第97話 ボス命令発動

 集合写真を、その場で見ようと思って見ると、フィルが映ってる。

 「ユタカ、これ」

と見せると、ユタカは即座にアプリを起動させた。

 「任せなさい。白で囲む」

 「えー…。私は生きてるぞ!」

 と、文句を言ってくるフィルには、ユタカの言葉の意味が分かってるんだな。

 「お前は、ここのスタッフではないんだ。撮らなくていいんだからな!」と、ユタカからダメ出しをくらったフィルは、私にヘルプ視線を送ってくるが仕方ない。

 「当然だろう。私はフィルにオファーを掛けた覚えはない」と、きっぱりと言ってやった。そして、撮り直したのは言うまでもない。


 賑やかなスタートとなった。

 これからは、ボスとなった私がここのルールだ。

 皆を見回し、一番最初に発した言葉は、これだ。

 うん、と頷き第一声を出した。

 「ケーキを食べよう」



 ガタッ…と、誰かが何かに当たったのか、静かになった。

 「だって、この小一時間で疲れたんだよ…」とボソッと小声で愚痴ったが、聞こえてないみたいだ。なので、メガネを外し、ジロッと睨んで言ってやる。

 ドスの効いた声で。

 「ボス命令だ。1時間の休憩を取る」


 作ってもらっていたケーキと飲み物を一緒に持ってくるよう、調理師に言う。


 ヒュー!と、誰かが口笛を鳴らした。


 「久しぶりだね、あの睨み顔」とはワンの声だ。

 「うんうん。あの高音気味のバスも久しぶりに聞けたよ」とはカズキの声だ。

 「これからは毎日見れて、テノールとかバスも日替わりで聞けるかもな」とはユタカの声だ。

 「ピアノもあるし、聴き放題だな」と、ミスターも話に加わってくる。


 そんな彼等の話にフィルが口を挟む。

 「ピアノ?」

 それに対し、ユタカが応じる。

 「こいつのピアノは小学生からだからな。上手いぞ」

 カズキも乗る。

 「そうそう、歌も上手いし」

 ワンも乗る。

 「なにしろ、ドイツのフェスに歌いに行ってた位だからな」


 それらを聞き、なんでか悔しがってるフィル。

 「3人共、トモと知り合いか?」

 俺様風に言ってくるユタカ。 

 「私は小学校から、ずっと一緒だ」

 同じく、俺様風に言ってるカズキ。

 「私は大学6年間一緒だった」

 こちらも同じく、俺様風に言ってるワン。

 「私も、大学6年間一緒だった」

何故か悔しがってるフィルは、ユタカに聞いていた。

 「トモのデータにアクセス出来ないのは、お前か?」


 俺様風が王子様風に変わったユタカは、静かに口を開いた。

 「私と、もう1人で特別プログラムを組んだ。トモだけではない。ここに居るカズキやワンのも、同様にアクセスはできない。付け加えておくが、ドクター博人のもアクセスは出来ないからな」


 その言葉にフィルは公言していた。

 「なるほど…。でも、いつかはそのパスを破って、アクセスしてみせる!」とガッツポーズして喚き散らしていた。


 私とユタカ、カズキ、ワンの4人が同じように俺様風にハモる。

 「無理だな」

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