図書館で御逢いしましょう

シキ

第1話 ようこそ、弓月図書館へ

あ、今晩は。千秋といいます。

とある噂を知ってますか?

それは半分の月が空で輝く日に何処かへ繋がる扉が現れるらしいんです。

扉の場所は毎回違う場所に現れ、見える人と見えない人がいるそうなんです。

扉の先は地獄に繋がっている、天国に繋がっている、異世界に繋がっているなど、様々な噂があります。

唐突にどうしたと思われるかもしれませんし、察してる人もいると思いますが……

「これ、なのかな……」

それっぽい扉が私の目の前にあります。

しかもその扉、私の住むアパートの入口の横にあります。

なんか「はよ入れ」という幻聴が聴こえてきますが気のせいでしょう。きっと気のせいです。

いえ、気になりますよ?

噂の扉が目の前にあるんですからすごく開けて入ってみたいですよ?

ですが噂が噂なせいで怖いんです。だってどの噂も帰ってこれなさそうなんですもん。

とか言ってますが今ドアノブ握ってたりします。好奇心に負けそうになってます。

好奇心猫を殺すと言いますが好奇心には勝てないと思います私は負けました開けてしまいました。

「しつれーしまーす……」

ドアを開けてみると綺麗な紅葉が目の前にありました。 回りを見てみると小川と小さな池があり、池の端から端を繋ぐ真っ赤な橋があった。 日本庭園のような場所と言えば伝わりやすいでしょうか。

ただ、空が青いです明るいです。 まるで昼間のような明るさです。

「……ここどこ?」

声に出してしまいましたが何処なんでしょうここ。

さっぱりわかりません。

なんとかのアトリエに出てくるような家が一軒建っているのですが好奇心が負けてます。

好奇心には勝てないと思うって言ってただろと言われそうですが好奇心負けましたすみません。

よし、帰りましょう。

……扉がありません。 いえ、さっきまであったんですよ? 無かったら私どうやって此処に来たのかわかりませんし。

どうしましょう、家に行ってみるしかないのですがどうしましょう。

「お客様?」

「ふぁい!」

鈴を転がすような声と言うのでしょうか。少し幼いですがとても澄んだ美しい声でした。

はい、誤魔化せませんよね。 後ろから声をかけられて変な声出ました恥ずかしいです。振り返ってみると白いワンピースを着た小さな女の子がいました。私が150センチの中頃なので140センチくらいでしょうか。 真っ白で癖ひとつない髪が腰まであります。 そして顔なのですがすごくかわいいです。語彙がなくて伝えられませんがすごくかわいいです。

「ふふ、すみません。急に声をかけられたらびっくりしますよね」

微笑みながら言われ、顔から火が出そうです。

「すみません、扉を開けたら此処に繋がっていたのですが不法侵入ですよねすぐ帰ります」

はい、緊張と唐突だったおかげで挙動不審です許してください。

「大丈夫ですよ。此処は色々な人が来ますから。よかったら貴女も寄っていきませんか?」

「何処にですか?」

「私達の家です」

にっこりと笑いながら手を掴まれました。

「……お邪魔でなければ」

振りほどくの無理です。

女の子が扉を開け、

「おにーちゃーん、お客様だよー」

……一気に女の子が幼くなりました。 あ、いえ、雰囲気がという意味ですよ外見は変わってません。

「はーい、いらっしゃいませ」

落ち着いた男性の声が聞こえ、そっちに顔を向けると。

……はい、イケメンです。 身長は170センチくらいでしょうか。 少し青みがかった半袖のワイシャツにスラックスで黒いエプロンを着けています。少し長めの髪を後ろに撫で付け、黒渕の眼鏡をかけています。何よりも顔のパーツの一つ一つがいいです。語彙少なくてすみませんね。

家の中の入ってみるとあきらかに外から見た家と大きさが違います。入って直ぐがカフェのようにテーブル席が三つにカウンター席があり、イケメンさんはカウンターの奥で食器を洗っていました。

此処までは普通と言えば普通ですが、

「何冊あるの?」

それより奥が全て本棚でした。

「うーん、何冊だろ。 お兄ちゃんわかる?」

「うーん、覚えてませんね。内容は覚えているのですが」

私の呟きに同じように首を傾げて考える女の子とイケメンさん。なんかもうかわいいです。

「……此処は何処なんですか?」

私の質問に二人は顔を合わせ、にっこりと笑うと、

「此処は何処でもない場所ですよ。半分の月が昇る日にだけ他の世界の住人が入ることのできる、そんな場所です」

「例外もあるけどね」

「そして私は此処で図書館の管理人をやっています。貴女もお時間があれば読んでいってくださいね」

「此処は図書館なんですか?」

「はい、此処で読んで行ってもいいですし七日間だけなら外にも持ち出せますよ。七日間経つと此処に戻ってきますが」

「じゃあ、少し読んでいってもいいですか?」

私がそう聞くとにっこり笑い、

「もちろんです。 ようこそ、弓月図書館へ」

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