Aiちゃんと異世界へ!

やまきち

第1話Aiちゃんと異世界へ

2035年12月24日俺、星野翔は今日で16回目の誕生日を迎えるごく普通の男子、、、ではなく秘かにとんでもないプログラムを作ってしまう天才男子だ。俺はあるプログラムを完成させるために今日まで家に引きこもってまで※それを作り出した。このプログラムを完成させるまでに約5年の月日を費やしてしまった訳だが、見事それを達成した。

「さぁ、頼むぞ!俺のAiちゃん!」

そう、俺、星野翔が作り出したのは人間同等の知識と言葉が理解できる(artificial intelligence)通称Aiだ。それもこちらが話しかければ返事をし、向こうからも話しかけてくれる完璧なプログラムが設定されている。もちろんこちらで好みのキャラクターを設定し、ボイスまで決めることができる。

高性能なコンピュータがうねり声をあげ、オーバーヒートしそうなCPUをファンが必死に冷まそうとしている。

「ダメなのかー??」

コンピューターと死闘を繰り広げること1時間ついに※それ、は姿を現した。俺が作り出した完璧なプログラムが詰め込まれたAiだ。見た目は髪は艶やかな赤のロング、すらっとしたモデルのような体型なのだが、、、

「おいおい、こんなにロリぃにしたつもりは無かったぞ?」

とコンピュータの画面に映し出されているAiに話しかけてみた。すると

「うるさいわね、あんたが呼び出したんでしょ!」

と少し幼い声で呼びかけてきた。これはすごい。若干見た目は想像より劣るが、そこまで悪いという訳では無い。むしろ想像していたボインのお姉さんより楽しめるかもしれないと思った。

「さぁ、君はこの俺に呼び出されてまんまと姿を現したわけだが、まぁ自己紹介からでもいかがかな?と言いたいけどまだ名前が無かったなぁ。」

「ふん!勝手にしてよ!」

(ん?もしかしてツンデレとかいうやつなのか?もしそうならデレるとことが見てみたいものだ。少し仕掛けてやるか。)

「じゃあ可愛いAiちゃんには、、、、」

と少し褒めてみた。すると、

「か、、かわいいだなんて、、、とでも言うと思ったわけ?からかってるの?もしかして今のでデレるとでも思ったの?、、、バカみたい」

まさかの返答だ。(くそぉう!自分が作ったものに馬鹿にされるとは、、、)何を言おうがまさか自分の作ったものがここまで人間の心の痛いところをついてくるとは思ってもみなかった。口から泡を吹いて倒れそうになったが不意を付かれた顔はコンピュータのWebカメラでAiには当然見えている。

「間抜けな顔ね。正直こんなやつに呼び出されるなんて思ってもみなかったわ。」

見た目は幼いのだが、声からして多分、、、同い年だ。そんなやつにからかわれていては俺のプライドが持たない。それもそうだこのプログラムを完成させるため、学校を辞めてまで作業したためまともに女子と会話なんて出来るはずがない。全く困ったものだ。

「じゃあ、名前は、、、Aiだからアイってことでどう?」

とっさに決めてみたが自分でも名案だ。

「勝手に呼んでなさい」

相変わらずツンツンした所しか見せないが反抗はしないので了承はできたと思う。

遂に完成したAiなのだがいちいちコンピュータを移動させるわけにもいかないので改造したスマートフォンにデータを同期にスマートフォンからでも呼び出せるようにしておいた。(そういえば、話してない時は何をしているのだろうか?)不意にそんなことを気にしてみたが、時計のチャイムでかき消された。

次の日、

「ちょっと!いつまで寝てるのよ!もうお昼の12時よ!」

とコンピュータの画面から大声で呼びかけてくる。

「うるさいなー俺の時計ではまだ夜の12時なの」

間抜けな返事だが誕生日に徹夜で完成させたこのツンツンAiちゃんの相手をしていたせいで寝ていなのだ。無理もない。

「3時になったら買い出しに行くからちょっと待ってて」

そう言ったのだがAi「アイ」からの返事は無かった。重たい足取りで身支度を済ませ、スマートフォンからアイを呼び出す。めんどくさそうだがこの人間界の風景を見せるいい機会なのでスマートフォンの内カメラを外に向けて買い物に出かけた。会話は出来るようブルートゥースの高性能イヤホンを付けてみたが、1人でべらべら喋るのは周りからの目が怖いのでなるべく控えるように頼んでおいた。

近くのショッピングモールに着くと学校帰りの学生で溢れていた。そこでアイが話しかけてくる。

「なんであんたはあの子達と同い年のはずなのに学校にも行ってないの?」

お前を作るために辞めた。と言うのが本当の理由なのだがそれではきっとアイに気を使わせてしまうだろうと思い、別の理由を述べることにした。

「親の関係で少し揉めてしまって引きこもりがちになったまま辞めたんだよ」

実際家には1人暮らしで親は離婚していなくなってしまった。もしまするとこのプログラムを作ったのも話し相手が欲しかったからかもしれない。

「そう、、、」

と少し暗い返事をしたアイだったが、次に言った言葉がはるかに想像を超えていた。

「じゃあ、私達の世界に来ない?」

理解ができなかった。そのままフリーズしてしまい、もう1度聞き返した。

「どういう事?」

「だから、私達の世界にこればいいって言ったのよ!」

流石にこの言葉はしばらく理解ができず、返事をしないまま買い物を済ませていった。

家に帰ると疲れが一気に出てやる気がゼロになる。買い出しの日は、普段運動しない分、どっと疲れが出てくるのだが、今日はアイもいたからか更に疲れが増していた。

「今日はもう寝るかぁ〜」

俺は、あくびをしながらそのまま深い眠りへ落ちていった。




朝だ。涼し気な風が肌を滑って流れていく。無限の大地にいるような心地よさだ。しかし、俺の部屋にそんなスペースは無い。ぱっと目を覚ますと大草原に囲まれたのどかな景色が辺りに広がっている。

「ウソだろ??」

しきりにビンタしたりつねったりするのだが、、、、痛い。確かに痛いのである。この時点で夢ではない事に気がついた。横に同い年くらいの女の子が横たわっているのだが、何だかその容姿に見覚えがあった。

「アイ、、、?」

うーーんと背伸びをして起き上がった女の子はやはり俺が作り出したAiそのものだった。

「あぁ、おはよう」

と眠そうな顔で挨拶をしてくるのだが、訳が分からない。こんな訳の分からない草原に連れてこられて平然としていられる根性は何処で鍛えたのだ。と。するとアイがスッと立ち上がってこう言った。

「ようこそ、私達の世界へ。これからそこに間抜けな顔で座っているあなたにこの楽園を案内してあげるわ」

と少々毒舌が混じっていたものの、一応とんでもない所に転送されてしまったと言うことだけは解釈できた。と同時に今から始まるこの異世界生活、このAiであるアイと過ごすのは心から不安に思うが、せっかくの青春ライフを逃すわけにはいかない。「よしっ」と言うかけ声と同時に起き上がり、アイと共に街を目指して走り出した。

とはいえ、アイに異世界に連れてこられた訳だがここでは人間界の持ち物など持ってきてはいない。服もなければお金もない完全にホームレス状態だ。

「おーい街まであとどのくらいなの?」

さっきから走って一向に街らしきものは見えない。

「そうね、後30時間はかかるかしら」

「30時間だと!?」

走って30時間など足が持つはずがない。元の世界に帰ると言おうとした時、アイがポケットからスマートフォン型のレーダーを取り出しコマンドを入力する。

「離れてなさい」

そう言うときめ細かい暗号が何も無い空間から発現しある物へと姿を変えていく。暗号が組み合わさりあっという間に乗り物へと置換された。何だこの乗り物はと思ったが、人間界であった水上バイクの陸用だろうか。その乗り物には車輪が付いておらず、浮遊しているのである。

「なぜ浮いているんだ??」

到底人間界ではありえない。2035年から来たわけだが全世界で有名となったあのタイムスリップ映画のような世界は実現していない。しかし、ここ異世界では可能になっているのだ。

「あなた達が遅れているだけよ、とっくの昔から車輪のついた乗り物なんてないわよ。」

とため息を含みながらさらっと言われた。

「でも俺がAiであるお前を作り出したんだぞ?」

そうだ俺が作り出したに違いない。

「あなたは何も作ってないわよ、ただAiの世界とあなた達人間界を繋いだだけ。それにたまたま私が出会ってしまったってわけ」

あの長年の研究が良かったのか悪かったのかは分からないが面白い体験が出来たので俺の中では良しとする事にした。

アイの操縦している陸用の浮遊バイクの名前はヴェローチェというらしくこれがまた速い。落ちないようにセーフティーベルトは付いているものの家で引きこもりがちだった俺は少し回転数が上がる度にGで顔が引きつる。走って30時間かかるといっていたがヴェローチェで移動しあっという間に大きなビル群が姿を現した。そこにはアイが言っていた通り道路がないのだ。車は浮遊し、街には人で活気に満ち溢れていた。俺は異世界と聞くと魔王を討伐しに行くような冒険物語を想像していたのだが、ここはそれの真逆だった。何せ何もかもが最先端すぎる。まさに映画の世界。ぼーっと眺めていると

「何ぼけーと突っ立ってるの?恥ずかしいから離れて着いてきなさいよ!」

と変わらないツンツン言葉で喋ってくるのだが今はそれどころではない。1歩進む度に世界観が変わりまた違う姿を見せる。俺が求めていた世界そのものだった。

しばらくアイの後を付いていくと街にはやたらと武器屋が多い。主に一般市民向けの拳銃やナイフばかりが並んでいる。治安が悪そうな雰囲気では無いのだが、普通ではない。

「なぁ、何でこんなに武器が置いてあるんだ?」

とアイに駆け寄って聞いてみた。

「あー、そういえば言ってなかったわね。ここサイバーランドは人間界からのハッキングでウイルスが入ってくるんだけど、そのウイルスが擬人化して勢力を持ってるの。ここから約8000キロくらい南に行けば奴らの基地があるわ。」

