鑑定技師の歩む道
甘川 十
第1話
この物語は
そう、この後語られるのは異世界で北野学が彼女と超えていく物語だ。
それでは、始まり始まり。
あくる日の金曜日の放課後。正しくは北野学がいろいろな苦労を乗り越えてやっと来た北野学の高校の卒業式の日だった。
苦労の原因はほぼあるクラスメイトによるものだったが、その試練をくぐり抜けてやっと平和な生活が送れると安堵した放課後。
(やっと平和に日常を遅れるなあ・・・長かった、本当に)
今までのことを思い出して、少し泣きそうになっている学は自分が最後に使っていた机を見ていた。
(これでやっと自分が作りたいものが作れる・・・のだが・・・)
大学の教授には
「このままうちの研究室に来ないか」
といわれるほどに。
ゆえに最近は出席日数に気をつけながら学校には来ていたがほとんどの時間は休んでいた。
だが、さすがに両親から卒業式くらいは出ておきなさいと言われ、仕方なく卒業証書をもらいに来たのであった。
「・・・それが失敗だったなあ」
そう。それならなぜ学は卒業式の終わった後の教室にいるのか。
その理由が、
「き、北野君!!」
「・・・どうも、白百合さん」
この
腰まで届く黒髪ですっと通る目鼻立ち。小ぶりで薄い桜色の唇。白く透き通った肌。美人というしかないほどの容姿である。
そして、常に人当たりがよく、その笑顔は周りの心を癒すなんて言われているくらいである。
ゆえにこの学校の『白雪姫』と称されるほどである。
卒業式後はこの美少女の卒業に後輩や教師陣から卒業しないでくれと言われるほどである。阿鼻叫喚、悲しみに涙した生徒も多いくらいだそうだ。
(その性格のせいなのか俺はよく白百合さんに絡まれるんだよなあ)
この学校生活での学の悩みは白百合姫花によるものだったのだ。
朝と帰りは必ず挨拶をされ、周りの男から疎まれ。
お昼に誘われれば、箸やフォークが飛んでくる。
それほどまでに男たちはこの『白雪姫』を好いているものが多いのだ。
そんな白百合姫花がこんなに慌てて教室に入ってきているのか。
「ご、ごめんなさい!お待たせしてしまい!!」
「あ、いえいえ。そんなに待っていないですよ」
「敬語になるほど怒っていらっしゃる?!」
「・・・そういうわけじゃないんだが」
「え、あ、にゃらよかった・・・」
先ほどまでの美少女っぷりはどこへやら。
学はワタワタと百面相する白百合姫花に少し苦笑いである。
「で、こんなところに呼び出してどうしたんだ?」
なんというかその反応がいたたまれないのと、ある理由で早く本題に入ってほしい学はツッコミはほどほどにしておこうと思い、今のような発言に。
「あ、えとね・・・?その・・・」
もじもじと指をいじりながら、学の方をちらちらと向いては背ける白百合姫花。
あきらかにその動きは恋する乙女なのだ。
この動きを白百合姫花の親衛隊、略して白雪姫親衛隊が見たら、何人かは病院に送られることだろう。
(うーん・・・何かやってしまったかな。確かにクラスメイトとしてはいろいろ迷惑をかけてしまったが・・・)
だが、正直一刻も早くこの状況から抜け出したい学はそんなことを考える余裕などなく。
「・・・」
「・・・」
少しのような長いような沈黙が流れる。
「あ、あのね!」
そして、意を決したのか姫花の顔が学の方に向いた。
「が、北野君は卒業後は東京の大学なんだよね?」
「ん、ああ。○○大だよ」
「そ、ソウナンダ―シラナカッタ―」
「・・・なんか棒読みじゃね?」
「そ、そんなことないよ!!で、本題!!!」
「お、おう!」
なんかはぐらかされたような気がしたが、勢いに負けてしまった学。
「私は△△大に進学するの」
「え」
「・・・何?私がそこに行くの意外?」
「・・・まあ。白百合さんならもっといいところもあっただろう?」
「そうだよ。何でだと思う」
「!!!」
そう言ってじっと見つめられたから学は気づく。
熱っぽくこちらを見ている姫花に。
余裕がない学でもさすがは『白雪姫』といわれるだけのことはあるなと思ってしまったくらいであった。
「なんでかわかる?」
「い、いや、わかんないです」
「・・・鈍感」
「え?」
少し膨れた様子の姫花。こんな顔もできるんだと思う反面焦りもある学。
そして、うるんだ瞳で姫花はついに
「北野君!!!私はね!!!!君のことがす」
「待てええええええええええええええええええええええい!!!!!」
・・・想いを告げることはできなかった。
「「え?」」
「北野学!!君はこんなところに姫花を呼び出していったい何をするつもりだ!!!」
「ま、正義君?!」
そう学に向かって人差し指を向け、高らかに叫んだのは、見るもののほぼ9割がイケメンというだろう、美少年だった。
名は
名はその性格に影響するといわんばかりのくそ真面目で正義感の塊のような男である。そして、よくいる成績優秀運動神経抜群の呼ばれているモテるイケメンだ。
まあ、男の話は軽く済ませておこう。
そして、追記しておくとこの男は姫花の幼馴染である。ゆえにしょっちゅう学にかまっている姫花を見るたびに何かと理由をつけて邪魔をしてくるのである(本人は自覚がないらしくそれがなおのこと達が悪い)。
「君はまた姫花の時間を無駄にする行為をよくもできるな!!!」
「・・・」
「正義くん!これは違うの!!私が」
「いいんだ!!姫花!!!君が言わされているのはわかっている・・・」
「え・・・?」
話を全く聞こうとしない正義は悩ましいといわんばかり頭を抱え、姫花の言葉を遮った。
「大方何か弱みを握られてこんなところに呼び出されたのだろう・・・そして、卒業式の後もなにかしようとしていたのだろう!!この悪党が!!!」
(・・・相変わらずすごい言われようだな。まあ、こいつの場合何を言っても聞かないから流すのが一番だな)
こんなことは本当にしょっちゅうだった。おかげで風評被害は一段とひどいものとなったこともあった。そして、学に対して味方はするものはほとんどいなかった。
その悪評が肥大化して正義に伝わったときには一発殴られたりもしている学であった。
しかし。なぜかそのあと噂はなりを潜め、正義が学に謝ってくるという学にとっては何が起きたかわからないことが起きたのだったが。
(まあ、そのときも結局謝りながらもめちゃくちゃこっち睨んでたんだけどな、こいつ)
そして、今まで黙っていたり、なるべく姫花の近くから学を遠ざける行動しているだけで直接言えなかったものが爆発したのか、このありさまだ。
そういう時は、
「・・・そうか。それは悪かった。じゃあ、白百合さんと仲良くな」
このように立ち去ることがいいとわかっていた。
だが。
「待って!!」
横を通りすぎようとした学の手を必死に姫花はつかんでいた。その必死な表情は学を一瞬ひるませた。
「北野!!またお前は!!!」
しかし、正義の怒号によって冷静になった学は
「・・・離してくれ、白百合さん。もう話せるような状況じゃないだろう」
「いや!!ここで話せないと・・・また!!」
「・・・白百合さん」
引き止める姫花の手を振りほどこうとした。
その瞬間だった。
「「「え?!」」」
教室の床は光り輝き始めていていた。その光の原因はこの教室を覆いつくすような大きな魔法陣。そして、
「なにこ」
「姫花!!あぶな・・!!」
(これは・・・?!)
学達が考えるよりも先に3人は光に包まれてしまうのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます