243日目 捨て身による勝利


 茂みに隠れて様子を窺っているキルりんはフレイムマンが出てこない状況からハルトの意識があるか問うと。

何とかハルトは意識があるらしく言葉を返して来たのだが・・・・

ハルトはキルりんに感謝の言葉を述べるのではなく逆に引きずって来た事に対して怒りの声を漏らしていた。



「もう少し何とかできただろ・・・・いくら俺が男だからって引きずって逃げなくてもいいだろ・・・・

で、状況はどうなっているんだ??終わったのか??」

「いいえ、まだフレイムマンが岩の下敷きのまま動きが無いのです。

2人のチャージはそこそこに完了しているはずですがハルトの落とした岩石によって攻撃ができないといった所でしょうか。」

「くッ・・・ハルトの時間稼ぎで呼び出した岩石はフレイムマンに大きなダメージを与えたのには違いはないが。

ここまで大きければ私たちの全力の魔法を放ったとしても岩石によって意味をなさないし・・・・メルトは何かいい案があるのなら言ってくれないか?」

「そうねぇ・・・ダメもとでぶつけてみるとかダメもとでぶつけてみるとかダメもとでぶつけてみてとか・・・・どう??」

メルトの焦りの含まれる言葉に魔王はハルトがせっかく作ったチャンスを無駄にしたくないと真っ向から言い返すと。

フレイムマンを押しつぶしている岩石に異変が現れた。



「な・・・何の音だ??もしかして・・・・ヤツか??

くっそ・・・こんな状況で寝てるだけしか出来ねぇのか・・・・情けねぇ・・・」

「いえ、むしろハルトは病み上がりにしてはよくやったと思いますよ。

あの場面でハルトが岩石を降らしてなければ間違いなく私たちは・・・いえ、この場にいるもの全員が灰と化していたでしょう。

それを救ったのはハルトの功績です。

ですがここも危なくなってきたのでそろそろ移動しますよ・・・で、ハルトは歩けますか??」

キルりんの問いにハルトは動けるか試してみるが動けない様子が伝わったのかキルりんはハルトを再び引きずって移動し始め。

さらに奥の茂みにまで移動すると・・・・岩石の方に目をやった。



「チャージはあと少し・・・あと少しで完了すると言うのに!!!

このままではハルトに合わせる顔がないぞ!!!どうするメルト!?」

「私にそんなテンションで聞かないでよ・・・・この天才的なメルト様にも考える時間って言うのは必要よ。

何でもすぐに決めて突っ走る魔王と一緒にしないでもらいたいものよ。

見た所フレイムマンは岩石を殴りつけているようだから・・・私たちの魔法がチャージ完了するまでとほぼ同じといった所かしら。

それまでに何とかなればいいのだけど・・・・ダメだったらそれはそれで何とかするしかない。

私が言えるのはただそれだけよ。」

メルトは久々にいい顔をしながら語ると、魔王はフッと笑みをこぼしてチャージに意識を集中し始めるとフレイムマンの攻撃が激しさを増し。

ついにフレイムマンはハルトの落とした岩石を粉砕して地上へと姿を現して魔王たちを見つけるとそのまま直進し始めた。



「魔王、チャージはどう??私は後ちょっぴりたんない・・・・」

「私もメルトと同じくらい足りないんだ。

クッ・・・・ハルトの作ってくれた時間が無駄になってしまうのか・・・・

すまないハルト・・・ここまで無茶をさせたのに・・・・」

「バーカ!!!お前たちが無茶をさせるのはの事だろうが!!!

だから今回はさらに無茶をしてやるよ!!!キルりん俺をフレイムマンの方に投げてくれ!!!お前は土壇場での底力は異常だからな!!」

「ぐッ・・・言ってくれますが、この先どうなっても知りませんからね!!!

―――――――――いっけぇ!!!ハルトボンバーーーーー!!!」

キルりんはハルトの指示通りに最大の力で投げ飛ばすと、ハルトはフレイムマンに直撃する寸前で腹をフレイムマンにぶち抜かれていた。



「ごはッ・・・アツイタッ!?!?!?

ぐあぁあぁぁぁ!!!!燃える燃える!!!マジで燃え落ちちまう!!!

は、早くお前ら・・・・何とかしてくれ・・・・・が・・・・がくッ・・・」

「は、ハルトぉぉぉ!?2人ともまだですか!?

早くしないとハルトが火だるまになってますよ!!!!!」

「キルりん下がっていろ!!!

ハルトが身を挺して作った時間で何とかチャージが完了した!!!

さぁメルト!!!ハルトを救うとともにフレイムマンを倒すぞ!!!」

「言われなくてもそうするつもりよ!!!

あの火だるまハルトを救って報酬をもらってやるんだから死なないでよ!!!

―――――――――いっけぇ!!!ハイドロウェーブ!!!」

魔王とメルトは互いに違う水の魔法を発動し、フレイムマンを中心としてぶっかけると・・・体中の熱と水との反応で蒸気が発生して辺りが真っ白くなっていたが。

2人は水の放出を止めることなく最後の最後まで出し切り・・・・

これ以上水がでないと言う所で構えを解いてフレイムマンのいた場所を睨みつけると・・・・



「は、ハルト!?くッ・・・・今助けてやるぞ!!!」

「どうやらフレイムマンとの戦いは私たちの勝ちと言う事で決着が着いたようですね。

ハルトがボロボロになってチリチリパーマですがまぁ・・・形が残ってるだけマシですがメルトはハルトの元へ行かなくていいのですか?」

「べ、別に私はハルトの主だけどそこまでしなくちゃいけない事も・・・・あぁもうわかったわよ!!!行けばいいんでしょ行けば!!!

まったく・・・本当に世話の焼けるダメ使い魔ね・・・・で、ハルトは大丈夫なの??」

メルトは魔王にハルトの容体を問うと。

魔王は震えた声で全身に深い火傷と腹には大きな傷跡があると答え。

その言葉にメルトは自身の目で確かめようと近づいた。



「ホント、ハルトってばバカね。

フレイムマンの囮で逃げてくれるだけでよかったのに・・・でも、ハルトがいたから成功したようなものだし仕方ないわね。

私の超高級な魔力をわけたげるわ。」

「メルト・・・ならば私も魔力を分けてやろう。

1人で送り込むよりも2人の方が治りが早いかもしれないしな。」

「・・・・・・・ぶごッ!?ごふッ!?バカ・・・・お前ら急に魔力を流し込むんじゃねぇ・・・・グガガハッ!?」

「なんです??ハルトの口からキラキラ色の液体が出て来てますが・・・・大丈夫ですか?」

メルトと魔王の魔力を一気に送り込まれたハルトの体はその量を持て余してしまい。

ついには口から吹き上げ・・・文句を言いながら目覚めていた。

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