6―16

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『トイレ』から出た僕は、次に何をしようかと考える。


『そういえば、ニンフ1とニンフ2を放置したままだな……』


『密談部屋6』『密談部屋7』


『トイレ』と反対側の部屋のすみに密談部屋の扉を召喚した。

 扉を同時に開けて、中にいるニンフたちに手招きをする。


二人のニンフが中から出て来た。


「旦那さま……」

「旦那さま……」


 左右からステレオのように二人のニンフが言葉を発した。


「待たせたね」


 二人のニンフは、黒いフード付の外套がいとうを着た同じ外見なので見分けが付かない。

 便宜上、『密談部屋6・裏口』を持っている方をニンフ1、『密談部屋7・裏口』を持っている方をニンフ2と呼称しているのだ。


『密談部屋6』から出て来たニンフに話しかける。


「君のことは『ニンフ1』と呼ぶね」

「分かった」

「君は、『ニンフ2』だ」

「ええ、旦那さま」


 僕は、密談部屋を戻して、元の席に反対向きに座った。

 ニンフたちは、付いてきて僕の前に並んで立った。


『密偵らしい恰好かっこうをさせようか?』


 僕の直属の使い魔ではないので、直接装備を変更することはできないが、装備を渡して着替えさせることはできる。

 僕は目を閉じて、密偵に相応しいくノ一風の装備を作り始めた。


【工房】→『装備作成』


 実用性が高く、見栄えのする衣装にしなければいけないだろう。

 まずは、足元から考えよう。

 靴は、忍者なら足袋だろうか?

 素材は、ドラゴンスキンですねの途中まで覆うタイプにする。

 それと、蹴りを入れたり、攻撃を受けたりするために脛当てを装備させよう。


 ・素材にドラゴンスキンを使った地下足袋じかたび

 ・素材にアダマンタイトを使ったグリーブ


 次に脚だが、フィクションでは、くノ一は全身網タイツというイメージだが、あれは鎖帷子くさりかたびらを簡略化したイメージなのだろうか?

 そのイメージにあやかって、レオタードなどを着せるのもいいが、個人的に太ももは、生足が見えてほしいところだ。

 というわけで、メイド服を作ったときの『黒のストッキング&ガーターベルト』を採用することにした。


 ・黒のストッキング&ガーターベルト


 次は胴体だが、下着はどうするか?

