女だけの世界でもハーレムって言えるの?

ちびまるフォイ

女子力100%でお送りします!

「えっ!? 今日レディースデーじゃないんですか!?」


「すみませんねぇ、先週で終わったんですよ」


「どうする?」

「えーー……知らないおっさんが手握ってきたらキモいし」

「映画やめよっか」


女性の友達グループは映画館を去った。

その様子を神は見ていた。



「ちょっと!? 今触ったでしょ!?」


「え、え、さ、ささ、触ってないよう……ふぅはぁ……」


「触ってなくても近寄られるだけで気持ち悪いんです!」


女は降りる駅のひとつ前で逃げるように出た。


「ほんっとサイアク! 気持ち悪い気持ち悪い……!」


女はぶつぶつ言いながら気持ちを落ち着かせていた。

その様子を神は見ていた。



「これ、男いらないかもな」


明らかに世界で男は毛嫌らわれているのを察した神は、

男を女のいないパラレルワールドに、

女を男のいないパラレルワールドへと住み分けさせた。


男がいなくなった世界に気付いた女は焦った。


「ちょっとどうするの!?」

「このままじゃ人類が滅亡してしまうわ!」

「なんとかしなくちゃ終わりよ!」


女たちは力を合わせて男がいなくても子供ができる技術を完成させた。


いきなり女たちが慌てふためくもんだから神も焦ったが、

技術の完成後に平和な生活を歩む女を見て安心した。


「あーー男がいないのって本当に最高ね!

 気持ち悪いおっさんが電車で近づくこともない!」


「夜遅くなっても堂々と外に出歩けるのって最高!」


「周りの目を気にせずに、食べたいお店に入れるわ!

 前から思いっきりどんぶり飯を食べたかったの!」


女たちはまず人口技術を完成させた。

安心するまでは娯楽なんかそっちのけだったのもあり、

技術完成後にこれまで抑制されていた自由を取り戻した。


メリットはこれだけに留まらなかった。


「そういえば……もう戦争とかないわね」


「兵器開発がどーのこーのってのも聞かないわ」


「男どもが勝手に進めていたものだからね。

 やっぱり男がいない世界でよかったわ!!」


女だけの世界になってから軍事費という概念そのものが抹消された。

あれだけ争っていた宗教間の違いやら国境の位置やら肌の色やらは

あっさりと処理されて世界は全力で平和へと傾いた。


「「「 あーー! 女子に生まれて、良かった――!! 」」」





幸せ街道をひた走っていた女世界だったが、

華やかさが失われるのはしばらくしてからだった。


「は? 化粧? なんでしなくちゃいけないの?」


「つか服選ぶのめんどくさいーー。スカート? なにそれ?」


別に男にこびているわけではない。

それでも「モテる」という価値基準はたしかにあるわけで、

それが失った以上これまでほど身だしなみを意識する人は減った。


男が消えたことで力仕事も女がやらなければいなくなり、

機械操作に興味を持つ人が少なく人力で処理することも多くなると

女性の男化がどんどん進んでいった。


「ねぇーー。まだ電車こないのーー?」


「しょうがないじゃん。誰も電車なんて興味ないから

 車掌って今すごい人不足になってるんだし」



「そういえばスマホって、ずっと同じバージョンよね」


「今の世界でわざわざカメラの精度上げようとか軽量化しようとか

 考える人なんていないんでしょ」



交通機関は女子手不足となり遅延・欠航は当たり前。

スマホなんてもうずっと昔のままで最新作が作られることもない。


なによりの問題は、研究したがる人がぐっと減ったことで

医者だのワクチンだのの開発も滞ってしまっていた。


「どうしよう! もし新種のウイルスとか出てきたら……」


「もう誰か新しいアプリ作ってよ――!! これもう飽きたーー!」


崩壊の足音が聞こえ始めたところで神は女世界に訴えかけた。



『みなさん、私の力で男のパラレルワールドと

 女のパラレルワールドをつなげて元通りにすることができます。


 ただし、半数以上の同意が必要です。

 賛成の人は手をあげてください』



「どうする? 男戻す? キモくない?」

「でも戻らないと家のテレビ配線つなげない……」

「毎回、家電壊れるたびに新品買うわけにもいかないし……」


パラパラと手が上がり、最後には半数以上の女が手を挙げた。


「男はキモいし、キモイし怖いけど

 女と違う部分で得意なことがあるから戻してください!」


『わかりました、では男のパラレルと接続しましょう』


「男が欲しいわけじゃないです!

 必要になったから読んだだけですから!

 あの変態民族を求めているわけじゃないです! 断じて!!」


『はいはい……』


女としては男に「俺たちを必要としてくれたブヒヒ」と

思われるのが癪なのか必死に弁解していた。


神は男のパラレルワールドと女のパラレルワールドを統合した。


『はい、これで元通りです。

 これからはお互いの長所と短所を理解しあって

 お互いに支え合ってくださいね』



「あの神様……男がいないんですけど」


『えっ? ちゃんと統合したよ!?』


神様は神スコープで世界を覗くと言った通り男はいなかった。

男の世界ではとっくに人類滅亡していた。


『私が女世界を見ている裏で男は世界はどうなっていたんだ。

 ちょっと時間を巻き戻して確認してみよう!』


一体何が悪かったのかと神様はリプレイをした。



時間は世界を分割した直後。


「ちょっとどうするの!?」

「このままじゃ人類が滅亡してしまうわ!」

「なんとかしなくちゃ終わりよ!」


男の消失に気付いた女たちはすぐに人工増殖装置を完成させた。

一方男たちは。


「おい! 大変だ! 女が消えたぞ!」

「いったいどうすればいんだ!!」


「よっしゃ、まかせろ!!」


男たちは持てる技術のすべてを集め、あらゆる資金を費やし完成させた。

女の形をしたアンドロイドを。


「女がいなくても、これがあればセクハラし放題だぞ!!」


「「「 お前天才か!! 」」」


男が真剣に人類増加への対策をはじめるのは、

プロ野球中継が終わって、ボクシングの試合を見終わって、戦争で人口の半分以上が死滅してからだった。


遅ぇよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

女だけの世界でもハーレムって言えるの? ちびまるフォイ @firestorage

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