100日目 ハルトの故郷、魔王の目指すモノ

アズラえるに体を拘束されたハルトは・・・身動きが全く取れないままアズラえるにどうしてこんなことをするのかを尋ねると。

アズラえるは説明をする前に暴れようとするからといい・・・ハルトに覆いかぶさり―――――――


「ここでいいことしても全然いいんですがね?

今は早いと言うか・・・時間がないと言うかで手短に言いますと・・・

ハルトさんのいた日本・・・いえ、自体が消えちゃいました。

ですから・・・ハルトさんの故郷は綺麗サッパリとなくなっちゃいましたよ?」

「は?お前今なんてった・・・・日本が・・・地球が無くなったって!?

そう言ったよな!?マジかッ!?まだクリアも発売もされてないゲームがあったのに!!!いや・・・んな事よりも・・・俺、あの世界で永住って事に何のか??」

ハルトはからかっているのだと冗談だよなとアズラえるに尋ねると・・・アズラえるは目を逸らしながら答えずに、ハルトが何かを言おうとした瞬間・・・唇に指をあてながらこのオフィスに住むことも許可さえとれば可能だとハルトに言うが。

この訳の分からない場所にいるくらいならバカメルトのいるヘンテコなあの世界にいる方がマシと言うと。

アズラえるはため息をつきながら適当に相づちを入れつつ指をパチンと打ち鳴らすと、ハルトは目の前が真っ暗になり・・・再び目を覚ますとメルトの頭とクラッシュしていた。


「あいた・・・・もぅ何なのよ!?

意識があるか確認してみればこうよ!!!

ハルトは問題ないわよ?コレでいいのかしら??ってく・・・散々よ・・・」

「お前な・・・人が故郷を失ったとも知らずによくそんなことを言えるな・・・」

「ん?一体ハルトは寝ている間に何を見たのですか??」

「故郷を失ったとか言っていたな。

――――――それは夢ではないのか?」

気を失っている間に出会ったアズラえるからの話をそのまま話すと、3人は何も言い返すことも否定もすることなく。

この世界で強く生きようと語り、ロープに繋がれているストロベリーを連れて持ち主に引き渡し。

ギルドで報酬をもらい酒場へと向かうのであった―――――――――


そして、翌朝・・・・先日の依頼でストロベリーを無傷で連れ帰ってきた特別報酬が出ていたこともあり。

数日だけ休暇を取りハルトは家でゴロゴロしていた――――――――


「あぁ~~もう秋だってのに・・・美術の秋もスポーツの秋も何もすることのねぇダラダラの秋だな。

こういう寝やすい日は昼寝が一番ってな・・・・」

「ハルト、そこにいたか。

いや、街の福引で何やら秋の味覚を味わえるというモノが当たったんだ。

ちょうどメルトは酒場に出かけ、キルりんは教会の手伝い・・・この手を逃すのはいけないと思わないか??」

魔王は久々に悪魔的な顔を作りながらハルトに語り掛けるが。

ハルトはただいまダラダラの秋を満喫していると返事を返すと・・・・魔王はハルトの前にカゴにどっさりと秋の味覚満喫セットの内容を並べるが――――――


「いや、パス・・・調理は面倒だし?メルトとかキルりんに内緒で食べたら何て言われるか・・・・」

「な、ならば!!!私が・・・その・・調理すれば・・・一緒に食べるのか??」

ハルトは適当に返事をすると。

魔王は具材をもって誰も使わない台所に向かい・・・魔力でエプロン姿になると。

台所では聞かない気合の入った声とともに何かを切るような音が聞こえていた。


「エイッ!!!くそ・・・この具材・・・中々にしぶとい・・・

いっその事、私の大剣で・・・・」

「おいおい!!!待て!!!台所にそんな凶器持ち出すなって!!!

わかった・・・俺も手伝うからその大剣はしまえ・・・な?」

魔王はハルトがそう言うのならと大剣をしまい。

ハルトが具材を切り分け、魔王が串にさして準備が終わると・・・ハルトはそれじゃと言って部屋に戻ろうとすると魔王は必死にハルトを説得し。

庭で焚火を作ってBBQが始まった。


「その・・・ハルト・・・コレはまだできないのか??」

「肉とかあるし・・・まだだろ??