「ハッキングだって??」

「そうよ。人間界でAIを悪用しようとしている奴らがハッキングを仕掛けてくるんだけど、そのウイルス処理が私達の役目よ」

現実味がない話たが現実なのである。

「で、悪いけど今日から貴方もその一員ね」

「はぁ?まだこの年で死ぬつもりはないね!」

当然だせっかく最先端に満ち溢れたところに来れたのに早速戦闘で死ぬなどゴメンである。

「運動不足の引きこもりにはいい運動じゃない。」

辛口なのだか彼女の言葉は正論だ。言い返す言葉も見つからない。

「じゃあ決まりね。早速メンバーを紹介するわ」

「メンバー?」

「そう。ウイルス処理班のメンバーよ。私を含めて5人いるわ。」

そんな人数で撃退できるのかと感心しつつ初めて会うメンバーにドキドキしてきた。

とある高層ビルに案内され、地下へと移動する移動はエレベーターなのだがボタンはなく、行きたい階数を言うだけで勝手に移動してくれるシステムになっていた。こんな事でも声に出して「おぉ」と言ってしまう。到着し数字式のパスワードを打ち込み扉が開く。

「ん?お客さんかい?」

と同い年くらいの少年だろうか。髪は緑で身長は180センチくらいで大人しそうな雰囲気だ。するとアイが

「ええ、紹介するわ。新入りの星野翔よ」

「星野君かぁ、よろしくね」

と爽やかな笑顔で迎え入れてくれたのだが引きこもりでまともに人と話していない俺は顔を真っ赤にして黙ってしまった。すると

「おーっと、新入りを困らせちゃったのかなああ?」と奥から出てきたのは少し小太りの少年だ。多分この少年も俺と同い年であろう。

「言いがかりはよしてくれないか」

と小太りの少年を抑える高身長な少年だったが、話を切り替え

「そういえば名前がまだだったね。僕は清水誠也、まぁ役割は後衛支援って所かな」

さっきはよろしくと言えなかったので握手をして挨拶をする。

「俺っちは、奨剛武志、主にウイルス感知と通信関係を担ってるわけだな」

と2人の自己紹介が終わったのだが後の2人は買い物で外出中らしいので後回しだ。

「さぁ自己紹介は終わったかしら?そうそう、これまで(アイ)で許してたけど私の本名は鈴谷凛だから。覚えておきなさい。」

ハイと頼りない返事をして別室へ案内された。そこには見たこともない銃やナイフがずらりとしまってあった。

「ここは武器庫よ。戦闘準備の警告がなったらすぐに出動できるように自分の武器を選びなさい」

そんな事を言われれも異世界の武器など使ったことがないし威力も計り知れない。

「ちょっと待って!こんな危なそうな武器なんて扱えるわけ、、、」

すると彼女の腰から剣が抜かれ俺の喉仏に突き立ててきた。

「え ら び な さ い?」

彼女の顔は笑っていないここで嫌といえば即ゲームオーバーだ。

「ハィィ!」

と鼻水を啜りながら武器を選びに行く。武器は大きくわけて3つだ一つは銃、二つ目は剣、三つ目は弓だ。どれも高性能らしく冒険物語の序盤で出てくるような木製ではない。銃はレーザーガン、剣はライトセーバー、弓は弦が無限らしい。剣を選ぼうと思ったのだが、既に凛が装備しているので選ぶなという威圧をかけてくる。渋々銃を2丁選び装備する。

「じゃあこのタブレットを渡すから自分で好きなようにカスタマイズしなさい」

どうやらカスタマイズというのもこの異世界に※アイが操作していたあのスマートフォンらしき物体だ。

「これでさっきヴェローチェを出してたのか?」

「そうよ。でも貴方にヴェローチェは扱えないし勿体ないわ。180ケルのするのよ」

「けっっそのくらい自分で稼いで買ってやる!、、、ん?ケル?」

「単位が違うらしいわね、人間界で10万円が1ケルよ」

稼げるはずがない。そんな大金。

「どうやってそんなもの買ったんだ!!詐欺か?」

「あら聞き捨てならないわね。ウイルス処理の報酬よ。貢献した分だけ報酬があるの」

「そんなぁ」

「悔しければ頑張って貢献しなさい」

そう言って部屋を出ていった。俺も後に続き部屋を出ると出かけていた2人が帰ってきたらしい。

「あっ新人君?!私はアリシア!よろしくね!」

人間界でいう外国人だろうか。髪は金髪で目は綺麗なブルーでスタイルもいい。これは鼻の下も伸びてしまう。きっと凛に見られれば殴られていたかもしてない。そして最後のひとり

「よろしく、翔君でいいかな?私は廣瀬彩乃。このメンバーの中で最年長かもね」

身長は170センチくらいありそうで理想のお姉さんだ。

そしてフフッと笑いながら2人の自己紹介も終わった。





この異世界では今でもハッキングによるダメージを受けているようだが擬人化したウイルスにまだ動きはない。これから新たなメンバーと共に歩んでいくことになるが自然と体に力が入る。これからどんな困難が立ち向かおうとも乗り越えられる。そんな気がした。




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