11―28

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「意外と時間掛かったな?」


 下に着いたところで、カーラが話し掛けてきた。


「穴が狭いんですよ」

「おっ、その言い方。何かエロくねぇか?」

「カーラは、ここに置き去りにしたほうがいいですわ……」

「そうだな」


 オヤジギャグを飛ばすカーラにレティシアとレリアが冷たい視線を送っている。


「オメーらは堅すぎるんだよ」

「次は、わたくしを運んでくださいな」


 カーラを無視したレティシアが白い光に包まれ、全身鎧から薄いブルーのスリップ姿となった。

 僕は、彼女の背後に回り込み、腋の下に手を入れ羽交い締めにする。


 セミロングの髪型のレティシアは、クリスティーナのように髪を括っていないのでまとまりがなく、僕の顔に貼り付く感じだ。

 シャンプーの香りに頭がクラクラするような気がした。


「この体勢は、落ち着きませんわ」

「少しの間だから、我慢して……」

「分かりましたわ」

「じゃあ、行くよ?」

「ええ、お願いしますわ」


 僕は、レティシアを抱えたまま【レビテート】で上昇して、天井に空いた穴の中へ移動した。


わたくしは、どうすれば、良いのかしら?」


 横穴の近くに着くと、レティシアが僕に質問してきた。

 先ほどの経験から、もっと効率良く彼女を横穴へ入れる方法がないだろうかと考える。


『空中で空気椅子は、ちょっと体勢が悪いよな……』


【レビテート】の魔術は、術者の足の裏に作用するわけではなく、そこに床があるかのように作用する魔法だ。そのため、空中で寝ころぶことも可能だった。


「レティ、このまま正座するから、僕の膝の上に跨ってくれる?」

「分かりましたわ」


 僕は膝を前に出して空中で正座をした。

 レティシアは、足を開いて僕の膝の上に跨る。

 クリスティーナのときのような空気椅子よりは、安定していて据わりがよい。

 空気椅子だと、背後に壁が無ければ、後ろに転倒していたと思う。


「じゃあ、腕を解くよ?」

「ええ……」


 クリスティーナのときは、背後の壁に背中をくっつけていたので膝の前に少し空間ができてしまい、そこから落ちる危険があったが、今回は前寄りの位置で正座しているため、手を放しても落ちることはないだろう。


