第290話回遊祭(前編)

 アオイ:ここビバロン王国では1000年に一度、国内最高峰の夫婦山、泉湯山と水蓮山の山頂に住む2匹の鯉『蒼流鯉』『紅流鯉』が山頂から川を下って清流河の中洲を中心に回遊して再会を祝う『回遊祭』というお祭りがあります。前回はノコギリタガメの大群に蒼流鯉が行く手を阻まれるというアクシデントがありましたが無事杏ちゃんの活躍で無事川を下る事が出来たようですね。


 魔界時間 16:00 ビバノン城門前広場


 チョウスケ:各国諸侯の皆々様方、今日は1000年に一度の祭りにお越しくださり誠に有難うございます!今回は6大魔王のザルダジア連邦大統領リーシャ・ザルダジア様とその妹君マナ・ザルダジア様がお越しくださいました!


 国賓一同:お〜!


 カトレア:無事始まったわねん♡


 衛兵:チャトウ宰相閣下!大至急お耳に入れたき事が!


 カトレアに耳打ちする衛兵


 カトレア:なんだって!巫女の持つ2匹の鯉の鱗の光が消えた⁉︎


 衛兵:鱗の光が消えるとなれば・・・


 カトレア:鯉達が別に『乗り手の巫女』を選んだという事じゃない!誰よソレ!片方の乗り手の巫女が変わればもう一方の巫女の資格が無効になるじゃない!


 同時刻 国賓専用観覧席


 アリス:あ!ソフィア姐さん♪


 ソフィア:ちょっと遺跡の調査がひと段落したから息抜きにピエトラと来たんだけどね。あの子こっち来なかったかい?


 アオイ:この方はシルフィード王国の科学大臣ソフィア・クルーガーさん。煙管が似合う美人さんですね♪


 アリス:いんや。こっちには来てないよ?


 ソフィア:て事はあの子トイレに行って迷子になったな。


 ビバノン城地下水道


 ピエトラ:いやぁ〜。参ったね〜。ソフィアお姉様んトコ行くつもりがこんなトコ来ちゃった・・・・って。鯉デカーー!


 地下水道奥から聞き覚えのある声が聞こえる


 杏:ふおーーー!はやいはやーーい♪


 ピエトラ:およ?アレウチの国のお姫様⁉︎それにしてもこの紅い方の鯉何か元気ないね〜。


 助手:博士〜。こっちで合ってるんですか〜?


 カリン:う〜ん。何か違うような・・・・


 アオイ:この子はマナ・ザルダジアちゃんの幼馴染でカリン・イワンカンちゃん。この方もマナちゃんと同じで40歳(人界換算4歳)の割にはしっかりした話し方ですね。それについては今は秘密という事で♪


 助手:あ!博士、アレ!紅流鯉ですよ!


 カリン:う〜ん。何か様子が変ね。


 助手:ここは獣医学博士の出番ですね♪


 カリン:そうね。すみません!


 ピエトラ:ん?何?


 カリン:その紅流鯉ですが・・・ヤバイ!


 助手の後ろに隠れるカリン


 助手:ど、どうしました?


 カリン:彼女、知り合いなの。


 助手:え⁉︎


 ピエトラ:どうしたのかな?お嬢ちゃん。


 助手:は、初めて見る天使に照れてるんですよ。なので私が。私、獣医学博士なのですが。その鯉診せてもらえませんか?


 ピエトラ:え?うん。


 紅流鯉を診て確信するカリン


 助手:どうです?


 小声で話すカリン


 カリン:間違いないわ。紅流鯉特有の低温症ね。多分体内に霙蟻みぞれありがいる。しかも大群で。


 ピエトラ:何か分かった?


 助手:ええ。紅流鯉の体内に霙蟻が大群で居て、低温症に陥っています。おそらく餌と間違えて食べたのが原因かと。


 ピエトラ:治るの?


 助手:方法はあります。霙蟻は高温に弱いので、高温を発する『イフリートの雫』という鉱石さえあれば。紅流鯉の体温を上げる事が出来るのですが・・・アレは天界でしか採れないのです。


 ピエトラ:あるよ。


 助手:え?


 ピエトラ:だ〜か〜ら。『イフリートの雫』あるって。ホラ。ここに♪


 助手:ほ、本当だ。


 ピエトラ:で?コレどうするの?


 助手:あ、はい!それをそのまま紅流鯉に飲ませれば大丈夫です!


 ピエトラ:おーーい!口開けて〜!


 水面から顔を出して大きな口を開ける紅流鯉


 ピエトラ:うおーー!大迫力!


 助手:今です!


 ピエトラ:ホイさ!


 紅流鯉の口めがけてイフリートの雫を投げるピエトラそれを飲み込む紅流鯉


 ピエトラ:おおーー!ピンク色の鱗が真っ赤になったー♪


 助手:低温症特有のピンク色の鱗が真っ赤に染まったという事はもう大丈夫です!


 ピエトラ:良かったな〜お前♪


 紅流鯉がピエトラに鱗を差し出す


 ピエトラ:でっけ〜鱗だ!くれるの?あんがとさん♪


 鱗を受け取った瞬間ピエトラを頭に乗せる紅流鯉


 ピエトラ:お〜!絶景〜哉、絶景哉〜♪


 杏:ピエトラしゃん!いくです!


 ピエトラ:応よ!


 後編へ続く・・・

















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る