帰国子女ならぬ帰世界子女の陰キャ非モテが自分を変えた話

俺みたいな奴らへ

第1話 まずは昔の俺のことを

この話の紹介文にも書いたが、俺は暗く冴えない高2だった。クラスでも目立たない、笑顔すらなかなか見せられない、いわゆる陰キャと呼ばれるような奴だった。

こんな自分はいやだ、こんな世界は嫌だと思っていたら、突然異世界に行った。

何千億年もの時間を異世界で過ごし、またこちらの世界に帰ってきた。あちらの世界は、こちらの常識とは全く異なる世界。例えば、まず、生物と言われる存在がなかった。いや、正確にはすべての存在が生物だった。有性生殖もないから、異性などの概念もない。言語もない。視覚、聴覚、触覚、味覚、痛覚もない。

とにかく、異世界での経験により、戻ってきたこちらの世界の自分を一新することができた。世界の捉え方、考え方が劇的に変わった。俺は劇的に変わることができた。その内容を共有したくて(特に俺と同じで暗く冴えない奴に)、これを書いている。正直、今でもあれが本当に起こった事実だったのか、わからなくなることがある。でも、俺はあれが実際の体験だったと信じてるし、少なくともあの体験によりこちらの自分が変わったことは事実だ。

実話のつもりだし、小説投稿サイトであるカクヨムに書くのは適当でないのかもしれない。ただ、snsなど他のツールで書くより、ここが一番俺が共有したい奴らと共有しやすいと思ったから、許してくれ。まず、昔の自分のことをごく簡単に話したい。その後、異世界での体験を書いていきたい。

俺は、暗くて目立たない奴だった。とは言っても、多くの人がそうであるように、最初から暗い人間だったわけじゃないと思う。家の中ではよく話したし、小学生の頃は教室でも、笑顔でクラスメイトと過ごした記憶がけっこうある。徐々に俺は自分の殻に閉じこもる奴になっていった。

小学校低学年の頃は、穏やかに、学校の友達と過ごしていた。しかし、小学生でも高学年になると、自我もしっかり芽生えて、クラス内でもリーダー的な奴、明るい奴、ませた奴が出てくる。いじめも、異性を意識する奴も出てくる。 俺はもともとの性格が、強気でぐいぐい前に出て行く性格ではなかったこともあって、静かな生徒だったと思う。それから、弱気な性格もあって、クラスメイトからからかわれるようになった。体育や運動での成功体験を掴むことなく、自分に自信を持つには至らなかったことも大きいと思う。

中学生になって、暗くなった。相手が男でも女でもどうやって人と話したらいいのか分からなくなって、笑顔もなくなった。ただひたすら無口で毎日をやり過ごした。

高校になったら、それがもっとひどくなった。中学の時は、同じ小学校から来たやつらがいたから、暗い俺でもまだ話すこともあった。自宅から遠い高校に進学したこともあり、高校では知り合いがほぼ皆無だった。俺の高校は、わりと進学校だったこともあってか、オタクとかマニア系のやつらも多かったが、そいつらもいじめられるとかは全然なく、クラスの中でも明るく、市民権を得ていた。そんな中、俺はなんの特徴もなく、ひたすら無口の目立たないやつだった。話しかけられもしなければ、からかわれもしなかった。

誰とも喋らないのだから、面白いはずがなく、俺は自分を変えたいと強く思い始めた。違う世界に行きたいと強く夢想するようにもなった。毎日、毎晩、そんなことばかり考えていた。

そのせいなのか、なんなのか今でも分からないが、その頃から不思議な体験をするようになった。

夜寝ていると、いわゆる金縛りのような感覚が始めにきて、その後しばらくすると、何か魂のようなものが自分の体から抜け出そうとする経験を頻繁にした。俺は、金縛りとか幽体離脱とか、そういうものを信じていなかったし、望んでもいなかった。というか、あれが金縛りだったのか、離脱だったのか、今でも分からないが、他に説明する言葉がないから、便宜的にそう書いている。

とにかく、夜中その感覚に襲われると、まず感じたのは恐怖だった。死への恐怖と言っていい。死への恐怖に襲われた後、冴えない生活をしていても、自分は生にまだまだ執着しているのだなと妙な感慨を持ったりした。死への恐怖を感じると同時に、魂が抜けでるような不思議な感覚を、睡眠と非睡眠の狭間で感じて、興味深くもあった。そのままその感覚に抵抗せずにいれば、魂が抜けでると本当に思えた。ちょうど光るゴムのような弾力のあるものが伸びる感じで、何かが離れていこうとする。毎回ぎりぎりと自分が感じるところで、強く離脱に抵抗し、魂のようなものを自分の体にひき戻した。そこで金縛りみたいなものも解け、意識も明瞭になった。

魂の離脱感は数週間に一度くらいの頻度で訪れた。毎回、死への恐怖もあり、自分が限界と感じるところで魂を引き戻していたが、もうどうとでもなれという気持ちと、その先を体験してみたいという気持ちがまさって、抵抗をやめた。離脱感覚を初めて感じてから、半年後くらいだったと思う。

もう予想がついていると思うが、その離脱感覚が、いや、あれは感覚ではなく、離脱そのものだと思うが、それこそが異世界への入り口だったのだ。

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