第4話 お姫様は外出禁止!?
ティリアはフレンチトーストを口にして「むふー甘くて美味しいです。」と幸せそうにしている。
ティリアのナイフとフォークの使い方がとても綺麗で、さすがお姫様といったところだろうか。
俺もフレンチトーストを口に入れる。
とても美味しい。このロイヤルポストはファミレスの中でもとても美味しい部類に入ると個人的に思っている。でも少しお値段が高めだけれど。
「涼祐は甘いもの好きですか?」
「うん、普通に好きだよ。」
「普通にって、どのくらいですか?」
「んーどうだろう? 好きだけど女の子みたいに夢中になるほどではないかな。」
「確かに男の人は甘いものあんまり食べるイメージないですね。」
そんな会話をたまに挟みつつ、俺とティリアは食事を済ませた。
「とりあえず、改めて自己紹介しない? 」
「君が異世界から来たと言われても、状況がよく分からないないんだ。」
「そうですよね。そうしましょう。」
「私も涼祐のこと、まだ名前しか知らないので涼祐の事をもっと知りたいです。」
ティリアは俺の顔をニコッと笑って見つめている。
俺がどんな人物なのか? 気になっているようだ。
「俺は聖桜(セイオウ)高校に通ってる高校2年生で...高校って分かる?」
「はい! 分かりますよ。学校のことですよね? 合ってますか?」
「うん、そう学校。」
「それで歳は16歳。でもあと2日経って10/9になれば17歳になるけどね。」
「16歳ですか?なら私の方が大人ですね。私は10日前が誕生日で17歳になりましたから。」
「そうなんだ。見た目はもう少し幼く見えるけどね。」
「もう!私よりも涼祐の方がまだ子供じゃないですか!」
「ごめん、ごめん。」
笑いながら俺は謝った。
「確かにそうだよね。ティリアの言う通りだ俺の方が12日、子供だね。」
そう言い、見栄を張って選んだ苦くて美味しくない、ホットコーヒーを飲んだ。
確かにコーヒーの苦味とコクの美味しさを理解できない俺はまだ子供だ。
「そうです〜涼祐はまだ16歳ですから。2日後の誕生日を迎えるまでは私の方が年上です〜。」
「...って涼祐は2日後に誕生日なんですね! おめでたいですね! お祝いしましょう!」
「ありがとう。でもまだ誕生日じゃないから。」
「ティリアの方こそ誕生日おめでとう。」
「ありがとうございます。今度一緒にお祝いしましょうね。」
「そうだね。今度お祝いしようか。」
「...お祝いは今度するとして、とりあえず話を戻そうか。」
こういうときに、女の子は話の寄り道をするのが好きだよね...あれ? 俺が寄り道したんだっけ?
「あっそうですね。すみません。」
「俺の方こそごめんね、俺が余計な事を言ったから脱線したかもしれない。」
「まぁ〜謝ってくれたので許してあげます。」
脱線してしまった会話をたどって、重要な所に戻ってきた。
「それで、ティリアの置かれている状況についての話を聞きたいんだけど。」
俺は先ほどの騒動のこと、ティリアを追っていた男たちのこと、ティリアがなぜ日本に来たのか? それらを聞くことにした。
「私は異世界のラピス王国という国から来ました。」
「なぜ日本に来たのかというと、自由が欲しくて来たんです。」
「自由?」
「はい、私のパパとママ...お父様とお母様がラピス王国の国王と王妃なんですけど...最近ラピス王国の周辺諸国で王子や王女を誘拐する事件が複数件起きて...。」
「それで、お父様とお母様に外出を禁止されてしまったんです。」
「それで、私はお城の中で本を読んだり、編み物を編んだり、キッチンでクッキーを焼いたり。」
「でも、それらも飽きてしまって。お父様とお母様に外出をしたいとお願いしたのですが...許してくれなくて、それで喧嘩になってしまって。」
...まぁ分からなくもないな。お年頃の女の子はやりたいことが多いだろうし、外出を禁止されたら辛いだろうな。
でも、誘拐事件が起きているとなると、心配する親の気持ちも分かる。
自分の娘が誘拐される危険性があると知れば、当然の事だろう。
「それで魔術ネットワークで日本が安全な国だと知って、日本に行こうと決めたんです。」
「それで、異世界から日本にはどうやって来たの?」
「それは、異世界の扉を使いました。」
「異世界の扉?それはどういうものなの?」
「異世界の扉は限られた人たちだけに使うことを許されている冒険者用のワープ装置です。」
「つまり、異世界と俺が住んでいる世界を繋いでいる扉があるって事?」
「はい、と言っても扉の形をしているわけではありませんけどね。」
「扉の形をしていない?どういう意味?」
「異世界の扉は他の人にバレてしまわない様に景色に溶け込んでいたり、木などの植物などにに擬態していたりするんです。」
人にバレて悪用されたりすることを防ぐために隠してるって事か。
自転車に鍵をかけていなければ盗まれるかも知れない。だから盗まれないように鍵をかける。当たり前の事だよな。
大雑把に言うと悪用防止と盗難防止するためという事だよな。
「なるほどね。でもティリアは外出禁止されてるのに、なぜ異世界の扉が使えたんだ? 普通は外出禁止のティリアが使えないように管理されてるはずだろ?」
「はい、その通りです。しっかり見張りをつけて、私が使えないように厳重に管理されてました。」
普通に考えたら、そうだよな。そんな便利なワープ装置なんて、外出禁止している期間は絶対に使わせないはずだ。
「なので、その見張りの方に探し物があるので、一緒に探すのを手伝って下さいとお願いして...その間に目を盗んで...。」
「...許可を取らずに来ちゃったんだ。」
「はい...その...そうです。」
という事はあのティリアを追っていた鎧を着た男たちは...見張りをしていた兵士たちって事か。あまりにも無能な兵士たちだな。
「それで、ティリアは日本に来たのはいいけど、これからどうするつもりなの?」
「なにも...決まってません。とりあえず日本に行けばなんとかなるんじゃないかと思って...。」
「とりあえず泊まるところもないようだし、俺の家に来れば? 父さんと母さんと妹が居るけど、たぶん許可してくれると思うし。」
「涼祐のお家に伺ってもいいんですか?」
「良いよ、ティリアが嫌じゃなければだけど。」
「全然嫌じゃないです! どうしようかと思っていたのでとても助かります!」
そして、ティリアを連れて俺は家に向かうのであった。
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