迷宮?
「大丈夫か?」と振り向くリーダーが足早に近づいてくる。
私たちの肩に手を置き屈託のない笑顔を見せる。
その笑顔はこの状況において何の意味もなさない。
私たちは今、出口の見えない、そもそも出口があるのかも知れない洞窟へと迷い込んでしまったのだ。
私は場の空気が悪くなることなど気に留めないで「そんな楽観視ばかりしていても状況は打開できないでしょう」と現実をリーダーに突き付けた。
僅かに強張った表情を見せたリーダーは「それでも前に進まなければ我々は生き残れない。君は皆の士気を下げた。これからの行動に支障をきたす恐れがある。我々のマイナスにしか働かない言動は慎みたまえ!」と早口で捲し立てた。
尖った言葉の全てを私は聞き流した。
「すまない、リーダー。そんなつもりではなかったんだ。皆もすまない」
場を収めるべく頭を下げる。
「そうかそうか。わかってくれたか」と満足気な声が聞こえた。
リーダーは自ら先頭に立ち、皆を鼓舞した。
私はリーダーが声を張り上げ、「大丈夫だ」「頑張れ」と無責任な言葉を発している間、最後尾でじっと考えていた。
何故私たちはこの洞窟に迷い込んだ? どのようにして洞窟に入ったのか? そもそも、ここは洞窟なのだろうか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます