&9 発見から秘密裏に
彼女たちの自己紹介が一通り終わる。そして、してもらったということは自分たちもしなければならない。
その後はニナリンゼの話によると、王女は
「それにつきましては、私、トルヴァが説明させていただきます」
彼はそういうと小さく呟き、力を使ってあるものを生成していく。それは、部屋にいる全員が観やすい大きさの画面となり、畳一枚分はあった。そして、そこに映し出されたものはすぐにわかる。
「ありゃ? 日本の地図じゃないか」
「二ホン、ですか? それはあなた方が住んでいる国の名前で?」
「ああ。今映っているのが日本の地図だ」
巧がそう言うとニナリンゼは〔はて?〕というかのような顔をし、説明を求めるようにトルヴァに視線を送る。
「ニナリンゼ様が驚かれるのは無理もありません。これを説明するには少し前の話をしなければなりません」
トルヴァは先ほど出した地図の横にもう一枚の画像を出す。次にそこへ映し出されたのは巧とハルートが見覚えのある機械だった。
「これは、御二方が最初に来られた時の部屋に置いてある機械です。『移転魔統』と『物に対しての修正魔統』を増強して操作するこれを陛下は【ネクテージ】と仰られています」
「それについては報告が入っています。陛下は転移系の機械を造ろうとなされているということを。しかし、世界を
なぜ黙っていたかというように少しきつめの口調でトルヴァは問いただされる。それに対して彼は、深いお辞儀とともに説明する。
「大変申し訳ありませんでした。しかし、陛下に口止めをされていましたので。もし言ってしまえば、絶対に研究ができなくなってしまうと」
「まぁ、これだけのことと分かれば、王国魔統研究員が引き継いで行ってしまうことは明確ですが」
「それを
「そして」と言って、機械【ネクテージ】の映る画面を次の画像に変える。そこには石造りの床と壁を背にリンゴ1個分ほどの緑色の穴があった。
「これは一昨年前に先程の機械が置かれている部屋で記録したものです。陛下がこの
「……待ってください。あれは陛下がつくられたものでは?」
「ネクテージ自体は陛下が造られました。しかし、穴自体は元々存在しており、消えることはありません」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!? 俺たちが部屋を出ていこうとした時、あの穴は小さくなっていって消えたぞ?」
「それは、他の方に穴の存在を知られるのはいけないということで、穴の大きさが元通りに戻る際、
穴の存在は王女とトルヴァ以外知る者がいなかったため、全員が驚くばかりであった。
「これを発見されたことで、多くの方法で何なのか、どこに繋がっているかを調べながら機械を造り始められました。その際、私はお手伝いとしてお
こうして始まった調査兼機械造りは今日に至る約1年という年月を費やし完了させたとのことであった。そして、繋がる先についての調査も王女たちが住んでいる世界とは違うということまで判っていたそうだった。
「ネクテージが完成したのはつい5日ほど前のことです。その後は使いの魔統
「そうですか。大体のことは理解しました。……しかし、このようなことがあるのでしょうか?」
「どういうことなンですか?」
ニナリンゼはそう言って、トルヴァと話すために向けていた視線をハルートに移す。
「あそこに映るのはあなた方が住んでおられた世界だということは分かったのですが、私たちの……ノリアント王国を含めた、この大陸と同じ形をしているのです」
「「……はい?」」
どういうことだと巧とハルートの声は重なる。ニナリンゼはトルヴァにこの世界の地図を出すように言う。そうして、緑色の穴が映る画像と変わるように映し出された。
「……これが、この世界の地図ですか」
「まったく同じじゃねえか!?」
「私としても、こんなことがあり得るのかと思いました。ただ、これが結果なのですよね?」
「はい。私たちも最初は驚きました。これを見られた陛下は、最後の仕上げとのことで突然出発されてしまったのです」
「それが、僕たちと出会うきっかけになったンですね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます