6―30

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 レイコ、ユウコ、ユキの3人を見送った僕は、『ロッジ』の扉を帰還させた。

 僕は席に座り、目を閉じる。


【調剤】


 初めて【調剤】のスキルを使ってみる。

【調剤】のウィンドウには、『作成』『変更』『調合』『レシピから作成』というメニューが表示された。


 とりあえず、『作成』を行う。

『作成したい薬剤をイメージしてください』と表示された。

 ローションをイメージする。原料は、何だろう? 海藻類かいそうるいだろうか?

 人体に無害で一般人が飲んでも大丈夫な成分でぬるぬるするものをイメージする。

 1回のプレイで使い切るか、少し余る程度の量にして、自動洗浄機能で消え去るようなものがいいだろう。

 イメージ映像を見る限りでは、容器もイメージで製造できるようだ。ガラスだと割れたりして危ないので、プラスチック系の容器をイメージする。この世界には、プラスチックのような素材は存在しないだろうけど、イメージすれば作り出せる可能性が高い。

 キャップは、取り外してねじ込むタイプよりもパカッと開いて出せるもののほうがいいだろう。それどころか、キャップ自体が必要ではないかもしれない。倒してもそれほど漏れないだろうし。

 量は、300CCくらいにしよう。どれくらいが適量か分からないけど、それだけあれば問題ないだろう。

 少し柔らかい樹脂系の素材で作られた細長い円筒形で頭の部分が半円状に丸くなっており、その中心に穴が空いている容器をイメージする。その容器を逆さ向けて容器を少し絞るとローションが出てくる仕組みだ。シンプルでいいだろう。


 ――容器の太さは、缶コーヒーの缶くらいでいいだろうか?


 誰かに相談してみようと、僕は目を開けた。


「ミチコさん」


 僕は、ミチコを呼んだ。理知的で娼婦の経験もあるミチコなら良いアドバイスをくれるのではないかと思ったのだ。


「はい、ご主人様」


 ミチコにマットとローションを使ったプレイについて説明してから、ローションの容器をこれでいいか聞いてみた。


「……お客様によっては、その容器を娼婦に使うかもしれませんわね」

「使うって……」


 僕はその用途に思い当たって赤面する……。


 となると……。容器は、そうやって使える程度の強度は確保しておく必要がある。ただ、缶コーヒーサイズではちょっと太すぎるだろう。小柄な者たちが可哀想なので、少し細くして、頭の方にイボイボを付けてみる。


『完全に大人の玩具っぽくなってしまった……』


[レシピ作成]


 このポーションの名前は、『ローション』にした。


【工房】→『アイテム作成』


 次にマットを作成する。娼館には、魔法建築物の据え付けにするつもりだが、同じものを作ってテストしてみよう。

 マットの大きさは、長さが3メートル、幅が1.5メートルくらいでいいだろう。厚みは30センチメートルといったところか。中はエアにするか、いや、水を入れてウォーターベッドっぽくしよう。柔らかいゴムっぽい素材をイメージする。マジックアイテムなので、壊れないのがいい。

 色はどうしよう? 趣味が悪いけど用途的にピンクにしておこう。

 魔法石を1個追加して、作成してみた。アイテムの名前は、『ラブマット』にした。


『599個の「ラブマット」が作成されました』


 と表示された。


『なんでそんなに?』


 おそらく、魔法石1個でそれだけ作れてしまうということだろう。

 一個当たり、約16.7ゴールドというところだ。

 娼婦に配るか? 娼館の据え付け装備とせず、各娼婦が自分で出す方式にしてもいい。しかし、いちいち配るのが、今はいいが、後々面倒になるだろう。レイコに渡しておくという手もあるが。

