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「お待たせいたしました」
「え? 私頼んでいませんけど」
「お、俺からだよ」
「え?」
「ジャック・ローズでございます」
そう言って差し出したのは赤いバラ色のカクテルだ。もちろんその中には良く洗ったバラも入れてある。
「わぁ~すごーい!」
喜んでいる彼女に一安心しつつ男性客に目配せすると、ホッとしたような笑顔を見せた。
良かった。喜んでもらえたみたいだ。
「おいしい。バラ色なのにリンゴの味がするんだ」
「ミ、ミキちゃん」
カクテルに夢中になっていた彼女を彼が緊張した面持ちで呼ぶ。その顔は赤くて、何度も瞬きを繰り返していた。彼女はテーブルにグラスを置いてじっと彼を見た。
今日のカクテルが正解だったかは分からないし、リキュールを切らしていたのは失敗だったが、彼女と彼が笑顔で帰ってくれたから妥協点か。ミスはミスだから満点にはならないけど。
それでもこうやって誰かの為にうまい酒を作れて良かったなぁ、と自分を褒めてやるのもバーテンの仕事の一つだ。
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