 下着代わりのボディスーツを着用させるのが無難だが、面白味に欠けるので、村人たちに作った『魔布の黒ブラジャー』、『魔布の黒Tバックパンティー』がいいだろう。

 鎧下の鎖帷子も作ろう。チェインメイルのようなものではなく、網タイツのような黒い鎖帷子にする。

 そして、上着だ。これは、丈が太ももの真ん中くらいの着物で帯の代わりに武器を吊るすことができるベルトを装着させたものにしよう。そでは二の腕の辺りまでとする。

 そして、すその両側には、動きやすいようにスリットを入れる。これで、スリットの入ったミニスカートのようになるだろう。


 ・魔布の黒ブラジャー

 ・魔布の黒Tバックパンティー

 ・素材にアダマンタイトを使った鎖帷子

 ・素材にマジックリンネルを使った上着


 両腕には、攻撃を弾くことができる手甲を装備させる。


 ・素材にアダマンタイトを使った手甲


 後は、首から上だが、首にはメイド服と一緒に作った『黒のチョーカー』を装備させる。

 頭は、頭巾がいいだろう。【トゥルーサイト】を使っている人間にも顔を見られないことが重要だ。


 ・黒のチョーカー

 ・素材にマジックリンネルを使った頭巾


 頭巾と上着の色をニンフ1は赤系統、ニンフ2は青系統にする。

 これで見ただけで見分けが付くようになる。


 最後に武器は、小太刀二刀流にしよう。

 というわけで、以下の装備を二人分作った。


 ・アダマンタイトの小太刀+30

 ・アダマンタイトの小太刀+30

 ・くノ一の頭巾

 ・黒のチョーカー

 ・くノ一の服

 ・アダマンタイトのボディアーマー+30

 ・アダマンタイトの手甲+30

 ・黒のストッキング&ガーターベルト

 ・アダマンタイトのグリーブ+30

 ・くノ一の地下足袋

 ・魔布の黒ブラジャー

 ・魔布の黒Tバックパンティー


 おそらく、以下のような装備になるはずだ。


―――――――――――――――――――――――――――――


 右手武器:アダマンタイトの小太刀+30

 左手武器:アダマンタイトの小太刀+30

 頭:くノ一の頭巾

 首:黒のチョーカー

 上着:くノ一の服

 鎧下:アダマンタイトのボディアーマー+30

 篭手:アダマンタイトの手甲+30

 脚:黒のストッキング&ガーターベルト

 脛:アダマンタイトのグリーブ+30

 足:くノ一の地下足袋

 下着:魔布の黒ブラジャー

 下着:魔布の黒Tバックパンティー

 指輪:回復の指輪


―――――――――――――――――――――――――――――


『所持金』


―――――――――――――――――――――――――――――


 所持金 …………… 1599305.11ゴールド


―――――――――――――――――――――――――――――


 所持金が、約160万ゴールドにまで減っていた。


『調子に乗って作り過ぎてしまった……』


 僕は、目を開けて反省をした。


『こりゃ、近いうちにまたトロール狩りに行かないといけないな……』


「ニンフ1、前に来て」

「ええ」


 片方のニンフが僕の目の前に立った。


『トレード』


 作った装備を渡す。


「ありがとうございます、旦那さまぁ!」


 ニンフ1は嬉しそうだ。


「次、ニンフ2。来て」

「はぁい」


『トレード』


 作った装備を渡す。


「旦那さま、大好きっ!」


 ――チュッ


 ほっぺに口づけをされてしまった。


「じゃあ、今渡した装備を着てみて。『回復の指輪』も忘れずに」

「「分かった」」


 二人がハモる。

 数秒の後、二人は白い光に包まれて、くノ一スタイルとなった。


 頭巾と上着がニンフ1が鮮やかな赤色でニンフ2は鮮やかな青色だ。

 最初は、もっと黒っぽい色にしようと思ったのだが、よく考えたら、常時【インビジブル】を発動しているわけだから、問題ないだろうと考えたのだ。


 ニンフ2の服の裾をつまんでめくってみる。


「いやぁ~ん」


 ニンフ2が嬉しそうにわざとらしい声を上げた。


「ごめん、ちょっと確認させて」

「フフフ……。好きなだけご覧になって……」


 ストッキングとガーターベルトのひも、黒の下着が見える。下着の上には、黒い網タイツのような装備がおおっている。これが、『アダマンタイトのボディアーマー+30』だ。

 上半身は、タンクトップくらいの面積を覆っていて、下半身はワンピースの水着のような感じだろうか。

 伸縮性のない金属で作られているため、普通は着ることはできないが、マジックアイテムの装備品なので身体に合わせてフィットするように装着される。

 着物風の上着は、帯の代わりに革のベルトで固定されている。背中側の腰に二本の小太刀が装備してある。

 袖は、半そでに近い長さで、着物らしく開口部が少し広い。


「あの……ご主人様?」


『トイレ』から戻って来ていたケイコが話しかけてきた。


「なに?」

「そちらに誰かおられますの?」

「ああ……。二人とも一時的に【インビジブル】を解除して」

「「ええ」」


 二人が【インビジブル】を解除したようだ。


「「あっ!」」


 元娼婦たちが驚いた。


「二人は、この部屋を出るまで【インビジブル】を解除していて」

「「分かった」」


 二人のニンフは、またハモった。

 元が同一の存在だけあってハモりやすいのかもしれない。


「そう言えば、記憶の同期はもう起きていないんだよね?」

「「ええ」」


 記憶の同期現象は、おそらく、あの『リスポーン・ストーン』によるものだろう。


 僕は、二人のニンフに料理のレシピと魔法石1個を渡した。魔法石は、料理を盛り付けるためのマジックアイテムの食器を作成するためだ。料理用に魔法石が1つあれば、レシピから勝手に食器が作成される。

 また、【12:00】になったら、元娼婦たちに『サンドイッチセット』を出すように指示する。


『現在時刻』


 時刻を確認してみると、【09:47】だった。

 そろそろ、いい時間だ。


 僕は、フェリアとルート・ドライアードを連れて『ロッジ』を出た――。


―――――――――――――――――――――――――――――

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