ブルー・クリーム・ソーダ








ホイップクリームみたいな入道雲が、青い青い夏空を流れて行く。

隠れていた太陽が顔を出して、空の青を、入道雲の白をさらに鮮やかに輝かせる。

ガンガン頭に響く蝉の鳴き声を遮断したくて、右耳と右頰を机につけた。

ひんやりした机の感触が汗ばんだ体に気持ちよくて、ゆっくりゆっくり瞼を閉じる。

窓から入ってくる風が頬をくすぐる。

暑くて、冷たくて。

気持ち悪くて、気持ちいい。

例えば、そうだ。

夏は、クリームソーダみたいだ。

緑色のメロンソーダじゃない、真っ青なブルーソーダにクリーム色のアイスを乗せた、爽やかな色のクリームソーダ。

甘くて、ぱちぱち弾けて、冷たくて、ドロドロして、青くて、爽やかな。

まるで、彼みたいなクリームソーダ。







(…クリームソーダ、飲みたいなぁ…。)




瞼を閉じて、心地よい夏風を浴びながらそんなことを考える。

夏みたいな彼を、グラスに閉じ込めたような青い青いクリームソーダ。

じゃあ私は、何だろう?

クリームソーダに乗ってる、真っ赤なサクランボかな?

彼と一緒にいると、恥ずかしくて堪らなくて、すぐに顔が赤くなっちゃうから_…









「…い、…おい!」

「えっ!?」

揺さぶられる感覚に驚いて顔を上げると、鼻先が付きそうなほどの距離に彼の顔。

その整ったパーツにくらりとしながら窓の外を見ると、青い空は無くなり、赤紫色が遠くまで広がっていた。

「っえっ、わ、私寝てた!?やばい!ごめん!!もう少し早く起こしてくれてもよかったのに…。」

言ってから、あれ、ちょっとこの言い方嫌味っぽかったかも…?と後悔する。

だけど目の前の彼はそんなの気にする様子も見せずにニコリと笑った。

「本当はもう少し寝かせてあげたかったんだけど、暗くなったら危ないから…。」

きゅ、と胸が苦しくなる。

喉の奥が熱くなる。

顔中に熱がこもる。

この人は、ズルい。

爽やかなソーダみたいな笑顔で、こっちをサクランボにする。

甘い甘いアイスクリームが溶けてしまいそうなくらいの熱を、与えてくる。

でも、サクランボな私はクリームソーダな彼から離れられない。

だって、クリームソーダにサクランボはつきものだから。





昼間の熱を十分に吸収したコンクリートの上を歩きながら、私は隣を歩く彼を見上げる。

「ねぇ、提案なんだけど。」

「ん?なに?」

そして、彼の顔を見て笑いながら言うんだ。










「今度、クリームソーダ、飲みに行こう。」













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女の子はね。 らむね水 @ramune_sui97

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