰りクエスト』」と言う時代が確かにあったのである。
無論これは、筆者の周囲だけの話かも知れない。そう思い関連年表を作成した所、あっさり裏付けがとれた(資料として末尾掲載)。コミカライズなどの時期が違っており、95年から97年までは『日帰りクエスト』関連の出版が一方的だったのだ。
話は単行本だけに留まらない。漫画雑誌『月刊ASUKAファンタジーDX』、後に『ふぁんデラ』連載当時の『日帰りクエスト』は、たびたび表紙を飾ってもいる(96年8月号、97年6月号など。表紙での告知も比較的大きい)。『日帰りクエスト』は2番目の知名度であった、そう言っていいだろう。
90年代半ば。『スレイヤーズ!』があまりにヒットし多忙なせいか、はたまた売り上げか。ともあれ『ロスト・ユニバース』は年単位で刊行間隔が空いており、あるいは打ち切りなのかとも囁かれていた。それが間違いだったと分かるのは98年、続刊と新装版刊行、TVアニメ放映があってのことだ。
冒頭で私は、
「神坂一なら『スレイヤーズ!』、次に『日帰りクエスト』」と言う時代が確かにあった。
と述べた。それはもちろん、今大半の人にとってそうでは無いからだ。
現在。知名度差が再度返る兆しは、今のところ無い。どちらかと言えば『日帰りクエスト』は、「神坂一ファンなら知る人ぞ知る、現在大流行中の異世界ものの先駆的作品」として今に至っている。((2)に続く)
付録:『ロスト・ユニバース』&『日帰りクエスト』資料年表
★=『ロスト~』関連 ○=『日帰り~』関連。 †=漫画。 ◆=TVアニメ。
小説・漫画の単行本とTVアニメ以外は省略した。刊行年は奥付による。
92年12月 ★ 『ロスト・ユニバース』 1巻
93年 3月 ○ 『日帰りクエスト』 1巻
8月 ★ 『ロスト・ユニバース』2巻
9月 ○ 『日帰りクエスト』 2巻
94年 4月 ○ 『日帰りクエスト』 3巻
5月 ★ 『ロスト・ユニバース』3巻
95年 3月 ○†『日帰りクエスト』漫画版 1巻
4月 ○ 『日帰りクエスト』 4巻(完結)
7月 ○†『日帰りクエスト』漫画版 2巻
11月 ○†『日帰りクエスト』漫画版 3巻
96年 6月 ○†『日帰りクエスト』漫画版 4巻
8月 ○†『日帰りクエスト すぺしゃる』漫画版 1巻(番外編)
97年 1月 ○†『日帰りクエスト』漫画版 5巻
7月 ○†『日帰りクエスト』漫画版 6巻
10月 ○†『日帰りクエスト すぺしゃる』漫画版 2巻(番外編、完結)
98年 2月 ○†『日帰りクエスト』漫画版 7巻(完結)
4月 ★ 『ロスト・ユニバース』4巻
4月 ★†『ロスト・ユニバース』漫画版 1巻
4月 ★◆『ロスト・ユニバース』TVアニメ版
『ロスト・ユニバース』新装版刊行開始
99年 2月 ★†『ロスト・ユニバース』漫画版 2巻
4月 ★ 『ロスト・ユニバース』5巻(完結)
12月 ★†『ロスト・ユニバース』漫画版 3巻(完結)
02年11月 ★†『ロスト・ユニバース すぺしゃる』漫画版(番外編)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます