07-06 つまり、霧島榛名は、なにかを隠している?
柳井さんは、しばらくののち電話を切った。
「明日、ちばちゃんが来る前に、三馬に部室まで来てもらうことになった」
「三馬さん、ですか?」
「俺の友達でな。オカ研の世界にもいるようなら、もう一人の俺にも相談するよう言っておいてくれ」
「どんな人なんです?」
「俺の高校時代の同級生で
あれ? 柳井さんと
「明日、三馬が来たら、まずは磯野の大学ノートで文字の浮かび上がり現象を
「大丈夫なんですか?」
「さっき言っただろ、三馬はSF研に出入りしていてこういう話は大好物なんだ。超常現象なんて見たらハマること間違いなしだよ」
「それなら心強いです」
「時空のおっさんについても、言語化を遮断するものの存在について、そういうものを専門にする人間なんかを呼べればいいんだろうが、俺にはあてがなくてな。三馬に相談すれば、
「僕も同感です。磯野が目の前から消えて三〇分後にまた現れたんですから……」
「……あとは、磯野がオカルト研究会の世界に入れ替わった際にやるべきことか」
「霧島榛名から情報を聞き出すってことですね」
「ああ。こっちの世界の霧島榛名が「色の薄い世界」に囚われているとするなら、なんらかの手掛かりがその子にある可能性が高い」
オカ研の榛名。
あいつがなにか知っているなら、俺の身に起こった出来事にたいしてなにかしらリアクションがあってもよかったはずなんだが。
「まあ、それはそれとしてだ。そのオカ研にいる霧島榛名に
「榛名についてですか? ええ、もちろんです」
「その榛名って子の趣味と行動だが、なんだか楽しむことに
「躍起……ですか?」
「人生を楽しんでいるのはそうだと思うんだが、そう思うには
いままでの榛名の顔が、頭の中をかすめていく。
コロコロと表情が変わり、
一方で、
「つまり、霧島榛名は、なにかを隠している?」
「ああ。ただ今回の件とはちがう気はするがな」
「どういうことです?」
「もっと家庭的な事情がその子にはあるんじゃないか?」
「家庭的な……事情?」
「そう思うのもさ、そっちの俺がその子に
ああ、そうか。
柳井さんは、オカ研側の柳井さんの様子を外から見たからこそ、気になったってわけか。
「そんな接し
その子、過去になにかあったんじゃないのか? そっちの俺はそれを
そう思うんだ」
とはいえ、オカ研でのここ一年のあいつの様子を柳井さんの言葉と
「柳井さんに
「わからないだろうよ。俺だって、
「なるほど」
「大丈夫だろうとは思うが、榛名って子、元気そうに見えて実は
「え、そうなんですか? いま言われたみたいな気遣いができる柳井さんのほうが――」
「俺にはつとまらんよ。キャラ的におまえが一番の
「……正直、ピンとこないです」
「あ、おまえには
「だから
「とりあえず頭の
「……わかりました」
オカ研に戻ったら榛名からいろいろと訊き出すことになるだろう。
けれど、あいつも自分自身のこととなると、あまり話したがらないからなあ。ちばちゃんとは別の意味で難易度が高いかもしれん。
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