 まぁ、娼館の据え付けにする一方で、使い魔たちにも配るということでいいだろう。

 練習できるようにしておけばいいし。

 早速試してみようと、目を開けた。


 僕は、立ち上がり『ハーレム』の扉へ向かう。


「じゃあ、ちょっと新しいアイテムを作ったから、全員実験に付き合って」

「「はいっ!」」


『ハーレム』の扉を開けて、中へ入り大浴場の引き戸を開けて中へ入った。


『装備8』換装


 裸になって、大浴場の洗い場にマットを召喚する。


『ラブマット』


【調剤】→『レシピからポーションを作成』


―――――――――――――――――――――――――――――


 ・ローション・・・0.11ゴールド


―――――――――――――――――――――――――――――


『ローション』を右手の中に召喚する。


 振り返ると裸の使い魔たちがピンクのマットを興味深げに見ていた。


『誰にしよう?』


 フェリアが適任だけど、彼女は娼婦の仕事はしないので、この場で指名するのは違う気がする。


「サクラコさん」


 僕は、迷ったがサクラコを指名した。


「はい、ご主人様」


『ローション』を渡す。


「僕がこのマットに寝るので、その『ローション』を身体に塗って、僕に奉仕してください」

「あぁ……分かりましたわぁ……」


 僕は、『ラブマット』に仰向けに寝ころんだ。

 使い魔たちの熱い視線を感じて、かなり恥ずかしかった。

 サクラコは、説明しなくても『ローション』の使い方が分かったようで、逆さにして手に出して身体に塗りつけている。


 そして、僕の上にまたがり奉仕を始めた――。


 ◇ ◇ ◇


 僕は、レイコのパーティメンバーや元村人を含む娼婦希望者全員にローションプレイをさせた。

 このプレイは、思ったよりも性的な興奮はせず、どちらかと言えば眠くなるような気持ち良さだった。

 それでも何度か発情を止めるために【戦闘モード】を起動する必要はあったが。


 そして、『ラブマット』と『ローション』のレシピ、料理のレシピと魔法石1個を『トレード』で渡した。

念のため直属の使い魔たちにもレシピを渡しておいた。【調剤】や【料理】のスキルを持っていない使い魔には、フェリアやフェリス、ルート・ドライアード、ルート・ニンフに必要な【魔術刻印】を刻ませた。

 どのみち、トロール退治後には刻む予定なので、ついでにやっておいたのだ。スズカとタカコ、ユウコとユキには、後で刻む必要があるだろう。ユウコは、既にほとんどの【刻印】を持っているのでそれほど刻まなくてもいいはずだ。


 ちなみに、娼婦たちには、僕たちのように複数の【刻印】は刻んでいない。戦闘をすることをあまり想定していないので、殆どの【魔術刻印】を一つずつだ。召喚魔法の【サモン】は、二つ刻むように指示した。八つは無駄だろうと思ったのだ。かといって、一つだと将来的に少ないかもしれない。ただ、【装備】の【刻印】だけは8個刻むよう指示した。また、使い魔になるのが早かったレイコのパーティメンバーと村人たちには、既に【サモン】を8個刻んであった。


『現在時刻』


 現在の時刻は、【12:37】だった。


 僕は、ローションでぬるぬるになっているマットから出て、『ハーレム』の扉を一瞬帰還させて自動清掃機能を発動させた。

 体中に付いていたローションや水滴、体液、それに床に落ちていた『ローション』の空きボトルなどが全て消え去った。

 湯船に入って風呂につかる。

 僕に続いて湯船に入ってきた使い魔たちは、湯船のなかで立ったままだ。


「座って」

「「はい」」


 ――ザバーッ


 使い魔たちが座る水音が大浴場に響いた。


「ご主人様」


 フェリアが僕を呼んだ。


「なに?」

わたくしたちもマットプレイでご主人様にご奉仕したいのですが?」

「そうですわ、ご主人サマ。わたくし、オアズケを喰らった犬のような気分ですわ」

「じゃあ、後でね」


 ――そういえば、ヨウコが外に出たがっていたはず。まだ時間はいいのだろうか?


「ヨウコさん、時間はいいのですか?」

「ご主人様、あたしにそんな丁寧な言葉づかいは不要ですよ。あたしは、あなたの奴隷なんですから」

「分かった。で、時間はいいの?」

「えーっと、今何時なのですか?」

「昼の1時前だけど。『現在時刻』って念じたら時間は表示されるよ」

「あっ、ホントだ」

「視界の隅に小さく表示もできるから」

「なるほど~。そうですね。そろそろ出ようかな」

「じゃあ、風呂から上がったら、『ロッジ』の扉を召喚するね」

「お願いします。ご主人様」


 10分くらい、湯船の中でくつろいだ後、僕は立ち上がった。


 ――ザバーッ!