「横穴に身体を入れて」

「行きますわ」


 横穴の床の高さは、レティシアの胸の下辺りだ。

 彼女は、上半身を前に倒して横穴に二の腕を置いた。


「足を掴んで一気に穴の中へ送り込もうと思うんだけど、いいかな?」

「お願いしますわ」

「じゃあ、膝を曲げて」

「こうですの?」


 レティシアが僕の膝に跨った状態で膝を曲げた。

 僕は、両手で彼女の足首の辺りを掴んで持ち上げる。


「きゃあっ!」

「ぶっ……」


 クリスティーナのときよりも横穴との距離が近かったため、レティシアのお尻が僕の顔にぶつかった。

 そのまま、もぞもぞと顔面に押しつけられる。下着越しに感じる温かくて柔らかい感触と女性らしい体臭に頭がクラクラする。


「ユーイチィー! そこは、駄目ですぅー!」


 レティシアが悶えているが、このままでは埒があかないので、掴んだ足首を穴の中へ押し込んだ。


「ああんっ! 酷いですわぁ……」

「ごめん……」

「こんな乱暴にしなくても……」

「一気に放り込む作戦は失敗だったね」

「そんなことありませんわ」


 四つん這いでお尻を高く上げたレティシアが横穴の中で振り返ってそう言った。

 穴が狭いので顔は彼女のお尻と太ももに隠れて見えない。

 恥ずかしい格好なのに彼女が意識していないのは、穴の中が暗いからだろう。

 彼女からすれば、頭上に設置している【ライト】の光源が届かないところは暗闇のはずだ。

 僕がどういう光景を見ているか想像していないのだと思われた。


「じゃあ、僕は下に降ります」

「ありがとうございましたわ」


 僕は、【戦闘モード】を一瞬起動してから【レビテート】で下降した。


「楽しそうなことやってたみてぇじゃねーか?」


 下に着くと早速カーラにからかわれた。

【トゥルーサイト】が使えないカーラには見えなかっただろうけど、声は聞こえていたようだ。


「わざとじゃないよ?」

「わーってるって」

「運び方を変えたほうがいいかも……」

「何でだよ?」

「穴が狭くてお尻が顔に当たったりするから……」

「それくらい、いいじゃねーか」

「そうですわ」


 グレースもカーラに同意した。


「あたしもユーイチに運んでもらおうかしら……」

「そうだな」

「おっ、レリアまでそんなことを言うようになるとはなぁ?」


 カーラがレリアを見ながらニヤリと笑った。


「なっ、何がおかしい!?」

「男嫌いのレリアもユーイチにはメロメロだなって……」

「別にメロメロになどなっていない!」


 このままでは、話が進まないので、僕は次に運ぶメンバーを尋ねた。


「次は誰を運べば? アリシアとレリアがカーラとグレースさんを運んでくれると楽なんだけど?」

「何言ってんだよ? 次はオレの番だぜ」


 カーラがそう言って、白い光に包まれ全裸になった。


「ちょっ、何で裸になるんですか!?」


 僕は、顔を背けながら抗議した。


「オイオイ、その態度はちょっと傷つくぞ……?」

「服を着てください。だいたい、カーラの装備なら別に脱がなくてもいいでしょ?」

「革鎧と言っても邪魔になるだろ?」

「それでも裸はありえませんよ」

「ちっ、しゃーねーな」


 その言葉を聞いて、カーラの方を見てみると彼女は黒い下着姿になっていた。前に僕が渡した『魔布の黒ブラジャー』と『魔布の黒Tバックパンティー』だ。


「これならいいだろ?」

「できれば、上に何か着てほしいんだけど……?」

「あいつらだって、似たようなもんだっただろ?」


 クリスティーナとレティシアも下着は丸見えだったので、あまり変わらないのは確かだ。


「もう、仕方ないなぁ……」


 僕は、観念してカーラの背後に回り込んで、彼女を羽交い締めにする。

 そして、天井に空いた穴に向かって【レビテート】で上昇した。


『どうするかな?』


 横穴付近に着いた僕は、どうやってカーラを横穴に入れようかと思案する。

 クリスティーナに行った方法は、時間がかかるし、危ない光景を見てしまう。しかし、レティシアに行った方法だと、時間は掛からないが、かなり危険な体勢になるのだ。

 穴の天井ギリギリまで登り、彼女たちを足から穴に差し入れるのが一番良いのだが、穴に入った後に移動が困難になるだろう。

 この狭い横穴の中では、方向転換することができそうにないからだ。

 小柄なカチューシャなら可能だと思うが、カーラには無理そうだった。


「ユーイチ、どうしたんだよ?」

「ああ、どうやってカーラを中に入れようかと考えてた」

「レティと同じでいいじゃねーか? オレの尻にさわれて役得だろ?」

「時間も無いし、そうしますか……」

「おぅ」

「じゃあ、足を開いてください」

「分かったぜ」


 僕は、空中で膝を下ろして正座する。

 股を広げたカーラが僕の膝の上に跨った。

 彼女が横穴に入りやすい位置まで少し上昇する。

 そして、羽交い締めにしていた腕を解いた。


「膝を曲げて」

「こうか?」


 カーラの左右の足首をそれぞれの手で掴んだ。


「じゃあ、横穴に上半身を入れて」

「分かったぜ」


 カーラが上半身を前に出して横穴に手を突いた。


「じゃあ、一気に中に入れるよ」

「ちょ! 待てよ!」

「何が?」

「そんなに慌てなくてもいいだろ?」

「時間が勿体ないよ……」

「ちっとはオレの身体を楽しめよ……」

「また、今度ね」

「ちょ、おまっ!」


 僕は、カーラの足首を持ち上げた。


「ぶっ」


 カーラのお尻が僕の顔に当たったが、気にせず横穴に押し込む。


「おわっ!?」


 横穴に押し込まれたカーラが声を上げた。


「たたた……ユーイチ、乱暴すぎだぜ……」


 横穴の中で四つん這いになったカーラが恨めしそうにそう言った。


「じゃあ、奥で待ってて」


