第28話 「いのちに別状はありません」




私もたぶんそう言われたんだろう。


ああ違う、どうとははっきり言えないけど、両親には事故を起こした、

って言われた気がする。


毎日ニュースとか見てると、よく聞く言葉。

「いのちに別状はありません」


ああよかったねえ。

でも手をケガしましたが、いのちに別状はありませんでした、

足をケガしましたがいのちに別状はありませんでした、

いのちに別状はなかった、でもそのあとはどうなの?


私の事故がもし新聞に取り上げられていたら、

やっぱり「いのちに別状はありませんでした」って書かれるんだろうな、って。


意識不明の重体って言われるなら、ああ大変だなあって思うけど。


脳挫傷負ったからだには、もれなく半身不随がくっついてきますよ。


それでも「いのちに別状はありませんでした」。


うん、いのちは助かったんだよね。

助かっちゃったんだよね、運悪く。


半身不随はどうでもいいのかな。


・・・って言うことを、結構前から思ってました。


今日もニュースでは「いのちに別状はありません」


言ってるほうはいいよなあ。


まれに脳挫傷でも無事生還される人“も”いる。

ただ少ないと思うよ、下手したら即死亡、以上終了になる病気?だから。


だけど・・・複雑なんだよね。

脳挫傷で亡くなった方って、私が心酔してた声優さんが初めてだった。

私もその前後同じ脳挫傷になったけど、なんで私は生きながらえてるんだろう、

って本気で思って、今でも変わらない。


これってなんなんだろうね。

神様がいるとしたら、体のいいいたずらか、悪ふざけだよなあとかね。


その前に神は死んだと言い切った人がいるから小気味いいんだけどさ。

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