 使い魔たちもそれを見て立ち上がる。

 周囲を囲まれていて脱出できない。

 正面にイリーナとその両脇にカオリ、サユリが立っている。

 イリーナとカオリの間を抜けようとする。


「あるじどのぉ……」


 近づくとイリーナが僕に抱きついた。


「うぷっ」


 イリーナは、背が高いので、僕の頭を持って抱きつかれると顔が胸に埋もれてしまう。


「ちょっ、何を!?」

主殿あるじどのは、拙者を抱きに来たのではないでござるか?」

「いやいや、さっきの会話聞いてなかったの? このまま『ハーレム』から出てヨウコを外に出すつもりだよ」

「そうでござったか……拙者の身体を見ながら近づいてこられたので、てっきり……」


『いや、そりゃ見てたけどさ……大きいから……』


 僕は、イリーナを引きはがす。


「もう、イリーナ。いい加減にしなさいな」


 カオリが僕の体を後ろから抱き止めて、出口のほうへ向けてくれた。

 背中の柔らかい感触にドギマギしながら礼を言う。


「……ありがと」


 僕は、湯船から出て大浴場の出口へ歩いていく。


『装備6』換装


 引き戸を開けて、廊下に出る。


『そういえば、向かいの寝室は使ったことがないな』


 刻印を刻んだ身体は睡眠を必要としないので、あまり寝室は必要ないのだ。


 廊下を歩いて、突き当たりの『ハーレム』の扉を開けて、『ロッジ』に出る。

 入り口付近まで移動して、後ろを見ると案の定、全員が裸で『ロッジ』に入ってくる。

 フェリアたちは、【エアプロテクション】を発動しているのか、水滴が付いていないが、最近、使い魔になった者たちの身体はまだ濡れていた。


「みんな服を着て」

「「はいっ」」


 使い魔たちは、白い光に包まれて、多くが白無垢しろむく姿となった。

 僕は、『ロッジ』の扉を召喚した。


「ご主人様、いってきますね」

「ああ、いってらっしゃい」


 ヨウコが『ロッジ』から外へ出た。

 扉が閉まると僕は扉を帰還させた。


「じゃあ、昼食にしようか」

「「はいっ」」

「全員に【料理】スキルを刻印したし、レシピも渡したから、好きな料理を自分で召喚して食べて」

「「はいっ」」


 僕は、自分の席に座った。


「ご主人様、給仕いたします」


 メイド服姿のフェリアがそう申し出た。


「じゃあ、よろしく」


 フェリアは、前と同じようにコース料理を一品ずつ出して給仕してくれた――。


 ◇ ◇ ◇


 僕は、食事を終えた後、新しい魔法を作ることにした。

 一度しか使わないであろう『組合』から買った土地に巨大な穴を掘る魔法だ。


【魔術作成】→『改造』


【グレイブピット】をベースにする。

 50メートル×20メートルのエリアを深さ5メートルで掘る。穴の底は、傾きの無い水平――レベル――の取れた、真っ平らな状態になるよう設定した。

 ただ、それだけの土砂は必要ないので、48メートル×18メートル×5メートル分の土砂を自動清掃機能で除去するものにした。

 プールのような巨大な穴を掘って、中に【工房】で作った娼館を現出させて、隙間すきまを土砂で埋めるという計画だ。

 魔術の規模からして、かなりの魔力を消費するのではないかと思う。


[レシピ作成]


 魔法名は、【グレート・ピット】とした。

 魔法石のストックはあるので、続けて『グレート・ピットの刻印石』を1個作成する。


【工房】→『装備作成』


『グレート・ピットの刻印石』を使って指輪を作成する。

 指輪の名前は、『グレート・ピットの指輪』とした。


『装備2』


―――――――――――――――――――――――――――――


 武器:アダマンタイトの打刀+100

 服:魔布のローブ+100

 脚:魔布のスラックス+10

 腕輪:アダマンタイトの腕輪+10

 足:竜革のブーツ+10

 背中:魔布の隠密クローク+10

 下着:魔布のトランクス+10

 左手人差し指:グレート・ピットの指輪

 左手中指:ストーンフロアの指輪

 左手薬指:回復の指輪


―――――――――――――――――――――――――――――


『装備2』の左手人差し指に装備した。

 娼館を建てる時にしか使わないと思うが、大きな穴が必要なときに使えるかもしれないので『装備2』に登録しておく。


『夕方まで時間があるな……』


 僕は立ち上がって、『ハーレム』の扉の前に移動する。


「じゃあ、ミナたちが『ユミコの酒場』へ行く時間になるまで、マットプレイの練習をしよう」

「「はいっ!」」


 使い魔たちが大声で返事をした。

 僕は『ハーレム』の扉を開いて、中へ入る。そして、廊下を歩き大浴場の引き戸を開けた。


『装備8換装』


 中に入って、裸になり、洗い場の一番奥に行く。

 振り返ると、裸の使い魔たちが並んでいた。


「使い魔同士で2~3人のチームを組むんだ。そして、娼婦役と客役を交代で行いマットプレイの練習をするように」

「「はいっ」」

「チームは、同じ系統で行うといいだろう。例えば、イリーナのチームなら、イリーナ・アザミ・マドカで組めばいい」

「了解でござる」

「はい、ご主人様」

「分かりました」


『ラブマット』


 僕は、自分のマットを召喚して、フェリアたちを呼ぶ。


「じゃあ、フェリアたちは、こっちへ来て」

「畏まりました」

「御意のままに」

「フフフ……。このときを心待ちにしておりましたわ」

「ええ、本当に」


 そして、フェリアに言付ける。


「フェリア、夕方の5時前になったら教えてくれ」

「畏まりました」


 そして、僕はフェリアたちからの奉仕を受けた――。


―――――――――――――――――――――――――――――

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