――彼は疲れきっていた。
世界を裏から支配し、既に侵略を終えて何もかもを踏みしだく、
地球の実効支配者たる「悪の組織」、その最強の改造人間である彼が、
何もかもを失おうとしていた。
戦いはまだ終わっていないのだ……
ようやく心通わせることが出来た部下の女性改造人間を目の前で失い、
それを成した宿敵は、いわば自らの鏡像に等しい存在であり、
正反対の在り方を目指した「裏切りの正義のヒーロー」という、
誰かが仕組んだような “茶番劇” だけが世界支配の決着として待っていた。
そして、「世界」は狂おしく雄叫びを上げ、彼を混沌の渦巻く “異世界” へと
はじき出す!
『悪の組織の改造人間』、異世界にいきなり単身赴任――!?
……そこでの物語は、孤立無援、主人公を翻弄しまくります。
特撮SFのような、ファンタジーのような、現地でのヒロイン?たちとも絡み合い
それでいて全く油断のならない想定外の出来事が、これでもかと待っています。
元の世界には存在していなかった亜人、獣人が常に差別に苦しみ、
さらに虐殺戦争が迫っている状況に戸惑いつつ、ポンコツに等しい躯体に鞭打って、
それでも「自分」の “選択” を強いられる主人公がなんとか見渡す異世界には、
なぜか彼を常に凌駕していたあの「正義のヒーロー」の影までも……
旧世界との関わりを思わせる謎も数々横たわり、
決して放置はしてくれません。
――時間と空間を圧縮する緊迫のバトル(加速戦闘)と、
あくまで敵対したものを許さず、弱者を貶めることでようやく維持している
残酷な種族社会の矛盾に、心を失ったはずの『悪の改造〈人間〉』の憤りが、
ついに爆発します!
さあ、約束の『大魔王』に進化せよ……ッ!!
(*´∀`*)
物語を追いかけてみてください。
きっと、そこには新しい息吹と、状況に流されるだけではない “主人公” の、
なんだかこれで良いんだか悪いんだか判らないけど、“決意した!” という
『許せないもの、守りたいものは、既に心にあるから』という「男」の叫びが
貴方を揺るがせると思います。
……ちょっと、甘いラブラブとかハーレム要素もありますね(*´∀`*)♪
ちょっとじゃないかw。
(2018、7月. なにより作者様のご快復を願いつつ……)
設定、文章力、キャラクター、ストーリー、その全てにおいて非常に完成度の高いエンターテイメント作品!
時空破砕爆弾の爆発に巻き込まれ、異世界転移することになったのは、悪の組織 “ジャッジ” の中でも最強の改造人間と言われた万物王。
とにかく、この設定が物語全編に渡って非常に効いている。
銃弾も止まって見えるような音速の二十倍の世界で、散弾を “配置” しながら繰り広げられる超加速戦闘の描写はまさに芸術的。
止まって見える散弾であっても超加速中に接触すれば大損傷は免れない。
つまり、「超加速戦闘とは移動可能な空間の奪い合」という筆者の戦闘の概念に、まずシビれた。
転移直前、仮面アベンジャーとの戦いに敗れ、ジャッジの洗脳が解けた万物王が異世界で見たものは……数百年に及ぶ大魔王不在のせいで秩序を失い、強者が弱者を虐げるだけの混乱した世界だった。
そこで、獣人族の美少女フェンミィから、大魔王として世界を統べることを求められる。
そして、強大な力を持った万物王が、大魔王となって異世界でチート無双!
……するような単純な話ではない。
洗脳が解けた万物王の葛藤、爆弾の衝撃で失われた多くの機能、異世界に蔓延するカキストクラシー、国家間・種族間の確執と争い、暗躍する奴隷商人ギルド、見え隠れするアベンジャーの存在、元の世界と異世界の謎の符合……。
それら全てが複層的に絡み合うことで形成されている重厚なテーマを、軽妙な文体で描いていく手腕は本当にお見事。
さらに特筆すべきは非常に魅力的なヒロイン達。
理想の世界を目指すために、主人公と共に手を血で染めようと決意する獣人族の美少女フェンミィ。
強大な魔力で、主人公を攻守でサポートする天才幼女サティ。
主人公と志を同じくする、聡明で鉄の意志を持った、同盟国の王女アムリータ。
彼女たちは、彼女たちなりの覚悟に従い、傷つきながらも主人公を支えていく。
ただのモテモテハーレム作品などではない。
もっと深い信念の部分で結びついた主人公とヒロイン達の姿に、涙を誘われたのも二度三度ではない。
長文となってしまったが、これでもまだまだ語り足りない。
ラノベの形態を踏襲しながらも、ただのラノベでは味わえない重厚なファンタジーワールドを、是非あなたも体験して欲しい。