第1話
ママがまだ優しかった時、僕にしてくれた話だよ。
僕やあかりが生まれるずっと前、摩耶山で景色を見ていた時に、前パパから結婚しようって言われて、ママは前パパと結婚したんだって。「だから、パパが亡くなってからは、あかりの誕生日には、こうやって、めぐるとあかりを連れて、この山に来るの。そして、めぐるもあかりもママも元気だよって、マーヤに、パパへのメッセージをお願いしに来るのよ」ママはそう言ってた。
でも、後パパが来たら、ママはだんだん怖いママになって、摩耶山にはもう行かないって。
それで、あかりの誕生日に、「今日はマーヤに会いに行かないの?」って聞いたら、ママが「そんなのいるわけないでしょ、二度とそんなこと言うんじゃないよ」って。
だけどあかりがマーヤを見たって言い張ったんだ。「去年の誕生日に、マーヤが木の陰から顏を半分出してこっちを見守っていたよ」って。それであかりは、「今年もきっと会えるよ。あかり、今日マーヤに会いに行きたい!」って言ったんだ。そしたらママが、「うるさい!」って怒鳴って、あかりのこと、何度も叩いたんだ。
あかりはいつも、どんなに叩かれても、黙ってじっとしてるんだ。ママは病気だから、今は優しいママじゃないんだけど、治ったらまた優しいママになるんだ。だから痛くてもがまんして待ってようって、あかりはずっとそう思ってたんだ。
だけど僕は、「こんな怖いママなんか、もういなくなればいい」って、その時思った。そうしたら、何日かして、本当にママは交通事故で死んじゃったんだ。
「お兄ちゃんがそんなこと思うからママが死んじゃったじゃない!」って、あかりが泣くんだ。でも本当は僕だって泣きたいんだ。僕だってママのこと、好きだったんだもん。
だからママに、「いなくなればいいなんて思ってごめんなさい」って、「戻ってきて欲しいけどやっぱり無理なの?」って、マーヤに、ママへのメッセージをお願いしに来たんだ。それでケーブルカ-に乗ってるの。
おばさん、僕ら、真剣にマーヤを探してるんだけど、ロープウェイの星の駅まで上がれば、見つけられますか。
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