&13 判定結果は〇〇となる
結局は会話をしていてもしょうがないとニナリンゼが提案し、
先頭を歩くリーネは依然と不満そうな顔をする。
なぜここまで不満がるのかハルートにはわからなかったが、今はそれを優しく笑っておく。
「もっとお話をしたいです」
「あはは……」
「俺たちもそうしたいけどな」
2人はどうしようかと思いつつも、ネクテージについての話に逸らそうと始める。
「あのネクテージってどうやって動かしているんだ?」
「そうですね……簡単に説明すると、移転魔統の【ファレー】と物に対しての修正
「ゲート1つ開くのも大変そうだな」
「ゲート、ですか?」
彼女は聞きなれない言葉に首を傾げる。
「僕たちが通ってきたあれのことダよ」
「ゲート……名前を付けていなかったので、それもいいですね」
こうして、異世界と行き来できることになっている入り口の名前がゲートに決めらる。こんな決め方で大丈夫なのかとハルートが聞いてみると、「呼びやすそうだったので」の一言で終わる。
名前が決まったとともに部屋に到着する。中は相変わらず大きな機器が半分を占領する状態で、住むのに不向きであることは《めいはく》明白だ。
「改めてみると立派だな」
「まさか、ここまで造っておられたとは……」
一番後ろにいたニナリンゼが頭を抱える。王女の側役とは大変そうであるとハルートは苦笑いで見守る。
そんな彼女とは
「しかし、これを動かす魔統は随分と必要になるはずですが、それについてはどうされるのですか?」
「確かに、ネクテージを動かすにはそれなりの魔統が必要ですが、心配いりません! 貯め込んだ天然魔統を使用しています」
「貯め込んだとは、いくらほど?」
「大体、王国魔統勤め2000人程ですね」
「2000人!!!」
ニナリンゼは
「どこでそんな量を仕入れたのですか!?」
「あれ? あなたは知らなかったのですか。私は小さいころから趣味として集めていたんですよ。お父様からいただいた天然魔統
リーネが言うゲットラーは現在、この部屋に無いらしく
「お話のところすみませんが、天然魔統ってリーネたちが使っているのとは違うの?」
ハルートの質問に王国魔統力代表のニナリンゼが答える。
「天然魔統とはこの世界のどこにでも
「ということは、動物とかも?」
「全部ではありませんが、いくらかは火の玉を吐いたり、強力な風を巻き起こしたりしますね」
「す、すごいですね」
さすがは、巧とハルートが言うところの魔法が溢れる世界。これまで常識が通じないことがあるといういい証明である。
「あと俺からも質問なんだが、2000人分ってそんなにすごいのか? そのくらいの人なら、国として集めることが出来るんじゃ?」
「この国にいる王国魔統力勤めは私を含めて2人です。勤めるにはそれなりの魔統を体内に保持しているというのが条件のようなもので、世界全体でもそれほどいないかと」
「……それで2000人分となれば確かに」
「驚くね」
リーネは頑張ったと腰に当てて達成感に浸っている。相変わらず、すごい王女であると2人は思った。
「巧様、ハルート様」
不意に後ろから男の声が聞こえて巧とハルートが驚く。今まで後ろにはニナリンゼしかいなかったので、リーネから体を反転させる。そこには、手に箱のようなものを2つ持つトルヴァが立っていた。
「お、驚いた……」
「すみません。もうそろそろお帰りになりそうだったので、早めにお渡ししようと」
彼はそう言うと、1つずつその箱を巧とハルートに渡す。
「これは?」
「この度、陛下をお助けいただいたお礼として、先王陛下からの贈り物となります」
トルヴァに確認をとってから箱を開いてみると、そこにはワインのようなものとポイントカードほどの大きさの金色の板が入っていた。
「瓶の方はこの国で製造している高級酒となります。そして、金でできた証明書は王国とつながりがある者の証明に使用できるものとなっています。今後、来られるときにはそれがあると便利かと」
「「き、金!!!」」
「あっ、あのー」
リーネの小さな声は2人の驚きに消える。
これまでの経験上、単体として金を持ったことがなかった2人には衝撃的なものであったのだ。
「こンなものを貰って、大丈夫なンですか?」
「それほど重要なことだったということです。私からも、改めてありがとうございました」
ニナリンゼがそう言ってお
巧とハルートにとって、お酒の方は未成年のために飲めないことから驚くようなものではなかったが、金はどうしようもなく、貰ってくれと言われても
そんな時、巧はあることに着目する。
「俺たち、今後もこっちに着ていいんですか?」
その質問に、トルヴァが苦笑いをして答える。
「本来ならありえないでしょうが、今後、陛下がまた行かれてしまうかもしれません。そこで、御二方に陛下へ
「ちょっと待って―――」
「つまり、僕たちがこちらに来ることで、リーネがあちらに行かなくても済むようにということですね」
「
もう一度話に入り込もうと声を出すも今話している中心はリーネからは遠く、またも失敗する。
トルヴァの言うことをもっとかみ
「わかりました。また遊びにします。リーネも、もう勝手に来ちゃ―――」
「だから待ってくださいって!!!」
ハルートがリーネに話し掛けようと振り向こうとすると、今度こそ聞こえるように彼女は大きな声を飛ばす。
「皆さん。あちらと行き来するとか先程から言っていますが、何を言っているんですか!」
彼女の言葉に全員がはてというような顔をする。
「陛下。そのネクテージは行き来するために造られたのでは?」
「私の傍にいて知らなかったのですか、トルヴァ!」
共謀者であった彼にも知らなかったこと。彼が知らないということは、全員が知らないということ。
その状況を知ったリーネはため息をついた。
「気づきもしないのですか。私がどのようにしてネクテージを動かしているのか話しましたよね。それを思い出して、考えてみてください」
どのように動かしているか。これまでの話をハルートと巧も振り返っていく。
そうすると、1つのことをハルートが思い出す。
「そういえば、天然魔統を集めて使っているみたいに言っていたね」
「そうです!」
「しかし、陛下。それのどこに問題が?」
ニナリンゼがそのように言っていると、リーネが頭を抱える。彼女は「もうちょっとこちらの知識を理解している人に来てほしかった」と小さく口にする。
ハルートはそこまでで気づいたが、他はまだわからないようであった。
「1回使用するのに使う魔統量が激しいとか?」
「そうなのです。それを待っていました!」
彼女は正解というようにハルートを指す。同じように元の世界では機器いじりが好きだった彼としては考えられたことだった事から、苦笑いをしてしまう。
「これは、起動させること自体、蓄積していた魔統の約10%を消費する計算です。そして、魔統を有する者なら5%の消費量で通過できますが、無いと20%も使ってしまうんです!」
「そんなにですか!? ということは、陛下が行き来するだけで約400人分の魔統が必要。……随分、効率が悪いですね」
「まだ試作段階です。今後、改良を進めればもっと良くなる予定です!!!」
リーネはそのように言い切る。しかし、それはあくまで予定であって、実現するという保証はない。
ここで、巧が手を上げる。
「しかしよ。そうなると、俺たちって帰ることができるのか?」
「えっ?」
今までの勢いが一瞬にして消え、今度はリーネが疑問を浮かべる。
ハルートやニナリンゼ、トルヴァは各々気づいたらしく、「確かに」や「あぁ」と言う。
「だってよ、リーネがあっちと行き来するだけで30%何だろ? でも、今回は俺たちがリーネを運び込むためにゲートを通ってきたんだから……」
「僕たちは魔統を持っているかわからないけど、持っていなかったら2人で40%を使うことになるね」
今回使用した量を計算すると、合計で70%の蓄積した魔統が必要となる。もしそのようになれば、巧とハルートが帰るのに必要となる蓄積量は50%。
そこまで聞いたリーネの頬を汗が伝う。
まさか……。
巧とハルートは嫌な予感がした。
彼女は勢いよく振り向き、ネクテージの左横のハッチを開ける。そして、そのすぐ近くのボタンを押すことで筒状のものを取り出す。見る限り、蓄積していた魔統を入れる容器であることは想像出来る。
リーネは筒をその場に立てかけることで、側面に取り付けていた残存量を見ることができるメータをのぞき込む。
そして、ぎこちなく首を回す。
「非常に申し訳ない状況となってしまいました」
彼女の言葉が何を表すのか彼らにはわからなく、首をかしげる。
実際には少し想像できていたことであったが、自然と行動をとってしまう。
「あなた方が、えっとですね……帰れなくなってしまいました」
「「……はい?」」
「残存量が30%しか残っていません」
部屋の中が一瞬
リーネは立ち上がると、彼らに頭を下げた。
「申し訳ありません!」
巧とハルートはまだしっかり理解できずにいた。
「いや、ちょっと待って。天然魔統が無いなら、貯めればいいンじゃ」
「……私がこれを貯めるのに
ハルートの頭の中に焦りが一気に押し寄せてきた。これから彼女が言おうとしていたことを理解できたからだ。
そして、彼女は少し言い
「あなた方が帰るのにあと20%足りなく、貯めるのに―――」
「1年以上掛かるね……」
「いや。魔統を人で貯めればさ!」
巧が思いついたかのように言うが、それをハルートが否定する。
「リーネが言ったよね。貯め込んだのが約2000人分。つまり400人必要となるけど、この国には2人しかいないそうだし」
「彼女らが持っている魔統を全部注ぎ込んでの計算となるので、完全に回復するのに2日掛かるとしても……」
この時、巧とハルートはすぐに帰ることができなくなった判定を押し付けられたのだ。
今度こそ焦りが表まで出てくる。
「僕たちってこれからどうすれば?」
「申し訳ありませんが、お一人だけ帰られることはできますので、どちらかだけ先に帰られるか。それとも御二方で、魔統が溜まるまで暮らしていただくことになりますね」
巧とハルートは視線を合わせる。
彼らの関係としてどちらかだけという選択はありえなかった。よって、先程の提案では後者の選択となる。
「「まじですか……」」
「本当に、申し訳ありません!!!」
こうして、巧とハルートの地形の形が似た異世界、後に【1
「お世話はしっかりさせていただきますので!」
「「……はぁ」」
彼女を責めてもしょうがない。
彼らには受け入れがいことだが、もうどうすることもできないことは理解するしかなさそうだった。
[まさか、テスト明けの休日で少女に出会って]
[異世界送りかよ]
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