ってか・・・1つ聞きたいんだが・・・魔王は調理の経験ってあるのか??」

ハルトはおおよその答えを想像しながら魔王に尋ねると。

魔法は真顔でないと答え。

ハルトは無言のまま串をひっくり返していると・・・魔王は恥ずかしそうに自分の方にある串を見よう見まねでくるっと返し。

じわじわと焼けていく串にワクワクしながら見つめていると――――――


「よし、そろそろ大丈夫じゃないか??

俺もそこまで料理ができるってわけじゃないが・・・焼き加減くらいならわかるからな。

安心して食べてくれ。」

「そうか、ならば・・・いただきます。

はッ!?はふはふ!!!うむ・・・コレは美味だな。」

魔王は焼き立ての串焼きを頬張りながらアレを忘れていたと家の中に戻り・・・一緒に付いてきたシュゴビーを2人で乾杯し、再び串を刺して焼き上がりを待ちながら適当に話をすることにした――――――――


「そ、その・・・ハルトの故郷ってどんな世界なんだ??」

「何だよ急に・・・どうせ話しても信じれない事ばかりだと思うが。

それでも聞き―――――――――」

ハルトが言い切る前に魔王は是非と強く言い放つと。

ハルトは串をくるりと返しながら故郷の地球のこと住んでいた国の事を話すと。

魔王はこの世界にない事ばかり話すハルトに夢中で。

その顔は魔王と言う顔ではなく冒険譚に胸を躍らせる小さな子供のようにワクワクして聞き、想像する魔王の顔であった。


「で、ハルトはその・・・げーむとか言うのが趣味だったのだな。

私の趣味は冒険者やハンターたちと激しい戦いをすることと。

この世界をよりよい世界にしたい。

そのためにはやはり・・・力が無ければいけない。

話ができないのなら最後は戦う事になるだろうからな。

そして、その話し合いをするためにはハルトのようなキレる頭が必要だ。

私は力には自信があるが、ハルトのように物事をうまく理解できないのだ。

すぐ頭に血が上ってしまう事がしょっちゅうで・・・・」

「あぁ・・・知ってる。

暴走した時なんかスゲエ顔して大暴れしてたもんな・・・・・

でも、魔王のくせに世界をよくしたいって変な世界だよな・・・ここって。」

そんな互いの話をしていると・・・酒と串焼きの匂いに誘われ。

返ってきたキルりんとメルトが庭にヒョコっとやって来ると。


「2人でな~にイイコトしてんのよ~~私も混ぜなさいよねぇ~

うぇへへ・・・うまそぉ~~~」

「メルト!?それはまだ生ですよ!!!

メルトの目はどこについてるんですか!?」

「何だか急にいつも通りになったな・・・・」

「あぁ、だが・・・・コレが私たちの日常だろ??

よし!!!メルトも来た事だ・・・シュゴビーをもう一本あけるか!!」

魔王がそう言うとメルトはすでに体からお酒のニオイを漂わせていたが・・・今日くらいはとハルトは目をつぶり。

キルりんと共に串を焼きながら4人で夜まで騒ぎ・・・気が付けば朝になっていた。


「んん・・・もぅ朝か??」

「あぁ・・・実に見事な朝焼けだ。

ハルトも見てみるといいぞ。」

「ん~むにゃむにゃ・・・・もうそれ以上は・・・でも・・・ハルトがそこまで言うのなら・・・うぇへへ・・・知ってるわよ・・・ハルトはバカなんだからぁ~~~うぇへへ・・・うぇぷっ!?

――――――――――な、何事!?急に何かが私を襲ったわ!?」

「朝からメルトは元気ですね・・・・それに私たち・・・外で寝ちゃってたんですね。

で、今日の休日はどうします??」

キルりんは焚火に気を放り込みながら今日の予定を聞くと・・・これから適当に考えるとハルトが言うと。

メルトは自分の部屋で寝ると言って自分の部屋の窓からズルりとヘビのように入って行った――――――――――

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