第9話☆三者三様

「状況はどうか」


私は部下にそう尋ねる。


「石垣の組み上げ 桝形の設置 櫓の設置 各城壁抜かり無く」


現在移民アマテラス防衛のため熊本城をモデルに、かなり実戦的で大規模な城郭を建設している。


幾ら『神』や『妖怪』の力添えがあれども熊本城の『城郭』の再現は難しい。


「人間の力とは凄まじい物だな」


伊織がよく人間は恐いと言う訳だ…空を飛ばねばあの石垣は超えられん…勿論 妖怪の力ならば可能ではあるが、想定している『異世界人間』なら多分…不可能であろう。


日本での前世の自分の記憶を思い返してみる。


自分は日本生まれでは無い…そもそも人ですらない 元は船で有り長く…そして多くの戦友と共に戦った物である。


守る戦い…今度は守れるのだろうか、付喪神の一種である私が鬼になったのは『悔い』が有ったからだ。


その悔いは仲間の悔いだったのかもしれないが…けっして血を流したいのでは無い『戦って守り抜きたい』のだ。


「仲間の為に 仲間と共に」


今度は守れるのだろうか…其の為に私は『鬼』になったのだろう…先代は遊女と呼ばれる者であったが、彼女は『復讐の鬼』であった。


私は何の鬼であろうか…『金剛』非常に堅い物、強固、壊れないこと、金剛力士は仏法や仏教徒を守る守護神だ。


しかし私は壊し殺す事で守るのだから『鬼』と言うのは間違いが無い、酒吞童子は鬼の仲間を守る事に長けていた者…私に宿る『御霊』がそう教えてくれる。


敵からは残虐なる鬼、味方からは厳親…私が親と言える者かどうかは分からないが…味方の盾となり武器となり敵を打ち払う事はできるだろう…


「皆を交代させ 休ませろ」


「あい!頭ぁ!」


鬼やあやかしの仲間が交代で『休憩』を取りに櫓から出ていく、私も煙管で一服するために窓際に寄る。


『休息』は伊織が言い出した事である、人間は休む生き物であるため、その予行演習だとか。


煙管を出し火をつけ煙を吹かしながらふと思う『先代』の癖で『煙管』や『遊女』の仕草や行動を取る自分…人の記憶も『御霊』から受け継いでいる私は…既に『あやかし』なのだ…その事が無性に可笑しく感じ笑ってしまった。


遠く異世界まで来た自分と仲間たち、私が全て守る…伊織は全て任せてくれる。


「ならば 魅せねばなるまい 女の意地を」


くっくっく と笑う私はふと伊織の居る社殿を見る、あの子は休まない せいぜい鵺っ子と風呂に入る位か…この1年以上 突っ走る彼女は随分と働く…風呂にでも誘ってみるか?


先代の九尾は凶悪な妖怪であったが、次代の伊織は随分と真面目で頼れる女だ。


本当に九尾か?と思う程に…そう言えば最初に会った時は後鬼(青鬼)を殴り飛ばそうとしていたか?


その後は全くそのような狂暴なそぶりは見せてはいないが、もしかしたら我慢でもしているのか?やはり…ここは風呂?なのだろうか?先代の記憶にも『裸の付き合い』は重要らしい…九尾は代々『人』である者がなる妖怪、気を付けてやらねばならぬな…


私はそう決めて彼女の元に向かって歩を進めた。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



御嬢様と随分と長い(4日)会議を終えて、自分のテリトリーの『洋館』に戻る。


和洋折衷の様式の洋館…『江戸時代』を再現と仰った御嬢様はこの屋敷の建築を許可して下さった。


其ればかりか長崎の出島の様にと周りも好き(大正風)にして好いと仰って下さった。


私は大天狗の『御霊』を宿している。


ソレは強大で凶悪な呪詛の塊であったようが『鎮魂』『慰霊』と長らく祀られた事で普通?に大妖怪として安定している。


そもそも『怨霊』として『後世』の人間が面白おかしく語り継いだのも原因の一つだろう。


日本の神社には恨まれたら恐ろしいと言う恐怖心で『時の権力者』などにより神社などが建てられているのだから(勿論全てではない)


全ては生きている(生きていた)人間の為の儀式である。


掻く言う私も前世は人間である。


とある華族に仕えた大正時代を生きた人間である。


大正モダンと呼ばれる華やかな時代 人類史上始まって以来の大戦 そして私の全てを奪った大地震…煌びやかな物も永遠に続くと思われたモノさえ何時か唐突に破壊されて終わる。


「あやかしの時代も終わると思っていましたが…」


時代の波と言う物は強烈である しかしそれ以上に自然の営みは人類をあざ笑う程の力を持つ…


天変地異を呪った私が天変地異を操る魔物と化したのは『笑えない冗談』だと思う…


しかしこれでもう『私の御嬢様』を奪う力はかなり無くなったのでは?それに『今度の御嬢様』は鉄を通り超してダイヤモンドの様に堅く丈夫で美しい!そして寛容でもある。


「私はこれ以上無い!最高の主を手に入れた!!」


沸々と湧いてきた感情が爆発的に吹き上がる!何時までも!何時までも!この主従関係は続く!いや続かせる!全てを滅ぼしてでも!!


やはり私の中の『御霊』はやはり荒ぶる魂なのかもしれない。


ふっふっふっ…


洋館の中でその男の笑い声は…静かだが とても強く長く 続くのであった。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



ミサザキ先生との会議は3日…?4日程続いた。


「修行の成果で眠くない!疲れない!」


何とも強靭な九尾のパワー 石に封じられてもアグレッシブルに呪いを撒き散らしたパワーは本当に無尽蔵(爆笑)


とは言え 偶には『食事』『睡眠』をとってみる?とも思う。


日本から色々な食材を持ち込んでいる為、日本食も洋食も調理可能である。


とは言え 米・もち米・大豆・小麦・蕎麦・大根・南京・薩摩芋と和食ベースを考えて農業をしている。


後 楮(こうぞ) い草 竹各種 綿花 など材料系も少ないが栽培し始めている。


醤油・味噌・日本酒も順次製造し始めてはいる。


因みに『種』は建設土木関連・農耕関連・工業関連・鉱業関連と伝統工芸関連など幅広く妖力ポイントを割り振って『あやかし』を増やしている。


日本刀 当世具足の作成など日本の伝統工芸復活にも力を注いでいる。


しかし気を付けて『あやかし』を増やさないと、『人間』が居なければ存在がまた『種』に戻ってしまう『あやかし』も居るのだ。


連れて来た『あやかし』150程から現在は700程に増えている選考は3+1人で決めているのだがどんな『あやかし』かはその都度聞いてはいるが…全員には会えていない 『種』にポイント振って『地面に植える』そうすると生えて来るのだとか、この世界の『気』と馴染ませるために大地の『気』がいるらしい 本当に種なのだなあと思うのであった。


地方の マイナーな とても専門的な マニアックな『あやかし』その深さ広さは一朝一夕に…語れぬ広さが有るのである。


何度か失敗を繰り返し『なまはげ』とか…子供を脅かさないと(躾ないと)1年持たないとか居る…中の人の高齢化が大変らしい現実と被る。


出来た農作物などは『妖怪の蔵』に入れて置けば無尽蔵に保管できる。


チート妖怪はとんでもなく便利である!!彼らを異世界でも召喚出来れば凄い力になると思う。(隠れた実力者が何と多いのか妖怪道は深い…)


それと…『ぬらりひょん』をポイント復活させたが…偉そうなだけで…普通の爺さんだった。


たまに『珍しいお土産』を持って来るらしいが…俺の所には寄り付きもしない…強力な結界で神社周辺(転移門)を守っている為か?と思いたい。


そう言えば 神社と平安屋敷(俺の自宅)を最近出ていない?見回りに出るべきだと思った今日でした。


見回りに出て行こうとしたら…金剛に拉致られて『露天風呂』で隅々まで洗われた。


金剛の大砲2門は流石!超弩級の大艦巨乳主義であった(喜)


鵺ちゃんと金剛と俺で その後よく混浴する事になる。


金剛って面倒見がいお姉さまだったのね(嬉しい悲鳴)


ミサザキ先生も最近 紅茶タイムや三食給仕と奉仕がスゴクなって来た。


あ!?美人メイドが増えている!?何処から増殖するの?嬉しいけれどね。


異世界要素はまだ無い俺の近況報告でした。




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