321日目 呼んではいけない古書


 あれから買い物に出たハルトたちは食材を買い込み移動していると、メルトがふと足を止め・・・その目に移った古い本屋に立ち寄りたいと言い出し。

ハルトは後にするように言ったのだがメルトの性格から自分の事を最優先としていることから勝手に本屋の中に入りあちらこちらと古書に目を付けて見始めていた。



「へぇ~こんなところにしては中々古くて興味深い本が沢山あるじゃない。

これなんて古代文字かしら??読めないけど何か特別な力を感じるわ。」

「ほう・・・その本の価値がわかると言う事は、主は魔導に通じる知識と血族という事かな??

おっと失礼・・・私はこの古本屋の店主ブッケン。」

「悪いな、このバカが迷惑かけたのなら謝る・・・ってか・・・ここ誇り臭くないか??」

「ハルトも十分失礼かと思いますよ??

こういう古本の店は不用意に換気ができないんですよ。

本は生ものと言われる時代の作りをしている古書ならばなおさらです。

ですがメルトもメルトですよ?今は我々の生命線である食料の調達が先です。

今は魔王が私たちの荷物の番をして待っているので早く戻りましょうよ。」

外で魔王はジッとハルトたちの帰りを待っている中でメルトはブッケンに自己紹介を済ませると。

手に持った読めない字が書かれた古い書物に興味があると言って本の値段を問うと。

ブッケンは料金は必要ないと言い出し、無料という事ならとメルトはしめしめと本を何の躊躇もなく受け取り・・・キルりんとハルトは少し不安なニオイを感じつつもメルトを素直に動かせるのならとスルーしていたが。

店を出る前にブッケンはメルトたちの方を見ながら笑みを浮かべており、ハルトはメルトにひと言忠告を入れることにした。



「メルト、こうやって今までの付き合いからわかるんだがよ。

お前のしたいこともやりたいこともわかる。

だからあえて言う・・・お前、その本を家で絶対に読むんじゃねぇぞ??

街でも村でも人に危害と迷惑の掛かるような場所で読んだりすることは禁止な?

わかったか??そうじゃなけりゃ俺が夜中にでもこっそりと燃やしてやるから覚悟しろよ。」

「ハァ!?何で私がそんな契約を守らないといけないのよ!!

それにハルトは私の使い魔なのだから私の味方よね!そうよね!?

そうであるのならこの美しく知識を貪欲に我がものとしようとするこの魔導の主ことメルト様に協力して解読する所でしょうが!!!

魔王たちもそう思わない!?」

「いえ、思いませんね・・・私も結構な時間を共にして来ていますのでハルトの言いたいことがわかります。

メルトは大体こういう件でトリガーになる傾向が多々ありますので本当に巻き込むことだけはやめていただきたいです。

それに・・・その魔導書に価値があると言うのであればあのブッケンという古本屋の店主がどうしてメルトにその本を譲ったのかもわかりませんし。

――――――――――ないです??」

「そんな事よりも私の両手にある荷物を少しは持つのを手伝ってくれはしないだろうか???

魔王のこの私を無視しておいて荷物持ちにさせたことに関しては助けてくれるのであれば目をつむるが・・・・なぁ、私の話をちゃんと聞いてはくれないか??

目の前もあまりよく見えないのだが!?」

魔王の両手に持つ詰みあげられた大量の食材をハルトたちは面倒臭そうに持つと。

メルトのぎゅっと握った本に興味が湧いたのか表紙だけでも見せてもらえないかと問うと。

メルトはチラッとだけ表紙を魔王に見せた――――――



「こ、これでいいでしょ??ハイおしまい!!

あとは私が解読してハルトたちに内容を教えるまで見せないわよ!!!

知識の独占って・・・ステキ!!」

「あの野郎・・・あくまで家で読む気なのなら本当に今夜中に燃やすべきじゃないか??ん?魔王??どうしたんだ??」

「いや、あの本はかなりものだぞ。

私にはわかる・・・アレは読んではいけない本だ。

この世には読むべき本と読んではならないとして作られた書物が存在する。

そのうちの読んではならない本がきっと今メルトの持つアレだと私にはわかる。

何せアレは古代文字で書かれた集だからな・・・・」

「えっ??魔王??もう一度言ってもらってもいいですか??

シリアス風に語っていましたが・・・ポエムが何と言いましたか??

それに魔王の書いたとか・・・ふざけているのですか??」

キルりんは魔王のジョークだと思い問いかけるが魔王の表情はそれ以上に深刻でどうにかしなければと大剣を取り出そうとしていたが荷物の都合上取り出せず。

家に戻ってから考えることになり買い物を済ませたハルトたちは家に戻ってきたものの・・・・


「ちょっとメルト、話が――――――――」

「それじゃ私はコレを解読するからまたゴハンできたら呼んで!!!

―――――――――そんじゃねぇ~~~ぐふふ・・・」

「行ってしまいましたね。

魔王の言葉をスキップしていくとは・・・メルトは本当に強いですね。

で、あの本が魔王のアレなポエムが書かれているのはいいのですがどうして古代文字を使って書いたのです??」

「そういやそうだな・・・わざわざ古代文字で書く事なんてなかった・・・いや、待て。

もしかして古代文字だと誰も読まないと思って書いたって事か??

あと・・・どうしてその魔王の恥ずかしいポエムが書かれた本があの店にあったんだ??」

疑問が疑問を呼ぶ中、魔王はあのポエム集を書いたこととどうしてあの店に流れ着いたのかを推測で語ると。

ハルトたちは妙に納得し・・・・これからアレをどうするつもりなのかと問うた。



「メルトはやると言ったら何をしようがやり遂げるからな・・・自分の事だけだが。

回収するのならメルトから無理矢理奪う形になりそうだが・・・・それでも魔王はやるのか??」

「もちろんだ、アレは私の弱点ともいえるべきモノだからな。

何としてでもどんな手を使ってでもアレを回収せねば今日は一睡もできやしないだろう。

だから2人には協力を頼みたいのだが・・・手伝ってはもらえないか??」

「魔王の手伝いですか??

しかも相手があのメルトと言うのであればそれ相応の報酬を求めますが??

私はコレでもアサシンですのでその辺はキッチリとしていただかないとですね。」

魔王はキルりんと半ば強制的に参加させたハルトを自分の部屋に招き入れ・・・これから行われるメルトからのポエム集奪還作戦が行われようとしていた。

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