353日目 クモの巣は賑やかでした。


 足音が近くなってくるとキルりんたちも我先にと逃げようとしていたのだが絡みついている糸によって体制を崩し倒れてしまい。

このままではマズイと感じつつもなすすべなく音の聞こえる方を見るとそこには巨大なクモが口をギチギチと危険な音を立てて近づいてきていた。



「あわわわわわ・・・何だよこの巨大なクモはよぉ!?

俺たちどうなるんだよ!?クモに運ばれてそのままエサになるってか!?」

「きっとクモも今年の冬を舐めていたのか貯蔵を怠り私たちが迷い込んでくるのを待っていたような感じですかね。

それに聞こえませんか??この声・・・さっきまでは煩く聞こえていた声ですよ。」

「ん?どれどれ・・・・あぁ、探していたメルトの声だ。

メルト~~私たちだ~~~私たちも糸でぐるぐる巻きにされてしまってこうなってしまった。

にしても・・・メルトが元気そうで何よりだ。

――――――――で、ここからの脱出はできそうか??」

魔王は顔が見えたメルトの隣で脱出ができるのかどうかと問うが見ての通りだと語り。

メルトの首より下は全て糸に巻き付けられており魔法を撃つことができない状況に魔王はハルトに他の方法で脱出はできないかと問うが今はそんな様子でもないといった状態であった。



「うわぁぁ・・・舐めんじゃねぇ!!!

マズイマズイマズイマズイ・・・・味見されてるだろこれ!?

俺が先に食われるとかそう言う流れじゃないよな!?ここは身の引き締まったキルりんか乳牛の魔王がお勧めだぞ!!!」

「なッ!?私を身代わりに差し出すとはハルトは何を考えてるのですか!!!

私はお肉があまり付いていないので沢山物を食べさせて太ってから食べて欲しいです!!!

ですからまずは魔王を食べることをお勧めします!!!」

「お前たち!?私は違う!!そ、そうだ!!私は魔王だ、だから私を食べると本当にとんでもない目に合う事を覚悟してもらうぞ!!!

だからお菓子程度にだがそこのメルトを食べると良いぞ。」

「ちょい待ちなさいよ!!!私を助けに来ておいてそれはないんじゃない!?

それにこのクモはすぐにがぶってしないところから察するにエサ目的で連れてきたわけじゃないと思うのよね。

―――――――――多分だけど・・・・」

メルトは汗をダラダラと流しつつクモの味見のような行動を耐えきると。

クモはどこかへ消えていき・・・ハルトたちはその間に脱出をしようと必死にもがいたりと不毛な行為を行っていると消えて行ったはずのクモが戻ってくる音が聞こえ何もしていないように振舞おうとしたのだがバランスを崩したメルトはごろんと地面に転がってしまい目を開いて確認すると目の前には小さな子グモが立っていた。



「あら、何この可愛いおチビちゃん。

どうしたのかなぁ~~私をジッとみてぇ~~えっと、もしかして私たちをエサと認識していないわよね!?」

「あははは・・・そんなことはないと思いますよ!?

私の頭や体中にも子グモがわんさかてんこ盛りでもう万事休すです!!!

エサなら数倍は用意しますのでどうか私は殺さないでくれませんか!?」

「ちょ、キルりんお前は俺たちの次は仲間のハンターたちを生贄にしようとしてんのか!?そんな事よりも何か変じゃないか??

この子グモたちもそうだがよ・・・どうして全体的に襲ってこないんだ??

こんな状態なら一気にかみ殺すなりした方が煩くなくていいと思うんだわ。」

「よく考えてみるとそうだ。

私たちを殺す機会ならいくらでもあった。

だが今でも私たちですら生きておりメルトも生きている。

という事はこのクモの目的はエサやそう言った事以外だと言う事か?」

魔王たちが静かになったところでクモはメルトの方へ巨大な口を向けて丸呑みにし・・・・エサにならないはずだという言葉がウソであったと確信したハルトはさらに大慌てで暴れだしメルトのようにはなりたくないと騒ぎ立てると・・・・



「ぶはぁッ!?ううぅぅ・・・いきなりガブられてびちゃびちゃになっちゃったけれど怪我はしてないわよ。

それどころかみたいなのよね。」

「メルトが生きてる??

ほ、本当ですよ!!!メルトの手足が自由になっています!!!

ですが自由にしてクモ達側に何か意味があるのでしょうか??それとも私たちはクモにとって糸で巻き付けなくても倒せるくらいのレベルだと思われているのでしょうか??」

と、談義しようと話そうとしたハルトたちにもガブガブと丸呑みにして糸を解除して吐き出すと。

クモは子グモに向かって何かを言ったのかコミュニケーションをしたようにもみえ。

メルトやハルトたちの足元に子グモが向かうと巨大なクモは想像もできない行為をした。



「あの~申し訳ないのですが人間さんウチの子供たちと遊んでやってもらえないですか??」

「はぁ!?お前喋れるのかよ!?

今までで一番びっくりしたぞ・・・食われること以上にびっくりだ。」

「そうね、私だけの空耳かと思ったけれどそうじゃないようね。

馬鹿なハルトにも聞こえたのなら全員に聞こえているって事だもの。」

「遊んで欲しいと言う事らしいですが・・・どうして私たちなのですか?

子グモ同士でとかじゃダメなのですか??」

「それもきっと私たちをここに連れてきたことに関係しているのだろうな。

そうでもなければ私たちを生きたまま連れてくること自体が妙だからな。

で、私たちを子グモと遊ばせたい理由を教えてくれないか?

その理由を明確に知れさえできれば私たちは子グモたちと遊びをしてやろう。」

魔王の突然の言葉にハルトたちはあたふたとしながら魔王の口を塞ぐが間に合わず。

巨大クモはどう説明すればいいのやらと頭をひねって考えだし。

どうしてハルトたちを捕まえて連れて来たのかや人間なのかと答えだした。



「そうですね、話の内容をつたえずに申し訳ありません。

私は子供たちのやりたいことを好きなようにさせて育てていたのですが。

ふと気が付くと子供たちは地上のフタをこっそりと覗いて地上を見ていたらしく・・・・外で楽しそうに入りまわる貴方方人間さんの行為を見て一緒に遊びたいと言い出しまして・・・・ハイ・・・」

クモは街で暮らす人間以上に礼儀正しくハルトたちに内容を伝え。

別に外で楽しく遊んでいなかった、即死魔法から逃げていた・・・なんて言って話の腰を折るようなことはできないと。

ハルトたちは遊び終えたら地上へ戻ってもいいのかと重要な部分を問うと二つ返事で答えが返り。

目の前のクモの曇りなき眼光と返答によってハルトたちは任せろと言って胸を叩き子グモたちと遊ぶこととなった。

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