240日目 死んだかのような眠り


 せっちゃんとキルりんはとんでもない勢いで睨み合っており。

外野にいた冒険者やハンターたちは喧嘩かと楽しそうに近づいてきてくるや・・・キルりんとせっちゃんの喧嘩だと知るとさらに盛り上げようと茶々を入れるが。

それはこの状況だと敵を増やすだけで、その茶々を入れた男は2人にナイフと刀で脅され・・・・半泣き状態で店の奥側に消えて行ってしまっていた。



「で、この状況どうすんだよ・・・・血を流さずに終わらせる方法って言うのが思いつかねぇ・・・・」

「だが・・・こういう時はキルりんの怒りを発散させてやるのも一つの手ではないか?

それに相手はザコの冒険家やハンターたちではなく悪名高いせっちゃんだ。

相手にとって不足なしとはよく言ったモノだろう。」

「そうですねぇ・・・私も久々に色々ありすぎたせいで怒りに怒ってるのでよければ表でお相手してくれませんかねぇ???

それとも人切りの私を前に逃げますかぁ??」

「今日はキルりんの様子が変だと思って聞いてみれば・・・・

ううん・・・そんな話はどうだっていいね。

ここは私もキルりんの相手になったげる・・・・さぁ表で決闘よ!!!」

「あ~らら何だかややこしくなってきちゃったわねぇ。

すんませぇ~~ん、ムギムギソバ1つくださいなぁ~」

メルトはウェイトレスに注文を入れて待っていると・・・キルりんとせっちゃんが外に飛び出し。

いきなりの戦闘が始まっていた。



「おりゃぁぁぁ!!!!」

「フンッ!!!!そこッ!!!」

「あぁぁ~~もう!!!マジで喧嘩とかじゃなくて殺し合いになってんじゃねぇかよ!!!

あんな中に飛び込んだらケガとかじゃすまないだろうし・・・・って、魔王・・・何で俺を見てるんだ??ヤだぞ??俺は絶対に行きたくないったら行きたくない!!!」

「ズズズズズズゥゥゥゥ~~~いや、ハルト以外にこれを止めれる身代わり・・・じゃなかった人はいないと思うわよ??

アンタは仮にも不死者なわけだし??多少の痛みが伴うくらいで元に戻るスピードが私たちよりも格段に上なのだからつべこべ言わずにぶっ刺さりに行ってらっしゃいな!!!!」

ソバおズルルと吸い込みながらメルトはハルトを強制的に転移させ、2人が一撃を交わらせようとしたど真ん中に飛ばすと。

それはもう見事にハルトの腹や背を2人の刃が貫いていた。



「ぐばッ!?オマエ・・・・後でマジで泣かす・・・・ガクッ・・・・」

「ハルト!?ちょ・・・どうして急に飛び込んで来たの??

こんなにも激しい戦いをしているのを見てたでしょ。

なのにどうして・・・・ハッ!?まさか私たちにケガをさせないように・・・・そんな・・・ハルト!!私を置いて死なないで!!」

「死にませんよ・・・何度も見てるはずですがハルトはなので死にません。

まぁ大体の内容は察したので今日はこの辺にして夕食にしましょう。

せっちゃんと刃を交わして少しだけ気分がスッキリしたので。

あぁ、ハルトはそのまま置いて問題ありません。

きっとそのうち勝手に戻って来ると思うので。」

キルりんの言葉にせっちゃんは剣を引き抜いてぐったりとしたハルトを置いて店内へ戻り魔王は木の枝でハルトを突いて生きているか確認を取ると・・・・



「ツンツンツン・・・・お~い、ハルト~大丈夫か??

これは少しショックが強すぎたのか??

