08-04 ウォーターパークていねプールだ
怜の浴衣姿を見ていると、俺の頭のなかで撮影旅行のあの夜がリフレインしてきた。
しかも、座っている俺に対して、威嚇のために
――やはり、俺は、
「はっはは。磯野のヤツ、千代田に
怜は顔を真っ赤にして浴衣の前を押さえた。
恥ずかしさと怒りが混ざり合った顔で俺をにらむ。
「この
「おまえが前屈みになるのが悪いんだろ」
「けど
ちばちゃんの
「さっきなあ、竹内が嬉しいことを言ってくれていたぞ。なあ、竹内」
「うん。怜って可愛い」
「…………ふぇ!?」
声にならない声を上げた怜。
そのうしろには両手で口をふさぐちばちゃん。
あまりにも予測できるリアクション。
だが俺にとって、このむずがゆくにやけ面を隠しきれなくなるシチュエーションに、一方の千代田怜は
「チェックアウトだから! チェックアウトなんだから!」と、わけのわからない
「なんです? あれ」
誰にむけたでもない俺の疑問に、笑いすぎて
「ああ。一〇時のチェックアウトのことを言ってるんだろうな。「このあとウォーターパークていねプールに寄るんだからさっさと支度しなさいよ!」って意味だと思う」
「なるほどな。……
「ウォーターパークていねプールだ」
「ウォーターパークていねプール……」
「ウォータースライダーのあるウォーターパークていねプールに行きたいらしい」
「ウォータースライダーのあるウォーターパークていねプール……」
「もうお姉ちゃん、千代田さんにあんなことしてダメだよー」
ちばちゃんのあまり本気になりきれない
姉にむけていた呆れ顔を、まるで猫のように微笑みへと変えてちばちゃんは千尋につぶやいた。
「けど、竹内さんがあんなこと言うなんで意外でした」
「そうかなあ」
「なあ竹内、わたしと千代田には可愛いって言ってくれたけど、我が妹はどうなんだ?」
「えっ? すごく可愛いと思うよ」
さらっとのたまいやがった。
だが千尋よ、こうなると女なら誰にでも言いそうでまったく
「あわわ……竹内さん、それダメですから! それはダメなんですから!」
ちばちゃんもまた逃げ出した。
榛名は満足げな様子で俺たちに手を振り、ちばちゃんのあとを追った。
……まったくなんなんだよこの
「まあ、あれだ。竹内よ、榛名の助言どおり、本当に好きな子ができてからその子だけに言ったほうがいいぞ」
千尋は「わかりました」と柳井さんにうなずいて、なにごともなかったかのように荷物を整えだした。
そうそう、手稲プールと言っていたが、つまりは帰り
「じゃあ柳井さん、このあと札幌に戻るんですね」
「それはそうなんだがなあ。千代田が、
……なに怜のやつ、夏のイベントをひたすら詰め込もうとしてるんだよ。
「あの……早く三馬さんと
「その三馬は出張中でな、都合がつくのは明日になるらしいんだ」
「えっ、そうなんですか?」
映研世界とは大幅にスケジュールがちがうもんなんだな。
というわけで、我われオカ研一行は午前十時を待たずにホテルのチェックアウトを済ませ、一路、手稲プールを目指したのであった。
ウォーターなんとか手稲プールに
お
そんな中、まったく泳ぐ気のないサーフパンツ姿の俺。
同じく泳ぐことなど考えていないのであろう、サーフパンツに赤いアロハシャツを
あの奥に見えるの、あれがウォータースライダーか?
めっちゃ並んでるぞ。高所恐怖症の俺があれを楽しむことはまずないので、正直どうでもいいのだが。
いまごろ映研世界では、ここ一連の超常現象の
「わー混んでますねー」といつも通りはしゃぐ竹内千尋。
目の輝きはふだんとは
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