迷宮?

 凹凸おうとつのある壁面に手を当てるとひんやりとした感覚が掌から伝わる。どこからともなく冷気が漂ってくる。


「大丈夫か?」と振り向くリーダーが足早に近づいてくる。

私たちの肩に手を置き屈託のない笑顔を見せる。


 その笑顔はこの状況において何の意味もなさない。


 私たちは今、出口の見えない、そもそも出口があるのかも知れない洞窟へと迷い込んでしまったのだ。


 私は場の空気が悪くなることなど気に留めないで「そんな楽観視ばかりしていても状況は打開できないでしょう」と現実をリーダーに突き付けた。


 僅かに強張った表情を見せたリーダーは「それでも前に進まなければ我々は生き残れない。君は皆の士気を下げた。これからの行動に支障をきたす恐れがある。我々のマイナスにしか働かない言動は慎みたまえ!」と早口で捲し立てた。


 尖った言葉の全てを私は聞き流した。


「すまない、リーダー。そんなつもりではなかったんだ。皆もすまない」


 場を収めるべく頭を下げる。


「そうかそうか。わかってくれたか」と満足気な声が聞こえた。


 リーダーは自ら先頭に立ち、皆を鼓舞した。


 私はリーダーが声を張り上げ、「大丈夫だ」「頑張れ」と無責任な言葉を発している間、最後尾でじっと考えていた。


 何故私たちはこの洞窟に迷い込んだ? どのようにして洞窟に入ったのか? そもそも、ここは洞窟なのだろうか?


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