第2話 最強と謳われる人間の存在

 セカルドのランキングは仮想現実に行ったときにコマンドメニューを開きランキングというコマンドをタップすると表示されるようになっている。

 表示されるランキングは〈世界ランキング〉〈国内ランキング〉〈フレンド内ランキング〉の三つだ。

 このランキング制度が始まって三か月のころはプレイヤーが入れ代わり立ち代わりで世界ランキングの首位争いをしていた。

 しかし、そんなときもつかの間。世界ランキングの首位はすぐに固定された。

 世の中は不思議なことが多い。首位の人物だけでなく二位以下のトップランカーといわれる存在、世界ランキングトップテンは不動の王者となっていた。

 この不審さには誰もが注目していた。

 現実世界のテレビニュースはもちろんのことネットニュースや新聞紙、仮想世界のニュースの一面までも飾ることは少なくない。

 ネットではたくさんの噂を立てていた。その中の一つにこの十人のプレイヤーは「チートを使っているのでは?」や「NPC説ある?」などの声も上がっていた。しかし、現実はそんなに簡単にいかない。

 暗闇では今後のセカルドについての会議が行われていた。

 暗い一つの部屋には九人の声と映像。その中央には誰も座っていない丸いテーブル。

 しかし、映像が流れている画面の一つはまだ暗いままだった。

「セレンはまだ来ないのか?」

 画面の下には大きくで【伍】と書かれていた。

 映像に映し出されている人物は道着を着ており腰には黒帯がまかれている。腕や胸の筋肉は格闘ゲームに出てくるようなキャラクターのようについていることがわかる。また顔の目には刀に切られたような傷跡がある。声は野太く低く見た目は貫禄がある。

「まぁ、セレンは忙しいのでしょう。彼には彼の事情がありますし」

 これには【拾】という数字が刻まれている女が応える。

 彼女は本を読みながら参加している。彼女は体全体を暗い色で包んでおり、眼鏡をかけている。眼鏡をかけていても容姿はきれいに整っていることはわかる。髪は黒色で頭の高い位置で結んでいる。結んだ髪は背中にまで伸びている。また、声は低く落ち着いている。

「だけどよ~、さすがに遅くないか? もう一時間は待ってるぞ~? 先始めよ~ぜ~?」

 彼の数字は【八】だ。彼は金髪にヘッドフォン、目の色は青。服は黒色がベースだが金色のラインやファーがついておりかなりキラキラと輝いている。

「黙って」

「お、おう――」

 【拾】の数字を刻まれた女が【捌】の数字の男に冷たい声と視線を送る。

「まぁまぁ、そろそろ会議来れるって!」

 妙な間ができ、空気が重くなるも集まっている十人の中のアイドル的存在【弐】の数字を持つ女がその場を和ませる。髪はピンク色で長さは肩につきギリギリといったところだ。服もひらひらのドレスだが身動きがとりやすくなる工夫もあった。また、顔だちも整っており肌は透き通っている。

 そして空気が和んだ時【壱】と書かれた上の画面が付きセレンが会議に参加することとなる。

「みんな、今日は遅れてごめん。いろいろ忙しくて」

 セレンはとてもさわやかな声で言った。彼は白色の長いコートを着ていてスッとした顔立ちだ。また、腰には刀を三本つけている。その刀の長さはそれぞれだ。髪は前髪が上がりおでこを出していることが特徴的である。

「セレンが忙しいことはみんな知っているから気にしないで!」

 遅れたセレンは冷静さをものすごく保っているが心の中は穏やかではない。

 しかし、【弐】の声かけもありセレンはホッとする。

「今日は今後のセカルドについて話していきたいんだけどいいかな?」

 セレンは今集まっているのはセカルド最強ギルドのメンバー十人である。

 この十人が世界ランキングトップテンを総なめもしているのである。そして、セレンはこのギルド『テルル』のリーダーである。

 セレンの問いかけにはみんな口々にわかったなど応えていった。

「では、さっそく議題に入りたい。内容はギルド『テルル』の解散だ!」

「ちょっと待てよっ!」

【捌】はセレンがなんの躊躇もなく解散を言い放ったことにすぐに反応した。

 彼だけでなくメンバー全員が驚嘆する。

「これには深い理由はない。ただ、ずっと一番上にいても面白くない。みんなもそうは思わないか?」

 長年頂点に立ち続けた男言葉にみんなは迷いを見せながらもうなずく。

「だから、俺たちは互いに競争しあい、もっといろいろな経験を積みたいと思っている。今このギルドメンバーは個人のランキングも一位から十位までを独占している。つまり、このギルドに集まっているよりもバラバラになったほうがライバルが増え、楽しい、燃える生活が待っているということなんだ。次会った時には誰が一番強く成長しているか? そのほうが面白いだろ?」

 セレンは画面越しでもメンバーにさわやかに説明をして見せた。

「わかった。俺はもう行く。セレン、次会うときはお前に勝つ」

 そういって初めにその場から去ったのは【伍】の男だった。

 彼は最後に男のかっこいい大きな背中を見せてその場を去った。

 セレンはそんな【伍】には何も言わなかった。漢たるものは無言で通じ合えるものがあったからだ。

「なら、私も行くよ。セレンありがとね!」

 【拾】も開ていた本を閉じてそのギルドを去っていった。

 すると、ほかのメンバーもセレンに一言残してっていく。そうして残ったメンバーは残り四人となった。

「セレン! 俺は強くなってやるからな~!」

 ストロンは勢いよく言った。

「ばいばーい!」

 リリは最後に大きく手を振った。

 最期に残ったのはセレンとセノンだった。

 セノンはセレンとともにテルルのダブルSといわれており【肆】という数字が入っている。セレンが刀を差しているのに対照的で腰に二本のハンドガンがある。また、背にはライフルも構えている。顔は大きなフードをかぶっており全く見えていない。しかし、左目が赤色に光ってる。服装はとても先頭に向いている服とは言えない。ダボっとした感じである。

「セレンは今後どうするんだ?」

 セノンは低い声でセレンに聞く。

「さーな。まぁ、俺はまたてっぺんに戻ってくるさ」

「そうか、なら、それを阻止してやるよ。じゃーな」

 そのまま、セノンは腰についていた銃で画面に映し出すためのカメラを撃った――

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る