タイムイズ・・・
カゲトモ
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時間と言うものは誰にも等しく与えられるものである。金持ちでも貧乏でも暇でも忙しくても、それは同じだ。この世に生を受けた瞬間から俺達の時間は始まり、死へカウントダウンされていく。
なんて言っているが、簡潔に言うと“人は歳を取ると言うこと”だ。赤ちゃんが成長していくように、俺達だって一年一年歳を取って行くわけで。こんな俺にも幼少期はあったわけで。
「ねー見て見て! これ、可愛いでしょ」
少々、とは言い難い蘭子さんのテンション。来店してそうそうからこのテンションだ。どこかで飲んで来たのだろうが、今日はどうした、偉く機嫌がいいじゃないか。
「幼稚園の時写真よ」
「へぇ」
そう言ってペラリ、と見せたのは家と言うよりは、お屋敷って感じのバックに女の子と男の子が仲良さそうに手を繋いでいる写真。どことなく面影のある顔立ち、艶やかな髪は黒髪でもよく似合っていた。
「これが私でこっちが浩太郎」
「この方が浩太郎さんですか」
垂れ目がどことなく天然さを醸し出しているように見えた。美少年、とまではいかないが可愛らしい少年だ。
「可愛いでしょ」
「そうですね、可愛らしいです」
「この時の浩太郎が一番可愛いのよ」
「これはどこで撮られたんですか」
「本家ね。私の六歳の誕生パーティよ」
さすが、鹿本グループのお嬢様は違う。誕生パーティでドレス着てるし、本家がお城みたいだなぁ。なんて。
「マスター、次はルシアンをお願い。なんだか甘いお酒が飲みたい気分なの」
「ルシアンですか・・・蘭子さん、大丈夫ですか?」
「大丈夫、大丈夫よぉ。だから早く作って」
「・・・かしこまりました」
ルシアンは甘い味わいだが、結構強いカクテルでもある。ザルみたいな蘭子さんと言ってもこれだけ酔っているとさすがに心配だ。
と言ってもオーダーされたからには作るけど。
「なによぉ、水は頼んでないわよ」
「私からのサービスです」
悪酔いしない一番手っ取り早い方法だ。
「あー、美味しい、甘くて美味しぃ~」
「はいはい、ありがとうございます」
「この私が褒めてあげるわよぉ」
「それはそれは光栄です」
大分酔っぱらっている。これは結構なダメージをメンタルに食らった可能性が高い。
「でねでね」
「はい」
「この時なのよぉ、浩太郎が私にプロポーズしてくれたの」
「へぇ、そうでしたか」
「そうなのよ。誕生日プレゼントにお花で作った指輪をくれてね。あ、指輪って言ってもその辺に生えている花を輪っかにしただけなんだけど。それを私にくれてね。蘭子ちゃん、僕のお嫁さんになってね、って、ドゥフフ、そうプロポーズしてくれたの」
ドゥフフって、おま。
「私が、浩太郎君は私の事好き? って訊いたら、うんっ、って言ってくれて、私もうんって返事をして」
「はい」
その後めちゃくちゃ惚気られた。
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