黄昏のコキゥトス〜ダンジョン最下層から目指す地上への道のり〜

Okiko

第1話ー地下都市コキゥトス

幾多もの乳白色の円錐形の塔がそそり立ち、その間を縫うように透き通った川が流れる広大な空間。

中心には巨大な塔があり、まるで天井を支える柱の様だ。


僕の生まれた街、コキゥトス。


ここは、ダンジョンの最下層。


コキゥトスより下に行く穴は一つもない。

だから最下層の街と呼ばれている。


ダンジョンが僕の住む国で、この国は上に長く続いている。


そしてこの世界の最上層の更に上、地上には何もないソラと言う空間が広がっていて、それをタイヨーと言う大きな光球が照らしているらしい。


でも、誰も知らない。


ダンジョンから出られた国民はいない。


コキゥトスから最上層の都市リルボまでの旅も命がけなのに、リルボから地上へ続く道の旅はそれよりも危険だと言われている。


地上に行けた人は1人もいない。


ある人はこう言う。

「地上の神々の争いから人を守る為に作られたダンジョン。」

だから地上には出ちゃいけないんだって。


ある人はこう言う。

「地上から追放された人のメイズ。」

だから出られない様になってるのさ、って。


一部ではこう言われてる。

「罪人を封印する為のヘル。」

封印が解けたら出られるんだ。


どれが正しい名前なのかなんて、もう誰も知らないし、興味もない。


ただ一つ分かっている事は、最下層から最上層までを貫く巨大な中央の光塔の灯と熱は、あと半年の寿命だってこと。


誰かが地上に出られなければ、あと半年でこの国は真っ暗になって、最大の熱源を失って滅亡する。


僕はダンジョンの本当の名前はヘルだと思う。


光塔は封印だったんだって。


今なら地上に出られるんだって。


だから、地上を目指す事にした。


実を言うと、そう思って何か始めないと気が狂っちゃいそうなんだ。


どうせ半年後には皆んな死ぬんだから、最後に夢を見たって、誰も咎めたりしないさ。

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