1-3 

 ――これが、科学の力……。


 俺は風呂場で感動していた。

 何ひとつ魔法を使うことなく、湯を沸かし、そもそもこの水道って何だ? どんな原理で水が流れてくるのだ?

 あと、シャワー。

 この石鹸もいい香りだし、石鹸のほかに髪を洗うためのシャンプーという液体もある。

 燕の記憶によれば、顔だけを洗うための石鹸とかほかにも色々あるらしい。


 ――シャワーネタは微妙に時流に遅れた時事ネタじゃない、元々考えていたことなんだ。

 信じてくれ。


 台所にも水道。

 電気で動く小型の氷室もある!

 照明も蝋燭や魔法ではなく電気。

 あの玻璃ガラスでできているような、絵が動き音が出る板は何なのだ!?



 そしてお父さんが帰ってきた。

 燕の「お帰りー!」という声に合わせて魔法で記憶を上書きする。


「おかえりなさい。今日からお世話になります」


「やあ、しばらく見ないうちにずいぶん大きくなったなぁ。従姉ねえさんは元気かい?」


「はい、相変わらずギャーギャーうるさいです」


「昔っから強引な人だったからなぁ……。あ、弥彦くんは無理やり預けられたわけじゃないから、自分の家だと思ってくつろいでくれよ」


 どうやら今回も魔法は上手くいったようだ。



 そして夕食後……。

 燕がモジモジしながら訊いてきた。


「ねぇ、弥彦くんのさっきまで着てたもの、どうしたの? 洗濯カゴにないんだけど……」


 おっと! 外観錬成しただけだったから、風呂にはいる時に消去しちまってたぜ。


「いや、自分の服だしさっき自分で洗濯したよ」


 そう言って燕の記憶を上書きする。


「そうなの。でも、時間も水ももったいないし、今度からお父さんのと一緒に洗濯するから遠慮しないでね」


 ……うん、済まない。

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