第2話 お姫様はお腹が空いた。

 王女と名乗る女の子、ティリアは俺の前で、少しだけ身体を反らして、ドヤっとした顔をしている。それが可愛らしく思えた。


 するとティリアは「私は自己紹介をしましたよ?」っと首を傾げて、大きく碧い綺麗な瞳で、俺の事を不思議そうに見ている。


 あっ! 俺はまだ自分の名前すら相手に名乗っていない。自己紹介をまだしてなかった事に気がついた。


「ごめん、自己紹介をしなきゃいけないな。俺の名前は三上涼祐みかみりょうすけって言うんだ。よろしく。」


 と言うとティリアはニコッと笑って「よろしくお願いしますね。」と言った。


 ...よろしくお願いされてしまったが、いったい何を俺はよろしくお願いされたんだ?

 そんな事を考えていると"グゥー"っとお腹のなる音が聞こえた。

 ティリアの顔を見ると、さっきお姫様抱っこしたときに見せたような恥ずかしそうな表情で、赤面していた。


「お腹減ったの?」っと尋ねると恥ずかしそうに、コクっと頷いた。

「さっきまで、いっぱい走り回ってたもんね。そりゃあれだけ走ればお腹が空くよね。」


 そう言うとティリアは口を尖らせて


「イジワルなんですね、涼祐って。」と消えてしまいそうな小さな声で答えた。

「ゴメン」と僕は少し笑いながらティリアに言った。


「イジワルするつもりで言ったわけじゃないんだ。君の走りっぷりが、とても素晴らしかったからさ。」


「それはどうもありがとうございます。」と言うとティリアにそっぽを向かれてしまった。


「いや本当に本心で褒めてるんだよ。ドレス着て、ヒールを履いてあれだけ走れるんだから凄いよ。」

「むー本当ですか? からかってるようにしか思えませんでしたけど〜。」

「それは...少しだけ、からかった部分もあったかな。」

「やっぱりからかってたんじゃないですか〜も〜。」

 プンスカしてるティリアを見て、すごく微笑ましかった。


「お詫びに何か食事をご馳走するよ。」


 と言うとティリア表情を輝かせて、ニコニコ笑顔に変わった。

 表情の変わりやすい娘なんだろうな。


「とは言ってもこの時間帯だと、まだ店も空いてないかな。」

「えぇ〜それじゃあ、私のこの空腹はどうすればいいんですか?」


 また表情が変わった。本当に面白いくらいに素直な娘だ。


「ちょっとここから5分くらい歩くけど、ファミレスがあるから、そこだったら空いてると思うよ。」

「本当ですか! 行きましょう。もうおなかペコペコです!」


 そしてティリアを連れて俺はファミレスへ向かった。

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