流石に2人の気合のこもった一撃を浴びたんだ・・・・軽傷なはずが・・・ん?ハルト!?もう平気なのか??」

「あぁ・・・俺も怒りに任せることにする・・・アイツ泣かすッ!!!」

ハルトは急に起き上がると、鋭い目つきをしながら酒場へと入って行き。

呑気にシュゴビーを飲むメルトに凶悪的なグリグリを見舞って泣かすと・・・食事代を払って家に戻った。



「ったく・・・人外の喧嘩を止めんのにわざわざ俺を使うなっての・・・

イテテ・・・せっちゃんの刀の傷の治りが悪い・・・・

これは寝るしかダメそうだな。」

「ん?ハルトよ・・・・どうしたのだ?その傷は・・・

また変な相手にでも捕まったのか??」

ベッドに寝転がっていると今度はバロンが現れ。

傷の心配をするのかと思えば傷を付けた相手の事について興味があったのか。

相手の事をきき尋ねていた。



「あぁ、ある意味クセしかない奴らにな。

ついでに言っとくと腹意外に背中もぶっ刺されてるんだが・・・腹の傷だけ治りが悪いんだがどうにかならないか??」

「フム、この傷は・・・・刀か・・・それはイカン。

刀は呪いを帯びやすい武器だからな。

刀でつけられた傷は治りが悪く、死に至ると言うが・・・ハルトの体ならば死という概念が存在しないゆえに死にはしないがやはり傷の治りが悪くなると言う効果はあるらしいのぉ。

それにこの場合だとやはり寝るのが何よりも効果のある回復方法だ。

――――――――だから少し休むといい。」

そう言ってバロンは眠りへと誘う魔法をハルトにかけ。

腹の傷の具合を見てから治癒効果を高める魔法を施してハルトの中に消えて行った。



そして・・・バロンに魔法をかけられてぐっすりと眠ったハルトは気分爽快と目を覚まして傷のあった部位に手を触れると綺麗サッパリと傷が治っており。

体も昨日までとは比べ物にならない程に快調で疲れがない絶好調であった。



「何で昨日まであんなにズタボロの雑巾みたいだったのにどうしてだ??

あぁ・・・バロンが何かしてくれたのか。

してくれるのは良いんだがソレを教えてくれた方が自分でできて楽なんだがなぁ。

だが、 助けてもらった事には変わりないんだサンキューな。

で・・・アイツらはちゃんと戻って来てるんだろうな??ん?

どうして扉が開かないんだ??ぐぐ・・・おら・・・開けよ!!!」

何かかが引っかかって動かない扉を強く推して開けると。

引っかかっていた正体は魔王であり、その近くではシュゴビーの瓶を抱えて眠るメルトの姿や・・・ナイフを握りしめたまま眠るキルりんが変な格好をして寝ていた。


「あれから無事に帰って来たらしいが・・・どうなってんだ???

まぁいいか、おい・・・・起きろ!!!起きろって言ってんだ!!!起きろよ・・・・」

「ん~~ムニャムニャ・・・ふへへ・・・あと4杯だけらからぁ~~~ぶひゃ!?

だ、だ誰かしら!?私の顔面に水をぶち込んで来たのは!?」

ハルトは咄嗟に水の入ったジョッキをメルトの顔面にぶっかけると予想通りと言うべきかテンプレ通りに文句を並べて起き上がって来ており。

メルトは何だかすごい顔をしてキルりんたちを起こし始めた。



「みんな起きて!!!わよ!?

あぁ~よかったぁ~~~本当に死んじゃったのかと思ったわよ??」

「おい、ちょっと待て・・・・誰が死んだって?

俺はこれでも不死能力持ちなんだぞ?それに数時間程しか寝ていないはずだが?

そんなに大げさに言っても別に数日目が覚めなかったわけでもないだろ??」

「いや、ハルト・・・ハルトは3もの間を寝ていたのだぞ??

それも寝たまま息もせずピクリとも動かずにな。

どれだけ痛めつけられても屈辱を合わせられても次の日には元気になっていたハルトが数日いないだけですごく寂しかったのだからな!!!」

「ふわぁぁ・・・ん~何ですか想像しい・・・ハルトが起きたとかそんな出まかせ・・・でもなさそうですね。

その、ハルト・・・お久しぶりですね。」

この状況でハルトは未だに3人が冗談を言っているように思えたが。

その証拠とばかりに魔王はハルトに今日の日付を言うように語ると、その誤差に信用できずハルトは嘘の付けないせっちゃんかジャージーを探しに家を飛び出していた。

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