05-08 あんたちゃんとわかってんの?
「……えーと、サークルの違いと榛名の
「やっぱり違いは微妙なんだね。バタフライ効果、なんて言葉があるけど、いま磯野の
柳井さんが「なるほど」とうなずいた。
「いわゆるバタフライ効果は、言葉通り「
「原因と結果の
「並行世界、レベル3マルチバース。
「なるほど」
「磯野、あんたちゃんとわかってんの?」
なんだ、怜は理解できているのか?
「まったくわからん」
「わたしも」
なんだよおまえもかよ。
「ほかにも丘の上にある駅とか、チューブ状の
「助かります。このままだと、次に映研側のちばちゃんと二人きりになれるチャンスなんていつになるかわかりませんし」
「それなら映研の世界でも味方を作ればいいんじゃないの?」
「え」
「だから、今日ここでやったみたいに、大学ノートに書き込んで文字を浮かびあがらせれば、って……それって、」
怜は言葉を止めた。
俺も気づいた。
柳井さんも竹内千尋も。
「ちばちゃんの……大学ノート」
映研のちばちゃんが持っていた薄汚れた大学ノート、あれは今日俺たちが目の当たりにした超常現象、
――並行世界からの通信が書かれているんじゃないか?
ちばちゃんのノートは、この大学ノートと同じものなのか?
だが、そうだとしたら――
「ちばちゃんの大学ノートは、誰と
千代田怜が答える。
「磯野はもう一人の磯野と通信しているんだから――」
「もう一人のちばちゃんと通信してる?」
「あ、けどこっちのちばちゃんが隠してるとも思えないしなあ」
「怜、磯野のノートの書き込みにあったでしょ、映研の磯野が書き込んでいるって。だから、ちばちゃんの場合も、映研世界の中での並行世界のちばちゃんが互いに書き込んでるんじゃない?」
たしかに千尋の言うとおりなら理屈は通らなくもないが、それで映研に来たってことは――
「つまり、ちばちゃんはなにかを探るために映研に来た?」
「おそらくそうだと思う。なにを調べようとしているのかはわからないけどね。あ、」
「なんだ?」
「磯野、ちばちゃんも磯野とおなじように大学ノートを使って通信してるなら、ちばちゃんも磯野とおなじ状況に置かれているってことになるよね。それって――」
「そうか! 映研世界のちばちゃんも、色の薄い世界に迷い込んだ可能性があるのか」
もしそうなら、八月七日の
「ちばちゃんが俺とおなじ立場だとしたら、色の薄い世界についてほのめかせば、彼女は食いついてくるんじゃないか?」
「ちょっとまて」
「柳井さん、気になることでもあるんですか?」
「むこうのちばちゃんも、超常現象の件で磯野のことを
「あ、たしかに」
あのときの彼女の怯え方は、俺が超常現象の原因だと思っていたのなら
「じゃあ、どうアプローチすればいいですかね」
「千代田が言いかけてただろう。味方を作るんだ」
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