フランチェスカ
鈴蘭
File1:その日、日常は変わった
2030年、核を利用した半永久エネルギーが誕生、これにより第二の化学革命がおこった。
これは、人類史の大きな一歩である。
人々はそれをあらゆるものに搭載、近未来的非日常が日常になった。
なによりも、機械人間、通称
人の形をしたロボットなのだが、そこらのより高性能。
最も人間に近いとも言われている。
まだ一般家庭での販売はしてないが、警備などには使われている。
そして、2076年のアメリカでまた大きな歩みが起ころうとしていた。
◇ ◇
少し暗めの部屋、閉まったカーテンの隙間から差し込む光に埃が映る。
ベットに寝転がり、端末機にイヤホンを差してラジオを聞く。
すると、おもむろにドアが開く。
ノックくらいしてほしいものだ。
「レン、ここにいたのか」
「なに、マスターおじさん?」
数学を英語で言うと
ラジオの電源を切ってイヤホンを外し、体を起こす。
「そろそろお前の父ちゃん、母ちゃんの晴れ舞台だぞ」
「マジで?」
「ああ、生放送始まっちまうぞ」
僕はベットから出て、おじさんと一緒にリビングに向かう。
着くなりソファーに座り、テレビをつける。
『さあ、いよいよ機械人間、通称
「お、いいタイミングだな」
よかった、まだ生放送が始まったばかりのようだ。
『長く続いた機人プロジェクトが遂に完結するのです! さあ、今回の開発責任者であるシンスケ・ハットリ博士に来ました!』
父さんはステージの壇上に上がり、大衆に目を向ける。
『どうも、今回の開発責任者のシンスケ・ハットリです』
「父さんだ!」
「兄貴……俺は感動してるぞ!」
おじさんは感動のあまり男泣きしてしまう。
かくいう僕も嬉しくて仕方ない。
家族がテレビに出ているということもあるが、歴史の教科書に載るかもしれない人になるのだ。
そんな人が家族だなんて、僕はなんて幸せ者なのだろうと子供ながらしみじみ思う。
『私は長話が苦手なので少しだけ。ここにいる皆さん、チームの皆、そして最愛の妻とこのプロジェクトに関われて幸せです。さあ、忘れられない、特別な日にしましょう!』
会場で大きな歓声が沸き起こる。
皆、この瞬間に一端だけでも触れることができる、共有できることに歓喜しているのだ。
『では、データを組み込みましょう!』
父さんはそう言うとタブレットを取り出し、アプリを起動する。
同時に用意されていた大きなスクリーンにも同じ画面が表示される。
『画面に映っている赤い丸、こちらを押し、十秒経てば完了です。瞬きは禁止です』
父さんは赤い丸を押し、スクリーンにタイムが表示される。
そして会場の人々がカウントダウンを始める。
8、7……5、4……2、1……0。
◇ ◇
突如、テレビの画面が暗くなった。
会場の演出かと思ったが、様子がおかしい。
「おい、映ってねーじゃねぇか! このタイミングで!」
おじさんが感情に任せ、テレビを揺らす。
僕は組み込まれる瞬間が見れずがっかりする。
しかし、しばらくしてからテレビに光が戻る。
「お、なんだつく……じゃ……」
おじさんの顔が赤から青に変わる。
「どしたの? ついたなら見せてよ」
僕はおじさんの肩越しにテレビを見る。
そこには真っ赤な画面だけが映っていた。
「なにこれ? 故障?」
僕は首を傾げるが、おじさんはテレビから手を放し、外を見る。
「……行くぞ」
「へ?」
「レン! すぐ外に出る準備をしろ!」
僕はおじさんの突然の怒鳴り声に驚く。
ド肝を抜かれるというやつだ。
「な、なんで? どこに?」
「理由は後だ。俺の友人がメキシコに住んでる。そこに行くぞ!」
僕はおじさんに圧迫され、付き従い、着替えてからバックにいろいろ詰め込んだ。
おじさんは既に自分の車を出して玄関で待っていた。
僕も家の鍵を閉め、車に乗る。
車に乗るとすぐに車は出発する。
「ねえ、おじさんは何を見たの?」
「……何のことだ?」
おじさんは静かに質問で返す。
「テレビの赤い画面を見てから顔が怖いよ。続きはどうなったの?」
おじさんは車のラジオを付ける。
そして、普段なら音楽が流れてるはずのラジオからニュースが流れる。
『現在、状況の確認が行われています! 皆様は直ちに安全な場所に避難してください!』
避難、地震が起こった訳でもないのになんで非難する必要があるのかわからない。
更に情報が流れる。
『速報です! 各施設にある機人が一斉に暴走を始めている模様、原因は不明ですが、死者も数名確認されております! 繰り返します、いち早く安全な場所へ避難してください!』
「これって……どういう……」
僕は状況が飲み込めてないが、恐怖する。
手を見ると少し震えている、寒さではない。
「防犯用に配置されてた機人の暴走。テレビ画面の赤は血だった。恐らく、兄貴も……」
「そんな、あそこには父さんだけじゃなくて母さんもいるんだよ! 今からでも助けに行こうよ!」
「駄目だ!」
「なんで!? 行かないと父さんと母さんが死んじゃう!」
「それでも駄目だ!」
「おじさんの弱虫!」
「……好きなだけ言え」
おじさんは静かに言い放つとスピードを上げた
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