第8話
僕はその時、この部屋でTVを見ていた。たまたま見ていたバラエティ番組で、ゲイのカップルをとりあげていた。苦労話等を聞き、「ゲイって大変なんだな」と思った。
北澤が部屋に入って来た。
「何見てんの」
並んで座って、何となくその番組を見た。しばらくして、僕が尋ねた。
「ゲイって、どう思う? 」
他意はなかった。
「他人に迷惑かけないんだったら、いいと思う」
即答だった。それから彼にしては珍しく真面目な顔をした。黒髪をくしゃくしゃと触る。
「でも、個人的には駄目なんだ。男同士、男女みたいに愛し合うんだろ。ゲイを差別するわけでもないし、悪い事じゃない。それもありだと思う。でも、受け付けないんだ。男でも女でもあるだろ、どうしても受け付けられないっていう人。生理的に駄目なんだ」
わかってくれるか、と彼が僕の方を向いた時、ものすごくよくわかる、と答えた。
でも僕だったらそうは答えられない。ゲイは認められるべきで、人権が、法律が、でも僕個人は抵抗が、と、全てが曖昧となり、ただ「難しいね」で終わってしまう。逃げてしまう。
北澤は単純だった。
理解はするけれど個人的にはだめだという事が、哀しい程にわかった 。
その単純さに、恋をした。
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