 僕は、そう言って、彼女のほうを見ないようにしながら【レビテート】で下降する。


「次は、あたくしですわね」


 下に到着すると、グレースがそう言って、白い光に包まれて下着姿となった。

 カーラと同じ格好だ。


「グレースさん、寝間着はどうしたんですか?」


 グレースには、『魔布のネグリジェ』を渡してあったはずだ。


「移動の邪魔になりますわ」


 確かにそうかもしれない。

 彼女のネグリジェは、少し裾が長いので横穴を這って移動するときに邪魔になるだろう。装備なので、破れたり、生地が痛んだりすることはないのだが。


「分かりました」


 僕は、グレースの背後に回り込み、彼女の脇のしたに手を入れて羽交い締めにした。


 ――むにゅっ……


『や、やわらかい……』


 筋肉質な他の3人に比べて、グレースの身体は柔らかかった。

 長くウェーブした髪が眼前に広がり、その髪の匂いを嗅いでいると頭がクラクラしてくる。


「行きます」

「よろしくお願いしますわ」


 天井の穴に向け、【レビテート】で上昇していく。

 グレースは、僕と身長が同じくらいなので、柔らかく大きなお尻が僕の股間に密着している。


『や、やばい……この人、フェロモンが凄すぎだろ……』


 グレースの色気により、横穴に着く前に【戦闘モード】を起動する必要があった。


 ――ザザッ……


「あんっ」


 グレースの身体が壁に引っ掛かった。

 僕は、慌てて【レビテート】による上昇を止める。


「大丈夫ですか?」

「ええ、少し胸がこすれただけですわ」


 グレースの大きなおっぱいが縦穴の壁に擦れたようだ。

 僕は、少し後ろに下がった。

 いくらグレースの胸が大きいとはいえ、背中からバストトップまでの距離がカーラたちとそんなに違うとは思えないので、僕が位置取りを間違ったということだろう。


「真っ暗ですわ」


 グレースは、【ライト】の光源を自分に設置してはいなかったのだ。

 彼女の向こう側に柔らかい光が発生した。

 どうやら、【ライト】の魔術を自分に設置したようだ。

 頭の上ではなく、胸元の辺りに設置したのだろう。

【ライト】の魔術は、視線で設置場所を決定する必要があるため、見えない場所に設置することはできないのだ。

 頭上に設置する場合には、他の人に【ライト】の魔術を使ってもらう必要がある。


「じゃあ、僕がこのまま正座をしますので、膝の上に跨ってください」

「ええ、分かりましたわ」


 僕は、空中で正座をする。

 グレースは、それに合わせて足を開き、僕の膝に跨った。


『うわぁ……やわらかい……』


 ここでもグレースの身体の柔らかさを感じた。


『やっぱり、この人は危険だ……』


「ダイナマイトボディ」という単語が僕の脳裏に浮かんだ。


「足首を持ち上げるので膝を曲げてください」

「こうですか?」


 空中で正座をする僕の膝の上に跨ったグレースが膝を曲げた。

 僕は、彼女の足首を掴んだ。


「じゃあ、横穴に送り込みます。いいですか?」

「ユーイチくん、やさしくしてくださいませ……」

「…………」


 僕は、それには答えず、グレースの足首を持ち上げた。


「いやぁん!」

「わぷっ……」


 グレースの大きなお尻が僕の顔面に押しつけられた。

 凄く柔らかく、女性らしい匂いがする。


『こ、これは……マジでヤバイ……』


 僕は、このままいつまでも彼女の柔らかい身体を感じていたかったが、その甘い誘惑に打ち勝ち、足首を横穴に押し込んだ。


「ああんっ! 酷いですわぁ……」


 グレースは、着地に失敗したようで、上半身を横穴の床に突っ伏した状態で腰だけ高く持ち上げている。

 凄くエッチな格好だ。

 僕は、【戦闘モード】を一瞬だけ起動して冷静になった。


「じゃあ、奥へ移動してください」

「……もう、ユーイチくんのイジワル……」


 僕は、グレースの言葉を聞き流して【レビテート】で下降する。


 下に着くと青い下着姿のアリシアが待っていた。


「次は、あたしの番ね。ユーイチ、上まで届けてよ」

「アリシアは、【レビテート】が使えるでしょ?」

「そんなぁ……彼女たちだけズルイわ」

「時間が勿体ないから早く行って」

「もう、仕方ないわね……」


 最初から本気ではなかったのか、アリシアは意外とあっさり引いて、【レビテート】で空中へ舞い上がった。

 天井に空いた穴へ向かって上昇していく。


「では、わたしも行こう」


 そう言って、レリアが白い光に包まれた。

 そして、黒いボディスーツ姿となる。

 彼女は、ボディスーツの下に下着を身に着けていなかった。

 ボディスーツは、チューブトップなので、ブラの肩紐が見えるし、ハイレグなデザインなので、パンティもはみ出すからだろう。

 しかし、カーラが装備しているような革鎧とは違い、インナーなので上に装備を身に着けていれば見えない部分だ。


「良かったら、僕が先に行きましょうか?」


 レリアは、後ろから男がついてくるのを嫌がるかと思い、そう提案してみた。


「いや、問題ない。殿しんがりは強い者が務めるものだ」

「分かりました」

「では、行かせてもらおう」


 青白い【ウィル・オー・ウィスプ】の光源を従えたレリアが浮上する。

 そして、天井の穴に向かって上昇していった。

 彼女は、華奢な体格をしているので、細長い体つきに見える。

 天井の穴にも余裕をもって入ることができそうだ。


『レリアは、装備を外す必要なかったんじゃ……?』


 僕がそんなことを考えている間にレリアは、天井の穴へ入っていった。


 ――僕も行こう……。


【フライ】


 僕は、【フライ】の魔術を起動して、天井に空いた穴へ向かって飛行した――。


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